アンケート結果のまとめ方とデータ集計の方法


アンケート結果のまとめ方とデータ集計の方法

アンケート調査は顧客理解を深め、効果的なマーケティング施策を立案するための重要なデータ収集手段です。しかし、せっかく収集したデータも、適切にまとめ分析できなければ、その価値を最大限に引き出すことはできません。本記事では、アンケート結果を効果的に集計する基本的な手法や、マーケティング活動において特に有効なアンケート調査の種類とその活用法などを、段階的に解説します。また、適切なまとめ方と分析手法を身につけることで、データから実践的な示唆を導き出し、ビジネス成果につなげる方法を探っていきます。

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アンケート結果をまとめる手順

アンケート結果を効果的に活用するためには、体系的な手順でデータを整理し分析することが重要です。

1. 調査目的を再確認する

アンケート結果をまとめる際にまず重要なのは、調査を実施した目的を改めて確認することです。「何を知りたかったのか」「どのような課題を解決するためのデータか」を明確にすることで、分析の方向性が定まります。目的を見失うと、膨大なデータの中で重要な情報を見逃したり、不必要な分析に時間を費やしたりする恐れがあります。例えば、顧客満足度向上が目的なら、満足度スコアとその要因に焦点を当てた分析が必要です。一方、新商品開発が目的であれば、ニーズや市場性に関するデータを優先的に分析すべきでしょう。この目的確認は、最終的な報告書やレポートの構成にも直結するため、分析作業の最初に行うことが望ましいです。

2. 回答データを集計する

目的を再確認したら、次に回答データの集計作業に移ります。集計は分析の土台となる重要なステップです。選択式質問は単純集計で全体の傾向を把握し、数値データは平均値や中央値などの代表値を算出します。また、データのばらつきや分布状況を確認することで、結果の信頼性や特徴を把握できます。回答者の属性情報がある場合は、それらも整理しておくと、後のクロス集計や詳細分析の際に役立ちます。自由記述のような定性データは、この段階では内容ごとに大まかに分類し、後の分析に備えます。データ集計の際は、欠損値や外れ値など、データの品質にも注意を払いましょう。不適切なデータを含めたまま分析を進めると、誤った結論を導く可能性があります。

3. 集計結果を分析する

単純な集計だけでは、アンケート結果の本質的な価値を引き出すことはできません。集計されたデータを多角的に分析することで、より深い洞察を得ることが可能です。分析では、「なぜそのような結果になったのか」「どのような要因が影響しているのか」という因果関係や相関関係を考察します。例えば、満足度の高い顧客と低い顧客の違いは何か、年齢層や利用頻度によって回答傾向に差があるかなどを探ります。この段階では、後述する様々な分析手法を状況に応じて活用すると効果的です。また、事前に立てた仮説を検証する視点も重要です。予測と異なる結果が出た場合は、その理由を掘り下げることで、想定外の発見につながることもあります。

4. 結果を分かりやすく整理する

分析結果をそのまま伝えても、受け手に正確に理解されるとは限りません。最終ステップとして、結果を分かりやすく整理し、伝わる形でまとめることが重要です。まず、調査目的に照らして重要な発見や示唆を優先的に配置します。数値データはグラフやチャートを活用して視覚的に表現し、自由記述からの洞察は代表的な回答を引用するなど具体例と組み合わせると理解しやすくなります。また、専門用語や統計用語は極力避け、必要な場合は補足説明を加えます。結果の解釈や示唆も明確に記載し、「では何をすべきか」という次のアクションにつながる提案まで含めると、より価値のあるレポートになります。読み手の立場に立って、情報の優先順位と伝わりやすさを常に意識しましょう。

アンケート結果の集計方法

アンケート結果を効果的に分析するためには、適切な集計方法を選択することが基本となります。目的や質問の種類によって、最適な集計アプローチは異なります。

1. 単純集計

単純集計は、アンケート分析の基礎となる手法で、各設問に対する回答の分布を把握するために行います。例えば、選択式質問であれば各選択肢の回答数や割合を算出します。「満足している」と回答した人が全体の何%か、「20代」の回答者が何人いるかなど、基本的な傾向を数値化します。この結果は円グラフや棒グラフで視覚化すると理解しやすくなります。また、数値回答(5段階評価など)の場合は、平均値や中央値といった代表値も算出します。単純集計は見た目は簡単ですが、適切に行うことで全体像を正確に把握でき、次のステップである詳細分析の方向性を定める重要な役割があります。精度の高い集計を行うためには、欠損値や異常値の扱いにも注意が必要です。

