5Aカスタマージャーニーの基礎知識│従来型モデルとの違いを徹底比較

デジタル化やSNSの普及により、顧客の購買行動は大きく変化しています。従来の顧客行動モデルでは捉えきれない新しい消費者心理や行動パターンが生まれる中、注目を集めているのが「5Aカスタマージャーニー」です。このモデルは、認知から推奨までの顧客行動を5つのステージで捉え、SNS時代に即した効果的なマーケティング戦略の立案を可能にします。本記事では、5Aカスタマージャーニーの基礎知識から従来型モデルとの違い、実践的な活用方法まで、体系的に解説します。
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カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを認知してから購入し、さらには他者への推奨に至るまでの道のりを体系的に示したものです。
デジタル技術の発展により、顧客行動はますます複雑化しています。スマートフォンやSNSの普及は、情報収集から購買決定までのプロセスを大きく変えました。現代の消費者は、商品レビューの確認やSNSでの情報収集、複数の販売チャネルの比較など、様々な接点を経て購買を決定します。例えば、店頭で商品を見ながらスマートフォンで価格を比較したり、X(旧Twitter)やInstagramでの評価を参照したりする行動が一般的になっています。このような顧客行動の変化に対応するため、カスタマージャーニーは従来の直線的なモデルから、より柔軟で多面的なアプローチへと進化してきました。現代では、さまざまなデータ分析技術やツールの活用により、個々の顧客に最適化されたコミュニケーションや施策の実施が可能になっています。
5Aカスタマージャーニーと従来型モデルの比較
顧客行動モデルは時代とともに進化してきました。ここでは、5Aカスタマージャーニーと従来型モデルの特徴を比較しながら、それぞれの強みと活用シーンを解説します。
1. 5Aカスタマージャーニー
5Aカスタマージャーニーは、デジタル時代の顧客行動を5つのステージで捉えるモデルです。
- 認知(Aware):ブランドや商品の存在を知る
- 訴求(Appeal):興味や共感を抱く
- 調査(Ask):詳しい情報を集める
- 行動(Act):購入を決定し実行する
- 推奨(Advocate):他者に推奨する
SNSの普及により、商品やサービスとの出会いから購入後の推奨行動まで、顧客の行動はより複雑化しています。このモデルは、オンラインとオフラインの境界を越えた顧客体験の設計を可能にします。特に、SNSでの情報発信や評価の影響力が増す中、最終ステージの「推奨」に重点を置いている点が特徴です。テキストマイニングやソーシャルリスニングなどの分析手法を活用することで、各ステージでの顧客行動をより詳細に把握し、効果的な施策立案が可能になります。
2. AIDAモデル
AIDAモデルは、顧客の購買行動を4段階で説明する基本的なフレームワークです。
- 注意(Attention):商品やブランドの存在に気づく
- 興味(Interest):関心を持つ
- 欲求(Desire):購入への意欲が生まれる
- 行動(Action):実際に購入する
広告や販促活動の効果を高めることに主眼を置いており、特にマス広告が主流だった時代に広く活用されてきました。シンプルで理解しやすい構造が特徴ですが、SNSでの情報拡散や相互評価の影響、購入後の顧客行動など、現代特有の要素を十分に反映できない面があります。ただし、認知から購買までの基本的な流れを押さえる際の指標として、現在でも参考になる部分が多くあります。
3. AIDMAモデル
AIDMAモデルは、AIDAモデルを発展させた5段階モデルです。
- 注意(Attention):商品やブランドの存在に気づく
- 興味(Interest):関心を持つ
- 欲求(Desire):購入への意欲が生まれる
- 記憶(Memory):商品やブランドを記憶する
- 行動(Action):実際に購入する
