デプスインタビュー(IDI)とは?メリット・デメリットや活用のポイントを解説


デプスインタビュー(IDI)とは?メリット・デメリットや活用のポイントを解説

消費者の深層心理を理解し、本音を引き出すためには、デプスインタビュー(IDI:In-Depth Interview)が効果的です。この手法は、マーケティングリサーチやUX改善において重要な役割を果たしています。1対1で丁寧に対話することにより、アンケートだけでは見えてこない潜在的なニーズや課題を発見できるのが特徴です。さらに、最新のAI技術の活用によって、より効率的なインタビューの実施も可能になってきました。
本記事では、デプスインタビューの基本から実践的な手法、効果を高めるためのポイントまで、実例を交えながら詳しく解説していきます。

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デプスインタビュー(IDI)とは

マーケティングやUXリサーチの現場で活用される、1対1の深層インタビュー手法です。対象者との丁寧な対話を通じて、表面的な回答だけでなく、本音や潜在的なニーズを明らかにすることができます。

1. デプスインタビューの基本

デプスインタビュー(IDI:In-Depth Interview)は、調査対象者と1対1で行う詳細な聞き取り調査です。一般的なアンケートやグループインタビューとは異なり、個別の対話を通じて深い理解を得ることができる手法として知られています。インタビュアーは、対象者の言葉や表情、しぐさなども観察しながら、表面的な回答の背景にある真意を探っていきます。多くの場合、1時間から1時間半程度の時間をかけて実施し、対象者が自身の考えや経験を十分に語れる環境を整えるのが基本です。特に新商品開発やサービス改善、ユーザー体験の向上などを目的とする際に、効果的な調査手法として活用されています。

2. デプスインタビューの重要性

ビジネスの意思決定において、顧客の声を正確に理解することは必須です。アンケートなどの定量調査では、「何が」「どれくらい」といった数値的な傾向を把握できますが、「なぜそう思うのか」という理由や背景までは十分に理解できないことが課題となっています。デプスインタビューでは、対象者の発言に対して適切なタイミングで質問を重ねることで、行動や選択の背景にある価値観や感情を明らかにすることが可能です。この深い理解があってこそ、顧客のニーズに真に応える製品やサービスの開発につながります。さらに、事前の仮説にない予想外の発見が得られることも多く、新たなビジネスチャンスを見出せる可能性も秘めています。

デプスインタビューと他の調査手法との違い

マーケティングリサーチには様々な手法があり、それぞれの違いを理解することが重要です。

1. グループインタビューとの違い

デプスインタビューとグループインタビュー(座談会、フォーカスグループディスカッション)は、どちらも定性調査の代表的な手法として知られています。グループインタビューでは、複数の対象者が同時に参加し、相互の意見交換から新たな気づきが生まれるという特徴があります。一方、デプスインタビューは、1対1で行うため、より深い個人の意見や本音を引き出せるのが強みです。例えば、商品の使用感について、グループインタビューでは他者の意見に影響されやすい一方、デプスインタビューでは率直な感想を聞き出せます。また、デリケートな話題や個人的な体験は、デプスインタビューの方が詳しく聞き取れるという利点があります。所要時間もグループインタビューの2時間程度に対し、デプスインタビューは1時間程度と異なります。

2. アンケートとの違い

デプスインタビューのような定性調査と、アンケートなどの定量調査では、得られる情報の性質が異なります。定量調査では、多数の対象者から数値化可能なデータを収集し、統計的な分析を行うことができます。例えば、「商品の満足度が5段階中何点か」「購入頻度は月に何回か」といった具体的な数値が得られます。これに対し、デプスインタビューでは「なぜその評価をつけたのか」「どのような場面で使用しているのか」といった背景情報を深く理解できます。

実務では、これらを組み合わせることで、より確実な調査結果を導き出せます。

デプスインタビューの特徴

製品開発やサービス改善において、顧客の深層心理を理解し、具体的な課題解決につなげるための調査手法です。数値データでは見えない、消費者の本質的なニーズを明らかにすることができます。

