音声認識とは?仕組みや導入メリット、活用シーン、現状の課題も解説
音声認識とは、コンピューターが人間の話した言葉を解析して、テキストデータとして変換する技術のことです。音声認識はAIなどの進化により精度が高まりつつあり、さまざまな分野で活用されています。
この記事では、音声認識をビジネスに活用したい人に向けて、音声認識とは何か、音声認識の仕組みや導入するメリット、音声認識が抱える課題などを解説します。音声認識の活用シーンや導入の流れも解説するため、ぜひ参考にしてください。
「音声認識」とは
音声認識とは、人間が発した声をコンピューターが解析して、文章などのテキストデータに変換する技術を指します。音声認識の精度は飛躍的に向上しており、ビジネスシーンでも活用が進んでいます。
音声認識の歴史・技術の進歩
音声認識の歴史は古く、1971年までさかのぼります。アメリカのDARPA(国防高等研究計画局)が音声認識の研究を行っており、このときの研究がSiriの原型だといわれています。その後、1975年にIBMが民間初となる音声認識の開発に着手しました。
1995年になると、Microsoftが「スピーチツール」をWindows95に搭載、2011年にはApple社が「Siri」をiPhone 4Sに搭載します。このように、音声認識技術は目覚ましい発展を遂げ、ビジネスだけでなく日常生活にも活用されています。
音声認識の基本的な仕組み
音声認識はどのような技術なのでしょうか。ここでは、音声認識の基本的な仕組みについて詳しく解説します。
音声録音(音声入力)
まずは、マイクなどの入力装置を使って音声を録音します。この際、雑音が入ると処理に手間がかかってしまうため、できるだけ人間以外の音声が入らない静かなところで録音しましょう。スマートフォンで録音することも可能です。
音響分析(音声のデジタル化)
次に音響分析を行います。音響分析とは、入力された音声データから特微量を抽出し、コンピューターが認識しやすい形に整える作業です。特微量とは、特徴を数値化したもののことです。たとえば音の周波数や間隔、音の強弱や時系列などのさまざまな特徴を数値化したものを特微量と呼びます。
音響モデル(音素の抽出)
音響モデルとは、抽出された特微量がどの音素に近いのか特定する作業です。音響モデルでは、あらかじめAIに学習させていたデータと照合しながらもっとも特徴が近い音素を特定します。音素とは、最小の音韻的単位のことで、意味の違いに関わってくるものです。
日本語の場合は、母音である「あ・い・う・え・お」と23種類の子音、撥音の「ん」で構成されます。たとえば、「さよなら」の場合には、「s-a-y-o-n-a-r-a」という音素列になります。
パターンマッチ(発音辞書による単語への変換)
パターンマッチとは、抽出した音素を単語に変換する作業です。音素のままでは意味のある単語にならないため、意味がある単語にするためにパターンマッチが必要です。パターンマッチでは発音辞書が用いられます。発音辞書とは単語とその単語を構成する発音が一緒に登録されている辞書のことで、「猫」なら「neko」とセットで登録されています。
言語モデル(隠れマルコフモデル)
言語モデルとは、単語間の出現率をモデル化したものです。言語モデルのなかでも多く使われているのが「隠れマルコフモデル」です。隠れマルコフモデルとは、文字列に続く直後の文字の出現率をパターン化して、出現する確率を決定します。膨大な量の学習データから、出現率の高い単語を組み合わせて、正しい文脈になるようにテキスト化します。
音声認識を導入するメリット
音声認識を導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、音声認識導入のメリットを4つ紹介します。
業務効率化につながる
従来は、会議などの議事録を作成する際に文字起こしをすべて手動で行う必要がありました。しかし、音声認識を活用すれば音声データを自動でテキスト化してくれるため、人が書き起こす必要がありません。コンピューターがテキスト化したデータを整えるだけで文字起こしができるため、作業の手間や負担が軽減できます。
入力ミスを軽減できる
手動で議事録などの書き起こしをする場合、集中力が途中で切れてしまうケースも少なくありません。書き起こし作業は手間がかかるため疲労も溜まりやすく、入力ミスにつながるケースもあるでしょう。しかし音声認識なら入力ミスを軽減できます。書き起こし作業を半自動化できるため疲労軽減につながり、ミスの軽減が期待できます。