2. クロス集計

クロス集計は、2つ以上の設問を掛け合わせて分析する手法です。例えば「年代×満足度」のクロス集計を行えば、「20代の満足度は高いが50代は低い」といった年代別の傾向が見えてきます。単純集計だけでは把握できない条件付きの関係性を発見できるため、マーケティング分析において非常に重要な手法です。特に「性別」「年代」「居住地域」などの属性情報と他の設問を掛け合わせることで、ターゲット層ごとの特徴を明らかにできます。また、「利用頻度×満足度」のように行動と評価の関係性を分析することも可能です。クロス集計の結果は表形式でまとめることが多いですが、結果を解釈する際は単なる数値の差だけでなく、統計的な有意差があるかどうかも確認するとより信頼性の高い分析になります。

3. 自由記述の集計

数値データと比較して扱いが難しいのが自由記述データです。しかし、回答者の生の声が直接反映されているため、適切に分析すれば非常に有益な洞察を得られます。自由記述の集計では、まず全ての回答に目を通し、内容ごとにカテゴリー分類します。例えば「サービスへの不満」に関するコメントを「操作性」「応答速度」「価格」などに分類し、それぞれの言及数を集計します。この作業は手作業では労力がかかりますが、テキストマイニングツールなどを活用すれば効率的に行えます。また、特徴的な表現や頻出する単語を抽出することで、回答者全体の傾向や感情を把握することも可能です。自由記述の分析では、単に言及数を数えるだけでなく、具体的な表現や文脈も重視し、数値データからは見えてこない質的な情報を読み取ることが重要です。

アンケート結果の分析手法

アンケートから得られたデータをより深く理解するには、単純な集計を超えた分析手法が必要です。適切な分析手法を選択することで、表面的には見えない傾向や関係性を発見できます。

1. クラスター分析

クラスター分析は、回答の類似性に基づいて回答者をグループ化する手法です。例えば、購買行動や価値観に関する複数の質問への回答パターンを基に顧客を分類すると、「価格重視派」「品質重視派」といった明確なセグメントが浮かび上がることがあります。この手法の利点は、事前の仮説がなくても、データから自然に浮かび上がる顧客グループを発見できる点です。ビジネスでは、この結果を基にしたセグメント別マーケティング戦略の立案に活用できます。ただし、クラスター数(グループ数)の設定など分析者の判断が必要な部分もあるため、結果の解釈には専門的な知識が求められます。分析後は各クラスターの特徴を明確に言語化し、ビジネス上の意味づけを行うことが重要です。

2. 決定木分析

決定木分析は、特定の結果(例:商品購入の有無、高評価の要因)に影響を与える要因を階層的に可視化する手法です。例えば「どのような顧客が商品を購入したか」を分析する場合、「年齢」「過去の購入履歴」「Webサイトの訪問頻度」などの要因が、どのような順序と条件で購入に影響しているかをツリー状の図で表現します。この分析の特長は、複雑な関係性をシンプルな「if-then」のルールで表現できるため、統計に詳しくない人でも直感的に理解しやすい点です。マーケティングでは顧客行動の予測モデル構築や効果的なセグメント基準の発見に活用されます。また、特定の施策を実施する前後での効果検証や、複数の要因が絡む問題の原因特定にも役立ちます。

3. 主成分分析

主成分分析は、多数の変数(質問項目)から成るデータの次元を減らし、全体の傾向を少数の合成変数(主成分)で表現する手法です。例えば、製品の様々な機能に対する満足度を尋ねた20問のアンケートがあったとしても、実際にはそれらが「使いやすさ」「デザイン性」「コストパフォーマンス」といった数個の主成分に集約できることがあります。この手法により、複雑なデータの本質的な構造を把握しやすくなります。さらに、回答者をこの主成分空間上にプロットすることで、回答者間の類似性や相違点を視覚的に確認することも可能です。マーケティングでは、製品開発の方向性を決める際の優先順位付けや、顧客満足度の構造理解などに活用されます。ただし、抽出された主成分の解釈には専門的な判断が必要となります。

4. アソシエーション分析

アソシエーション分析は、複数の回答や選択肢の間の関連性を発見するための手法です。最も有名な応用例は小売業におけるバスケット分析で、「商品Aを購入した顧客は商品Bも購入する傾向がある」といった関連ルールを発見します。アンケート分析では、「選択肢Xを選んだ人は選択肢Yも選ぶ傾向がある」といった回答パターンを見つけることができます。例えば、「価格への不満を挙げた顧客は配送速度にも不満を持つ傾向がある」といった洞察を得られれば、課題の連鎖構造を理解できます。この分析では、「サポート度」(該当するケースの割合)、「確信度」(条件付き確率)、「リフト値」(関連の強さ)などの指標を用いて関連性の重要度を評価します。マーケティングではクロスセル施策の立案やサービス改善の優先順位決定などに活用できる重要な分析手法です。