1. 徹底した聞き取りが可能

デプスインタビューの主要な目的は、消費者の深層心理を掘り下げて理解することにあります。例えば、「なぜこの商品を選んだのか」「どのような体験が満足や不満足につながったのか」といった問いに対して、時間をかけて丁寧に聞き取ることで、一般的なアンケート調査では得られない本質的な理解が可能になります。インタビュアーは対話を通じて、言葉として明確に表現されていない潜在的なニーズや願望を読み取ることができ、この深い理解が製品開発やサービス改善において、真に価値のあるイノベーションを生み出すための重要な基盤となっているのです。

2. 数値化できない情報の把握

定量データからは見えてこない「生の声」を収集できることが、デプスインタビューの大きな強みです。例えば、購買データは「いつ」「何を」「どのくらい」購入したかを示すことはできますが、その選択の背景にある感情や意思決定プロセスまでは教えてくれません。デプスインタビューでは、購買行動の前後の文脈や、商品選択時の迷いなど、数値化が難しい定性的な情報を詳しく把握することが可能です。加えて、インタビュアーが対象者の反応を観察しながら質問を工夫することで、事前に想定していなかった課題や改善点を発見できる機会も生まれます。

デプスインタビューのメリット

1対1の対話形式という特徴を活かし、マーケティングリサーチやUX改善において、数多くの企業が効果的に活用しています。主な利点について、具体例を交えながら解説します。

1. 消費者の深層心理がわかる

デプスインタビューの最大の特長は、個別の対話環境で率直な意見を引き出せることです。グループインタビューでは他の参加者の意見に影響を受けやすく、アンケートでは深い心理まで掘り下げにくいという制約があります。一方、デプスインタビューでは、インタビュアーと1対1でじっくりと話すことで、普段は表現されないような本音を聞き出すことができます。例えば、「この商品の使い勝手が悪い」という感想の背景には、具体的にどのような場面で困っているのか、どう改善してほしいのかといった詳細な情報まで引き出すことが可能です。

2. 臨機応変に掘り下げられる

デプスインタビューでは、対象者の反応を観察しながら柔軟に質問を変更したり、興味深い発言について掘り下げたりすることができます。例えば、商品の使用シーンについて話を聞いているときに、想定外の使い方が見えてきた場合、その場で詳しく質問を重ねることが可能です。さらに、表情やしぐさといった非言語情報からも、対象者の本当の気持ちを読み取れることが特徴です。このような柔軟な対応により、他の調査手法では得られない貴重な発見につながることも少なくありません。

3. 具体的な改善点を見出せる

一人ひとりから丁寧に話を聞くことで、製品やサービスの改善に直結する具体的な課題が明らかになります。「使いにくい」という漠然とした不満から、「ボタンの配置が分かりづらい」「説明書の手順が複雑すぎる」といった具体的な問題点を特定できます。また、「どのように改善してほしいか」という要望まで詳しく聞き出すことで、次の開発やアップデートに活かせる実用的な示唆を得ることが可能です。このような具体的な改善案の創出につながる点も、デプスインタビューならではの価値といえるでしょう。

デプスインタビューのデメリット

有効な調査手法である一方で、実施時には考慮すべき課題があります。以下では、主な制約と実務での対応策について解説します。

1. インタビュアーのスキルに依存する

デプスインタビューの質は、インタビュアーの経験とスキルに大きく依存する特徴があります。質問の仕方や深掘りのタイミング、対象者との信頼関係の構築など、高度なコミュニケーション能力が求められるためです。例えば、誘導的な質問をしてしまうと、本来の消費者意識とは異なる回答を引き出してしまう可能性があります。また、対象者の反応を適切に読み取れないと、重要な発言を見逃したり、話題を展開するタイミングを逃したりすることも起こりえます。このため、多くの企業では、インタビュアーの育成や、インタビュースキルの標準化に力を入れています。

2. 時間とコストの負担が大きい

1対1で実施するデプスインタビューには、相応の時間とコストが必要です。1人あたり1時間以上の時間を要し、準備や分析にも十分な工数を確保する必要があります。加えて、対象者への謝礼や会場費、録音・録画機材の準備など、関連する経費も発生するのが一般的です。このため、多くの企業では調査対象者数を絞り込まざるを得ず、収集できる情報の量や代表性に一定の制約が生じることがあります。特に、スピードが求められるプロジェクトや、予算に制約のある調査では、実施が困難なケースもあるでしょう。

