カスタマージャーニーマップの作り方 | 基本から実践まで解説


カスタマージャーニーマップの作り方 | 基本から実践まで解説

近年、顧客体験の重要性が高まる中で、カスタマージャーニーマップの活用が注目されています。このマップは、顧客の購買行動や心理を可視化し、効果的なマーケティング戦略の立案を可能にする手法です。作成方法がわからない、どこから始めればよいのか迷うという声も多く聞かれる中、本記事では、カスタマージャーニーマップの基本から具体的な作り方、実際の活用事例まで、わかりやすく解説します。

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは、顧客がブランドや商品と出会ってから購入に至るまでの体験を時系列で可視化する手法です。この手法を活用することで、効果的なマーケティング戦略の立案が可能になります。

1. 定義と概要

カスタマージャーニーマップは、顧客体験を総合的に理解するための重要なフレームワークです。このマップでは、顧客の行動だけでなく、各段階での感情や思考も含めて包括的に分析します。例えば、商品を知った時の期待感、検討時の不安や迷い、購入後の満足度など、顧客の心理的な変化も重要な要素として捉えます。企業は、このマップを通じて顧客との接点を整理し、改善が必要な箇所を特定できます。また、マーケティング部門や営業部門など、部門を越えた情報共有ツールとしても機能し、一貫性のある顧客体験の提供に役立ちます。デジタルマーケティングの現場では、ウェブサイトの動線設計やコンテンツ制作の指針としても活用されています。

2. ビジネスにおける重要性

デジタル時代において、カスタマージャーニーマップはマーケティング戦略の基盤となっています。顧客接点が多様化する中、一貫性のある体験を提供するには、顧客の行動を総合的に理解する必要があります。このマップを活用することで、マーケティング施策の効果測定が容易になり、投資対効果の向上につながります。特に、オンラインとオフラインの顧客接点を適切に組み合わせることが重要になっています。カスタマージャーニーマップは、これらの接点を俯瞰的に把握し、シームレスな顧客体験を設計する際の基礎となります。実務では、このマップを活用して顧客満足度の向上や売上の増加を目指す企業が増えています。

カスタマージャーニーマップの基本構成

カスタマージャーニーマップの4つの基本要素について、実践的な視点で解説します。

1. ペルソナ設定

ペルソナは、商品やサービスのターゲット顧客を具体化した仮想の人物像です。実データに基づいて、以下の要素を設定します。

基本属性

  • デモグラフィック情報:年齢、性別、職業、収入
  • ライフスタイル:家族構成、趣味、日常行動
  • 情報収集手段:利用メディア、購買時の判断基準


具体例として「35歳のIT企業勤務。通勤時間が長く、情報収集を重視する」といった設定が効果的です。

課題とニーズ

  • 現状の課題:「通勤時間を有効活用したい」
  • 目標:「業界のトレンドをキャッチアップしたい」
  • 商品選択基準:「効率性」「携帯性」「価格」

設定の根拠となるデータ

  • Webサイトの行動ログ
  • 購買履歴
  • アンケート結果
  • カスタマーサポートの記録


2. 購買プロセスの段階

顧客の行動を6つの段階で整理します。各段階で具体的な指標を設定し、改善につなげます。

認知段階(商品・サービスの認知)

  • 主な接点:広告、SNS、検索エンジン
  • 指標:流入経路、広告クリック率

興味・関心段階(基本情報の収集)

  • 主な行動:Webサイト閲覧、SNS確認
  • 指標:滞在時間、ページ閲覧数

検討段階(詳細な情報収集と比較)

  • 主な行動:価格比較、レビュー確認
  • 指標:資料請求数、見積り依頼数

購入段階(購入の意思決定と実行)

  • 主な行動:商品選択、決済
  • 指標:購入率、離脱率

利用段階(商品・サービスの使用)

  • 主な行動:アフターサポート利用
  • 指標:継続率、問い合わせ数

推奨段階(他者への推奨、再購入)

  • 主な行動:レビュー投稿、SNS発信
  • 指標:推奨率、リピート率


3. タッチポイントの設計

顧客接点を3つのメディアタイプで整理し、効果的な組み合わせを設計します。

オウンドメディア

  • 自社Webサイト:商品情報、料金、FAQ
  • SNSアカウント:最新情報、キャンペーン
  • メールマガジン:会員向け情報、特典
  • 公式アプリ:パーソナライズ機能

アーンドメディア

  • 口コミサイト:ユーザー評価、実体験
  • 専門メディア:第三者視点での分析
  • SNS投稿:自然な感想、利用シーン
  • ブログ記事:詳細レビュー、比較記事

ペイドメディア

  • 検索広告:検索意図に応じた訴求
  • ディスプレイ広告:認知向上施策
  • SNS広告:興味関心ターゲティング
  • 動画広告:商品特徴の訴求


これらの接点は、購買プロセスの段階に応じて最適な組み合わせを設計します。例えば、認知段階では広告による露出を増やし、検討段階では詳細な商品情報を提供するなど、段階に合わせた設計が効果的です。

4. 顧客体験の分析

顧客体験を定量・定性の両面から分析し、継続的な改善につなげます。

定量データの収集

  • アクセス解析:ページ閲覧、滞在時間
  • コンバージョン:申込数、成約率
  • 顧客データ:購入履歴、利用頻度
  • 顧客サポート:問い合わせ数、解決率