5. テキストマイニング

テキストマイニングは、自由記述のような非構造化テキストデータから有用な情報やパターンを抽出する分析手法です。基本的な分析では、頻出単語の抽出や単語間の共起関係の分析を行い、回答全体の傾向を把握します。さらに高度な分析では、回答の感情分析(ポジティブ/ネガティブ)やトピック抽出なども可能です。例えば、商品レビューの自由記述から「使いやすさに関するポジティブな評価が多いが、耐久性については懸念の声がある」といった傾向を数値化できます。近年は、生成AIを活用したテキストマイニングも進化しており、自然言語処理技術の発展により、より精緻な感情分析や、文脈を考慮した意味理解も可能になっています。膨大な顧客の声を効率的に分析できるため、VOC(Voice of Customer)などの分析において不可欠なツールとなっています。

分析手法については、以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:アンケート分析の方法とは?効率よく行うための手法やポイントを紹介

マーケティングで活用できるアンケート調査

マーケティング活動において、アンケート調査は様々な局面で活用できる重要なデータ収集手段です。目的に合わせた適切な調査設計と分析により、効果的な意思決定をサポートします。

1. 顧客満足度調査

顧客満足度調査は、提供している商品やサービスに対する顧客の評価を測定するための調査です。一般的には、全体満足度を問う設問と、満足・不満足の理由を探るための詳細項目から構成されます。多くの企業では、5段階や10段階などの数値スケールを用いて定量的に満足度を測定し、経時変化を追跡します。特に重要なのは、単に満足度スコアを測るだけでなく、「何が満足度を高めているのか」「どの要素が不満につながっているのか」という因果関係を明らかにすることです。この分析によって、限られたリソースをどの改善ポイントに集中すべきかの優先順位付けが可能になります。

関連記事:顧客満足度調査(CS調査)の方法や指標、満足度アンケートの作り方を解説

近年では、顧客ロイヤルティを測る指標としてNPS®︎(ネットプロモータースコア)を採用する企業も増えており、「この商品・サービスを知人に薦める可能性」を問うことで、より実践的な顧客の態度を把握しています。

関連記事:NPS®︎とは?ビジネスで活用するメリット、調査方法、導入のポイントを解説

2. 商品・サービス開発調査

新たな商品やサービスを開発する際、顧客ニーズを正確に把握することはとても重要です。商品・サービス開発調査では、潜在的なニーズの発掘から具体的な機能・特徴の評価まで、開発プロセスの各段階で異なる調査を実施します。初期段階では、顧客の課題や不満点を探る定性的な調査を行い、コンセプト策定後は、そのコンセプトに対する評価や購入意向を測定します。さらに、価格感度調査では、顧客が適正と感じる価格帯を探ります。プロトタイプ段階では、実際の使用感や改善点に関するフィードバックを収集することも重要です。これらの調査を通じて、「本当に市場で受け入れられる商品・サービス」を開発する確度を高めることができます。特に自由記述から得られる具体的な改善アイデアは、開発チームにとって貴重な情報源となります。

3. 市場・トレンド調査

ビジネス環境が急速に変化する現代において、市場やトレンドの変化を継続的に把握することは競争優位性を維持するために不可欠です。市場・トレンド調査では、業界全体の動向、競合状況、消費者の価値観や行動パターンの変化などを幅広く調査します。具体的には、市場規模や成長率、主要プレイヤーのシェア、顧客の購買決定プロセス、新たな技術やサービスへの関心度などを測定します。これらの情報は、中長期的な経営戦略や事業計画の立案、新規事業機会の発見などに活用できます。また、定期的に同様の調査を実施することで、経時変化を追跡し、早期に市場変化の兆しを捉えることも可能です。特にデジタル環境の変化が激しい昨今では、オンライン行動や新たなデジタルサービスへの態度変容を把握することが重要となっています。

まとめ

アンケート結果の分析は、単なるデータ集計作業ではなく、顧客の声を経営判断に活かすための重要なプロセスです。効果的なアンケート分析では、結果を単に数値化するだけでなく、「なぜ」そのような結果になったのかの本質を理解することが求められます。ビジネス環境が急速に変化する現代において、顧客理解の深化なくして持続的な競争優位性を構築することは困難です。適切な集計方法と分析手法を選択し、そこから得られた洞察を迅速に施策に反映させる企業が、市場での成功確率を高めていくでしょう。

また、テキストマイニングなどの高度な分析技術の進化により、これまで見過ごされてきた顧客の潜在的ニーズや感情を捉える可能性も広がっています。アンケート分析を企業の意思決定プロセスに効果的に組み込むことで、より顧客中心のビジネス展開が実現できるでしょう。

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