3. 意見が偏る可能性がある

デプスインタビューから得られる情報は定性的なものが中心となるため、数値化や一般化には工夫が必要です。例えば、10人のインタビューで得られた意見が、どの程度その製品の利用者全体の意見を代表しているのかを判断することは容易ではありません。また、インタビュー対象者の選定には偏りが生じやすく、特定の属性や意見に集中する可能性もあります。そのため、実務では、デプスインタビューの結果とアンケートなどの定量調査を組み合わせて、より信頼性の高い分析を行うことが一般的です。

デプスインタビューの実施手順

効果的なインタビューを実現するためには、入念な準備と適切な進行が欠かせません。ここでは、実務で活用できる具体的な手順を解説します。

1. 目的や仮説を立てる

デプスインタビューを実施する前に、調査の目的と検証したい仮説を明確に設定することが重要です。「なぜこの調査を行うのか」「何を明らかにしたいのか」を具体的に定義し、それに基づいて質問の方向性を決めます。例えば、新商品の受容性を探る場合は「どのような価値を顧客が求めているか」という仮説を立て、それを検証するための質問項目を検討します。目的が曖昧だと質問が散漫になり、有効な洞察を得られません。また、事前に関連する市場データや既存調査結果を整理し、インタビューで深掘りすべきポイントを特定しておくことで、限られた時間を有効活用できます。

2. 対象者を選定する

調査目的に適した対象者の選定は、デプスインタビューの成否を左右する重要な要素です。ターゲット層の属性(年齢、性別、職業、ライフスタイルなど)を明確に定義し、調査テーマに関する経験や関心を持つ人を選びます。一般的には5〜10名程度が適切とされ、多様な視点を得るために異なる背景を持つ対象者をバランスよく選定します。また、話しやすい性格で、自分の考えを言語化できる能力を持つ人を選ぶことも重要です。スクリーニング調査を実施して適切な対象者を絞り込み、インタビューへの参加意欲や時間的余裕があることも確認しておきます。

3. インタビューフローを作成する

インタビューを効果的に進めるため、質問の流れと構成を整理したインタビューフローを作成します。導入部分では対象者の緊張をほぐすアイスブレイク的な質問から始め、徐々に核心的なテーマに移行する構成にします。質問は大きく「背景・現状把握」「課題・ニーズの探索」「将来への期待・要望」などのカテゴリに分け、それぞれに主要質問と深掘り用の追加質問を準備しておきます。ただし、フローは参考程度に留め、対象者の回答に応じて柔軟に質問順序を変更できるよう準備することが重要です。また、想定される回答パターンごとに、さらに詳しく聞くべきポイントを事前に整理しておきます。

4. インタビューを実施する

実際のインタビューでは、対象者が本音を話しやすい環境作りから始めます。リラックスできる場所を選び、録音の許可を得てから開始します。質問は相手のペースに合わせて進め、一方的に質問するのではなく自然な会話を心がけます。「なぜそう思うのか」「具体的にはどのような場面で」といった掘り下げ質問を適切に挟み、表面的な回答の背景にある真の理由や感情を引き出します。また、対象者の表情や仕草からも情報を読み取り、言葉にならない感情やためらいにも注意を払います。予定していた質問がすべて終わっても、最後に「他に何かありませんか」と開放的な質問で締めくくることで、追加の洞察を得られる場合があります。

5. 分析・レポーティングを行う

インタビュー終了後は、録音データを文字起こしし、系統的な分析を行います。対象者ごとの回答を整理した上で、全体を通じて共通するテーマや傾向、対照的な意見などを抽出します。単純な集計ではなく、回答の背景にある心理や動機を読み取り、ビジネス上の示唆として整理することが重要です。定性データの分析には時間がかかるので、パターンや頻出する表現を効率的に特定するためにテキストマイニングツールなどを活用するのも有効です。最終的には、調査目的に対する答えと具体的なアクションプランを含むレポートとして取りまとめ、関係者が理解しやすい形で報告書を作成します。

