自然言語処理(NLP)とは?注目されている理由や活用例を解説


自然言語処理(NLP)とは?注目されている理由や活用例を解説

自然言語処理とは、人間が普段使う言語をコンピューターに分析させる技術です。例えば、SNSに投稿されたデータを分析して、人々の関心事を洗い出すなどの用途に使われています。マーケティングの現場でも活用が進んでいるため、詳しく知りたい人もいるのではないでしょうか。

この記事では、自然言語処理の仕組みや活用例などを解説します。自社での利用を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

自然言語処理(NLP)とは

自然言語処理(NLP/ Natural Language Processing)とは、人間が日常的に使う話し言葉や書き言葉などの自然言語をコンピューターに処理・分析させる技術です。


コンピューターは構造化されたデータの処理は得意ですが、自然言語のような曖昧なデータの処理が苦手です。しかし、AI技術の進歩によって自然言語処理技術も大幅に進歩しました。自然言語処理の技術は、機械翻訳や対話型ロボットなどの幅広い用途に利用されています。


自然言語と人工言語の違い

自然言語とは、人間が普段使う言葉です。一方の人工言語とは、人間が作った言語を意味します。人工言語には記述方法にルールがあるため、曖昧さはありません。代表例はプログラミング言語です。一方、自然言語は人によって使われ方が異なり、文脈によっても意味が変わるため、曖昧さを伴います。


例えば、「熱々のおでんとビールを注文した」と聞くと、多くの人は「熱々なものはおでんだ」と分かります。しかし、コンピューターには「熱々」なものが「おでん」なのか「おでんとビールなのか」を判別できません。こうした曖昧さを適切に処理するためには、高度な技術が必要です。


自然言語処理が注目されている背景

自然言語処理が注目されている背景を解説します。


テキストデータが増えている

1つ目の要因は、インターネットやスマートフォンの普及によって活用できるテキストデータが爆発的に増えていることです。企業内にも自社アンケートやコールセンターへの問い合わせログなどのデータが大量に蓄積されています。人力で分析できるデータ量には限界がありますが、コンピューターを使えばビッグデータの処理が可能です。


例えば、自然言語処理の技術を使ってSNS投稿などのテキストデータを解析すれば、消費者の関心やニーズを把握でき、マーケティング活動に活かせます。


DX需要が高まっている

2つ目の要因として、労働力不足の深刻化に伴いDX需要が高まっていることが挙げられます。DX(Digital Transformation)とは、データやデジタル技術を活用してビジネスモデルや組織などを改革することを指し、競争上の優位性を確立する上で重要なテーマです。


コロナ禍や世界情勢の変化により日本企業には時代に合うビジネスモデルへの転換が求められており、自然言語処理技術にも大きな注目が集まっています。


自然言語処理の市場規模

SDKI Inc.の「自然言語処理(NLP)市場ーグローバル予測2030年」によると、世界のNLP市場は2030年までに686.2億米ドルに達すると推定されています。自然言語処理は、北米を中心に発展する見込みです。


※出典:自然言語処理(NLP)市場ーグローバル予測2030年|PRTIMES


一方、日本のNLP市場も拡大傾向です。Research Nester Private Limitedの資料によると、日本のNLP市場は2030年末までに4,739.4 百万米ドルに達すると考えられています。


※出典:日本自然言語処理(NLP)市場-需要分析と機会の見通し2020-2030年|Research Nester Private Limited


自然言語処理に必要な仕組み

自然言語処理を行うためには、コンピューターに自然言語を処理させる環境を整えなければなりません。具体的には、機械可読辞書とコーパスが必要です。


機械可読辞書

機械可読辞書とは、その名の通り機械が読める辞書です。もともとは書籍情報をコンピューターで検索するために開発された規格であり、図書館などで利用されてきました。


人間は外国語を学ぶ際に辞書や単語集を使います。コンピューターも同じです。機械可読辞書は単語集に該当するもので、単語に関係するさまざまな情報がコンピューターにわかる形で記述されています。


コーパス

コーパスとは、話し言葉や書き言葉を大量に集めたサンプル集です。人間の外国語学習で使われる例文集に該当し、日本語コーパス、検索エンジンコーパス、音声コーパスなどの種類があります。例えば、英語日本語翻訳に利用されるコーパスは、日本語と英語を対応させたパラレルコーパスです。


自然言語処理の流れ

ここからは、「私は友人とランチを食べた」という例文を使って、自然言語処理の流れを具体的に解説します。


1.形態素解析

形態素解析とは、文章を単語に分割する作業です。日本語は英語とは異なり、単語と単語が明確に区分されていませんが、品詞ごとに分割できます。


上記の例文であれば、「私/は/友人/と/ランチ/を/食べた」と切り分けられます。それぞれの品詞は以下の通りです。


私(名詞)/は(助詞)/友人(名詞)/と(助詞)/ランチ(名詞)/を(助詞)/食べ(動詞)/た(助動詞)