商品やブランドとの接点で得た印象を記憶として定着させることで、購買行動につなげる考え方を重視しています。テレビCMやプリント広告など、繰り返し接触による認知度向上を狙う従来型のマーケティングと相性が良く、ブランド構築の基本モデルとして活用されてきました。ただし、デジタルでの即時検索や比較検討が一般化した現代では、「記憶」の重要性が相対的に低下しており、新たな要素を加えた改良が必要とされています。
4. 4Aモデル
4Aモデルは、顧客との継続的な関係構築を重視した4段階モデルです。
- 認知(Aware):商品やブランドの存在を知る
- 態度(Attitude):商品やブランドへの態度が形成される
- 行動(Act):初回の購入を行う
- 再行動(Act Again):継続的な購入や利用を行う
最大の特徴は、初回購入後の再購入や継続的な利用を重視している点です。顧客との長期的な関係構築を目指すリレーションシップマーケティングと親和性が高く、サブスクリプションモデルなどのビジネスでも活用されています。ただし、現代のSNSを通じた情報拡散や、顧客同士の相互影響といった要素は十分に反映されていないため、デジタルマーケティングでの活用には補完的なアプローチが必要です。
5Aカスタマージャーニーの各ステージの解説
デジタル時代の顧客行動は、多様なタッチポイントを経由しながら段階的に変化していきます。各ステージの特徴を理解し、適切なアプローチを設計することで、より効果的なマーケティング施策の実現が可能になります。
1. 認知(Aware)
第1ステージの「認知」は、顧客が商品やブランドの存在を初めて知る段階です。情報過多の現代では、印象的な出会いを演出し、次のステージへの移行を促すことが重要です。データ分析を活用することで、効果的な認知拡大のポイントを把握できます。
- 行動:オンライン上での情報接触、知人からの推奨確認、検索での新規発見
- タッチポイント:デジタル広告、SNSコンテンツ、実店舗での体験
- 心理:興味の芽生え、好奇心の喚起、課題意識の形成
2. 訴求(Appeal)
第2ステージの「訴求」は、顧客の感情に働きかけ、共感を生む段階です。単なる商品説明ではなく、ブランドストーリーや価値観の共有を通じて、より深い興味を引き出します。顧客の反応を把握し、効果的な訴求ポイントを見出すことが重要です。
- 行動:商品情報の確認、ブランド価値の理解、使用シーンの想像
- タッチポイント:ブランドサイト、SNSアカウント、商品紹介動画
- 心理:共感の形成、期待感の高まり、自己投影
3. 調査(Ask)
第3ステージの「調査」は、顧客が主体的に情報を集める段階です。正確で信頼性の高い情報提供と、疑問や不安への丁寧な対応が重要になります。顧客の声を分析し、よくある質問や懸念事項を把握することで、効率的な情報提供が可能です。
- 行動:評価やレビューの確認、商品スペックの比較、質問や問い合わせ
- タッチポイント:商品レビュー、カスタマーサポート、比較検討ページ
- 心理:確信への探求、不安要素の解消、判断材料の収集
4. 行動(Act)
第4ステージの「行動」は、購買を決定し実行する段階です。スムーズな購買体験の提供と不安要素の解消が重要です。顧客行動の分析により、購買の障壁を特定し、効果的な後押しを行うことができます。
- 行動:商品の選択と購入、支払い方法の決定、利用開始の準備
- タッチポイント:購入ページ、決済システム、利用ガイド
- 心理:購入への確信、決済時の安心感、期待感の高まり
5. 推奨(Advocate)
第5ステージの「推奨」は、顧客が自発的に情報発信する段階です。満足度の高い製品・サービス提供に加え、共有したくなる体験の創出が重要です。ブランドコミュニティの活性化支援により、持続的な推奨活動を促進できます。
- 行動:体験の共有、評価の投稿、周囲への推奨
- タッチポイント:SNSプラットフォーム、カスタマーレビュー、会員コミュニティ
- 心理:貢献意欲の発生、愛着感の深化、推奨意欲の向上
5Aカスタマージャーニーのメリット
5Aカスタマージャーニーの活用により、デジタル時代に対応した効果的なマーケティング施策の実現が可能になります。
1. 顧客行動をより深く理解できる