デプスインタビューの効果を高めるためのポイント

質の高いインタビューを実施し、有意義な発見を得るためには、いくつかの重要な要素があります。ここでは、実務で特に意識すべきスキルとテクニックを解説します。

1. 話しやすい環境を作る

効果的なデプスインタビューの要は、対象者の本音を引き出すスキルにあります。まず大切なのは、対象者が安心して話せる環境づくりです。初対面の緊張をほぐすため、インタビュー開始前に適度な雑談を交え、リラックスした空気を作ります。質問の仕方も重要で、「はい・いいえ」で答えられる閉じた質問は避け、「どのように感じましたか」「その理由を教えていただけますか」といった開かれた質問を活用します。対象者の発言を否定せず、共感的な態度で聞くことで、より深い本音を引き出すことができるでしょう。また、沈黙も重要な要素として捉え、対象者が考えをまとめる時間を十分に確保することが大切です。

2. 対象者の視点で対話をする

インタビュアーには、高度なコミュニケーション能力とともに、特別な心構えが求められます。最も大切なのは、先入観を持たずに対象者の話に耳を傾けることです。自身の価値観や経験で判断せず、対象者の視点に立って話を理解する姿勢が重要です。また、対象者の発言に対して適切なフォローアップ質問ができる洞察力も必要です。例えば、「使いやすい」という発言があれば、「具体的にどのような点が使いやすいと感じましたか」と掘り下げることで、より具体的で有用な情報を引き出せます。同時に、インタビュー全体を通して、調査目的を意識し続けることも欠かせないポイントです。

3. インタビュー後のフォローアップを行う

インタビュー終了後の対応も、質の高い結果を得るために重要な要素です。必要に応じて追加質問を行い、不明点や気になる点を丁寧に確認します。また、インタビュー直後の印象や気づきをメモしておくことで、より正確な分析が可能になります。複数のインタビューを実施する場合は、各回の内容を体系的に比較し、共通する要素や特徴的な違いを整理することが有効です。得られた知見は、できるだけ具体的な形でまとめ、次のアクションにつなげられるよう工夫することが大切です。このような丁寧な振り返りと分析が、調査全体の価値を高めることにつながるのです。

4. 他の手法と組み合わせる

調査の目的や状況に応じて、各手法の特徴を活かした設計が大切です。多くの場合、アンケートで全体傾向を把握した後、デプスインタビューでその理由や背景を掘り下げるという手順が効果的です。他にも、まずデプスインタビューで消費者の潜在ニーズを探り、次にグループインタビューで意見を発展させ、最後にアンケートで市場性を確認するなどの流れも考えられるでしょう。調査手法の選択には、予算や時間の制約、対象者へのアクセス可能性なども考慮が必要です。

近年は、オンラインツールの進化により、従来の対面式に加えて、オンラインでのインタビューも有効な選択肢となっています。これらの要素を総合的に判断し、最適な調査設計を行うことが望ましいでしょう。

生成AIを活用したインタビュー

インタビューにおいて、生成AIなどのツールを活用するのも有効です。定性データを用いた詳細なペルソナ像の生成、生成したAIペルソナへのインタビュー、それによる消費者心理の分析が、より効率的かつ高精度に行えるようになります。AIインタビューには、顧客ニーズ把握やペルソナ再考の高速化、リーチが難しい人物を対象にした仮説構築が可能になるなどのメリットがありますが、効果的な活用のためには顧客データを入れて詳細なペルソナを作成する必要があります。

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まとめ

デプスインタビューは、消費者の深層心理や本音を理解するための重要な調査手法です。一対一の対話を通じて、定量データでは見えてこない消費者の意識や行動の背景を深く理解できることが最大の特徴です。製品開発やサービス改善において、「なぜそう感じるのか」「どのような体験が影響しているのか」といった本質的な理解が得られるため、多くの企業で活用されています。

効果的な実施のためには、適切な対象者の選定、インタビュアーのスキル習得、本音を引き出すための環境づくりが重要です。また、得られた知見を体系的に分析し、定量調査と組み合わせることで、より確実な示唆を得ることができます。一つひとつの対話に真摯に向き合い、消費者の声に耳を傾けることが、ビジネスの新たな可能性を切り開く第一歩となるでしょう。

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