形態素解析をすれば、コンピューターが自然言語をデータとして扱えるようになります。


形態素解析について詳しくはこちら


2.構文解析

構文解析とは、単語同士の関係性を解析する作業です。単語同士の係り受け関係や主語・述語関係などを分析して、文の構造を明らかにします。


例えば、「私は友人とランチを食べた」の主語は「私は」であり、述語は「食べた」です。さらに、意味のまとまりごとに名詞句、動詞句、形容詞句、副詞句に分類する方法も利用されています。本例文では、「私は」「友人と」「ランチを」が名詞句であり、「食べた」が動詞句です。


構文解析にはさまざまな方法があり、コンピューターが自然言語を構造的に把握するうえで役立ちます。


構文解析について詳しくはこちら


3.意味解析

意味解析とは、構文解析をした文の意味を正しく解釈する作業です。「私は友人とランチを食べた」では、食べたものが「ランチ」なのか、「友人とランチ」なのかが明確ではありません。人間なら友人を食べることはないと判断できますが、コンピューターが正しく解釈するためには、さらなる解析が必要です。


辞書やコーパスを活用すれば「食べた」と「ランチ」は関連性が高く、「食べた」と「友人」は関連性が低いと判断できるため、食べたものが「ランチ」だと解釈できます。


4.文脈解析

文脈解析とは、文同士の関係を解析する作業です。ただし、前後の文の関係性や文章の内容を正しく解釈するためには辞書やコーパス以外のさまざまな知識が必要となり、解析の難易度は高めです。


ここでは、「昨日、近くの山に行った。そこで食べた弁当はおいしかった」という文章を例にします。この文章は2つの文で構成されていますが、1つ目の文には主語がなく、2つ目の文の「そこ」が何を指すのかは1つ目の文と関連付けなければ解釈できません。


コンピューターが正しく解釈するためには、これらの問題をカバーする知識や技術が必要です。例えば、照応解析の技術を使えば、省略された主語や指示語を補完できます。


自然言語処理技術でできること

自然言語処理技術が使われているシステムや分野を紹介します。


テキストマイニング

テキストマイニングとは、SNS投稿やWebページなどのテキストデータを分析する手法です。具体的には、形態素解析でテキストを単語に分割し、各単語の出現頻度や共起語との関係、時系列的な傾向などを分析します。


テキストマイニングを利用すると、企業が把握しにくいユーザーの生の声をキャッチできるため、マーケティング分野での活用が進んでいます。


テキストマイニングについて詳しくはこちら


対話システム

対話システムとは、コンピューターと対話できるシステムです。代表例には、AIチャットボットやスマートスピーカーなどがあります。話し言葉や書き言葉を分析して最適な回答を返す機能があり、AI音声受付サービスや会話用AIロボットなどにも利用が広がっています。


検索エンジン

検索エンジンとは、インターネット上の情報を検索して、キーワードにマッチする情報を表示する仕組みです。実際には、あらかじめクローラーというプログラムがインターネット上のデータを集めて作ったデータベースを検索しています。


自然言語処理の技術を活用すれば、入力されたキーワードがデータと完全にマッチしなくても、関連性の高い情報を表示できます。


感情分析

感情分析とは、文に含まれる感情や人間の感情を解析する仕組みです。例えば、ポジネガ判定は、ポジティブ度またはネガティブ度を付与した単語辞書を用いて、文に込められた感情を分析する手法です。


さらに複雑な感情分析の研究も進んでいます。例えば、ウェアラブル端末のデータから社員のストレス度を測定するツールや、幼児の表情を解析して最適な対応を取れる子ども向け学習ロボットなどが開発されています。


翻訳

Google翻訳などの機械翻訳も、自然言語処理技術の代表的な応用例です。特に、AI技術の進化によってニューラル翻訳が可能になって以降、翻訳の精度は飛躍的に上がっています。単語を1つ1つ翻訳するのではなく、文章をまとまりと捉えて可能性が高い訳文を当てはめるため、人間が読んでも違和感のない翻訳を実現できます。


予測変換機能

予測変換とは、スマートフォンやパソコンなどのデバイスに文字を入力すると、自動的に候補となる単語が表示される機能です。この機能にも自然言語処理が使われており、入力履歴や機械可読辞書を参照して候補となる単語を表示させています。前後の文章までを解析して、最適だと推測される単語を表示する高度なシステムもあります。


自然言語処理技術を活用した顧客分析には「見える化エンジン」がおすすめ

顧客分析に自然言語処理の技術を活用したい場合には、「見える化エンジン」がおすすめです。「見える化エンジン」とは、株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供するテキストマイニングツールです。


「見える化エンジン」の強みは、高精度な自然言語処理の技術を活用して、SNSやチャットログ、顧客アンケートなどの幅広いデータを分析できる点にあります。若者言葉やトレンドも抽出・分析でき、顧客の本音や自社にとってのリスクをわかりやすい形で可視化します。


まとめ

自然言語処理とは、人間が日常的に使う話し言葉や書き言葉をAIに分析させる技術です。テキストマイニングや機械翻訳、対話システムなどの多様なジャンルで活用が進んでおり、顧客分析にも利用できます。


株式会社プラスアルファ・コンサルティングの「見える化エンジン」は顧客の声を分析し、わかりやすいグラフなどのアウトプットで社内に届けるツールです。リアルな顧客の声はサービス改善に役立ち、新たな企業価値の創造にもつながります。業績改善やDX推進に課題を抱えている企業様は、ぜひ活用をご検討ください。


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