定性データの把握

  • アンケート:満足度、改善要望
  • インタビュー:詳細な利用実態
  • SNS分析:自然な感想、評価
  • サポート記録:具体的な課題

改善プロセス

  • データ収集:複数チャネルからの情報収集
  • 分析:定量・定性データの統合分析
  • 課題抽出:改善優先度の設定
  • 効果測定:改善前後の比較


分析結果は、具体的な数値目標を設定し、改善活動の効果を継続的に測定します。データに基づく改善サイクルを確立することで、顧客体験の質を高めることができます。

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーマップを効果的に作成・活用するための実践的な手順を解説します。

1. データの収集と分析

まず、顧客理解のための正確なデータ収集から始めます。アクセス解析、購買データ、カスタマーサポートの記録、顧客アンケート、インタビューなど、複数のデータソースから情報を収集します。これらのデータは定量・定性の両面から分析し、顧客行動の全体像を把握します。Webサイトの閲覧経路やコンバージョン率などの数値データと、問い合わせ内容やSNSでの反応といった質的データを組み合わせ、顧客理解を深めます。

2. マップの設計

収集したデータをもとに、購買プロセスの各段階における顧客行動を整理します。認知から推奨までの各段階で、顧客が求める情報や判断基準を明確にします。各タッチポイントは時系列で配置し、オンラインとオフラインの接点を効果的に組み合わせます。例えば、Webサイトでの情報収集から店舗での購入まで、一連の顧客行動を自然な流れとして設計します。

3. 課題の特定と改善

作成したマップから、顧客体験における課題を具体的に特定します。Webサイトの特定ページでの離脱、カスタマーサポートへの問い合わせ集中など、データで確認できる課題を抽出します。特定した課題には具体的な改善策を設定し、各種分析ツールを用いて効果を測定します。

4. 継続的な改善

市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、マップは定期的な更新が必要です。特にデジタルタッチポイントは変化が速いため、最新状況を反映することが重要です。分析ツールを活用した定期的なデータ確認により、マップの精度と実用性を高めます。

カスタマージャーニーマップ作成時の注意点

効果的なカスタマージャーニーマップを作成するための重要なポイントを解説します。

1. データに基づく設計

マップ作成は、実際のデータに基づいて行います。アクセス解析、購買データ、顧客アンケートなど、複数のデータソースから得られる情報を活用します。データは定期的に収集・分析し、トレンドの変化も把握します。一時的なデータだけでなく、中長期的な変化を捉えることで、より実用的なマップが完成します。

2. 具体的な目標設定

改善目標は具体的な数値で設定します。「Webサイトの直帰率を15%削減」「商品ページの回遊率を25%向上」など、測定可能な指標を使用します。目標値は現状のデータを基準に設定し、達成可能な数値とします。段階的な改善を重ねることで、持続的な成果につなげます。

3. 組織横断での活用

マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、顧客接点を持つ部門間で情報を共有します。各部門の持つデータや知見を統合することで、より正確な顧客理解が可能になります。共有しやすいフォーマットでマップを作成し、更新状況も定期的に共有することが重要です。

4. 分析ツールの活用

効率的なマップ作成と運用には、適切なツールの活用が重要です。データ収集、分析、可視化など、目的に応じたツールを選択します。特に、複数のデータソースを統合して分析できるツールは、マップの継続的な改善に効果的です。

カスタマージャーニーマップの活用事例

1. Spotify

Spotifyは音楽共有機能の開発において、カスタマージャーニーマップを効果的に活用しました。まず、競合分析とユーザーインタビューに基づき、基本属性、性格、経歴、サービス利用シーンまで含む詳細なペルソナを設計。このペルソナをもとに、WhatsAppを通じた音楽共有プロセスを、共有する側とされる側の両方の視点から分析し、各タッチポイントでの行動、思考、感情の変化を可視化しました。これにより、双方のユーザーにとって価値のある機能開発の方向性を見出すことができました。

※参考:https://www.uxdl.jp/column/customer-journey-map-casestudy

2. スターバックス

スターバックスは、店舗サービスの改善を目的に、カスタマージャーニーマップを活用しました。来店から退店までの一連の流れにおいて、各タッチポイントでの顧客の行動と感情を分析し、「狭い作業スペース」や「急いで注文しなければならない雰囲気」といったマイナス要因が顧客満足度にどのように影響するかを明確化しています。同社はこの分析を通じて、「ゆったりとした空間の提供」という強みを活かしながら、顧客体験の「良い」「良くない」を縦軸にマッピングすることで、具体的なサービス強化のポイントを特定しています。

※参考:https://www.pascaljp.com/case_study_customerjourneymap.html

まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客体験を可視化し、効果的なマーケティング戦略を立案するための実践的な手法です。基本構成要素を理解し、データに基づいた設計を行うことで、具体的な成果につなげることができます。重要なのは、正確なデータ収集と継続的な改善です。アクセス解析や購買データなどの定量的な情報と、顧客の声などの定性的なデータを組み合わせることで、より深い顧客理解が可能になります。

効率的な作成と運用には、専用の分析ツールの活用が有効です。データの収集から分析、可視化まで、適切なツールを選択することで、より効果的な顧客体験の設計と改善を実現できます。マーケティング戦略の強化に向けて、カスタマージャーニーマップを取り入れてください。

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