デジタル化により複雑化した現代の顧客行動を、体系的に理解することができます。従来の直線的な購買プロセスでは捉えきれなかった、SNSでの情報収集や他者への推奨といった行動も、明確に位置づけることが可能です。購入前の調査行動や購入後の推奨行動など、現代特有の消費行動を適切に分析できる点が強みです。各種分析ツールと組み合わせることで、ステージごとの顧客行動をより詳細に把握し、効果的な施策立案につなげることができます。
2. SNS時代の消費者行動に対応できる
SNSを中心としたコミュニケーション変化に、柔軟に対応することができます。情報収集から購買、そして他者への推奨まで、SNSが顧客行動に与える影響を適切に把握し、効果的な施策を展開できます。特に、各SNSプラットフォームの特性を活かした情報発信や、インフルエンサーマーケティングなど、現代のデジタルマーケティング手法との親和性が高いのが特徴です。多様な分析ツールと組み合わせることで、より効果的なコミュニケーション施策が可能になります。
3. 顧客のロイヤルティと推奨を向上させる
従来のモデルと異なり、購入後の推奨行動を重視する設計となっています。顧客満足度の向上に加え、積極的な推奨行動を促す施策立案が可能です。特に、SNSでの情報発信やレビュー投稿など、デジタル時代特有の推奨行動を促進する仕組みづくりに活用できます。また、推奨段階での顧客の声を分析することで、商品やサービスの改善点を把握し、さらなる満足度向上につなげることができます。これにより、持続的な成長サイクルを構築することが可能です。
4. マーケティング施策の効果を定量化しやすい
各ステージでの顧客行動を明確に定義することで、施策の効果測定がしやすくなります。認知段階での接触数、調査段階での行動量、購買段階での成約率など、具体的な指標設定が可能です。また、各種分析ツールを活用することで、顧客の声や行動の変化を定量的に把握することができます。これにより、投資対効果を明確にしながら、継続的な改善活動を進めることができます。
カスタマージャーニーを使いこなすためのポイント
効果的なマーケティング施策を実現するには、カスタマージャーニーの特性を理解し、状況に応じて適切に活用することが重要です。
1. 適切なモデルを使い分ける
カスタマージャーニーモデルは、ビジネスの特性や目的によって使い分けることが重要です。5Aモデルは、現代の顧客行動を捉えるのに適していますが、業態や商材によっては従来型モデルとの組み合わせが効果的な場合もあります。例えば、認知度向上が課題であればAIDAモデルの知見を活用し、継続的な利用促進が重要な場合は4Aモデルのアプローチを取り入れるなど、柔軟な対応が求められます。各ステージに最適な施策を設計し、オンラインとオフラインの両方のタッチポイントを効果的に組み合わせることで、より高い成果を生み出すことができます。
2. 定期的な見直しを行う
市場環境や消費者行動は常に変化しています。そのため、設計したカスタマージャーニーは定期的な見直しと改善が必要です。顧客の声や行動分析に基づいて、各ステージでの課題を特定し、必要な改善を行います。特に、新たなプラットフォームの台頭や、消費者の価値観の変化などは、顧客行動に大きな影響を与える可能性があります。チーム全体で現状の把握と課題の共有を行い、継続的な改善サイクルを回すことで、より効果的なマーケティング活動が実現できます。
まとめ
5Aカスタマージャーニーは、「認知」「訴求」「調査」「行動」「推奨」という5つのステージで顧客行動を捉え、デジタル時代に適したマーケティング施策の実現を可能にします。特に、SNSを通じた情報収集や推奨行動など、現代特有の消費行動を重視している点が特徴です。
このような複雑な顧客行動をより深く理解し、効果的な施策を展開するには、適切な分析手法やツールの活用が重要です。テキストマイニングによる顧客の声の分析、ソーシャルリスニングによる市場トレンドの把握、行動ログによるパターン分析など、目的に応じた手法を組み合わせることで、より精度の高い顧客理解が可能になります。市場環境の変化に合わせて柔軟に対応し、継続的な改善を進めることが、成功への鍵となるでしょう。
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