人手不足を解消できる
音声認識導入により、今まで手動で行っていた作業の自動化が可能です。人的リソースを減らすことができるため、人手不足対策としても有効です。たとえば、コールセンターなどで音声認識を導入すれば、問い合わせ対応の一部を自動化できます。簡単な問い合わせには自動音声で対応し、難しい場合にはオペレーターへ転送するなど柔軟な対応が可能です。
操作が簡単・さまざまな状況で使える
音声認識は、誰でも簡単に使うことができます。キーボード操作が不得意な人でも話すだけでテキスト化できるため、入力ミスの軽減も期待できるでしょう。また、ハンズフリーで使える点もメリットです。たとえば、荷物を持っている、手が汚れているなど手が使えない状況でも問題なく使うことができるため、入力がスムーズです。
音声認識の活用シーン・事例
音声認識はどのようなシーンで活用されているのでしょうか。以下では、音声認識の活用シーンや事例を紹介します。
コールセンター
コールセンターでは、オペレーターと顧客との会話をテキストデータ化し参考資料として活用する、顧客との会話から判断して必要な資料を画面上に表示するといったことに音声認識が活用されています。これにより、トラブルがあった場合でもテキストデータをもとにスピーディーに事実確認および対応できる、必要な返答をすぐに行えるなどの業務効率化につながっています。
医療機関
医療機関では、音声入力によるカルテ作成が進んでいます。医療機関では紙カルテから電子カルテへの移行が進んでいますが、機械の操作に不慣れな医師などはキーボード操作に手間取り、カルテ作成に多くの時間がかかるという課題がありました。音声認識ならキーボード操作が必要ないため、電子カルテへの移行がスムーズに進みます。
字幕の作成
これまでは手動で行われてきた字幕作成ですが、音声認識を導入すれば字幕作成が自動で行えるようになります。動画の字幕作成や聴覚障がい者向けの字幕作成などに広く活用されています。人が音声を聞き取って人の手で字幕を作成する必要がないため、リアルタイムでの字幕作成も手間がかからずスムーズに行えます。
音声認識を導入するステップ
音声認識を導入する際の流れは以下のとおりです。
- 導入目的を明確にする
- 音声認識サービスを選定する
- 録音環境を整備する
- 音声認識を実際に行い、改善を繰り返す
まずは、なぜ音声認識を導入するのか目的を明確にしましょう。目的がはっきりしていない場合、導入しても十分に活用できません。音声認識サービスの選定は、実績や使い勝手の良さなどを比較して検討します。録音環境によって音声認識の精度に差が出るため、録音環境を整えることも重要です。また、導入して終わりではなく実際に使って確認し、改善を繰り返すことも意識しましょう。
音声認識が抱える課題
さまざまな分野で活用されている音声認識ですが、課題もあります。ここでは、音声認識が抱える課題を解説します。
録音環境によって精度が落ちる
録音環境によって精度が落ちてしまうため、録音環境を整える必要があります。たとえば、雑音が多い、複数人が話している、訛りや方言などがある場合には、特微量の抽出が難しいため精度が落ちてしまう可能性が高いでしょう。録音環境を整備して、コンピューターが分析しやすいデータを集める必要があります。
意訳ができない
音声認識は、人間がするような意訳が難しいです。たとえば、親がゲームをしている子どもに「もうすぐ寝る時間よ」といった場合、人間同士の会話なら「ゲームをやめて寝る準備をしなさい」といった意味合いが暗示されていることがわかります。しかし、AIは言葉以上の内容を理解できないため、人間が細かく説明しなければ正確な回答が得られません。
音声認識ログを分析・利用する際のポイント
音声認識ログの分析や音声認識を利用する際には、言い淀みを省く機能がついている音声認識ログを利用するとよいでしょう。これにより、テキストの分析精度や可読性の向上が見込めます。また、誤変換への対応も重要です。誤変換対応があることで、精査の工数が大きく変わり負担軽減につながります。
まとめ
音声認識とは、人間が話した言葉をコンピューターが解析して、テキストデータに変換する技術です。音声認識を活用することで、業務効率化や人的ミスの軽減、人手不足解消などさまざまなメリットが得られます。
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