導入事例
概要
グループを横断した分析で、お客様の声を事業部に届ける懸け橋に。
CS視点で可視化することで、事業部の原動力となるVOCの全社共有を実現
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事例詳細
課題
- VOCを商品やサービスに活かしきれていないという意見が多くあった
- お客様の声の重要性は共通認識としてあったものの、それを”組織(事業部)として運用できる形にする”必要があった
- 約1万件のデータを手作業で分析したところ、5名で3ヶ月という工数をかけたもののカテゴリ分類が精一杯だった
- 事業部の着眼点を活かしつつ、分析の質を向上させる必要性を感じた
導入の決め手
- テキストマイニングにおけるナレッジが豊富だった
- 分析担当者でなく、閲覧者に”見せる”ことに優れた共有機能が優れていると感じた
取り組み・成果
- 業務報告が中心だった営業日報に、VOCの記入欄を設けることで、担当者の気づきや提案などの記載が増加
- 問い合わせ内容をワードマッピングで分類したことで連携する事業部が改善の必要性を認識。ユーザーの困りごとから、PWの入力欄で入力した文字が確認できるように仕様変更されるなどの商品改善に繋がり、最終目標である「問い合わせ削減」に成功
- 問い合わせ内容をマトリクスで分類することでKPI化を実現し、モニタリングできるよう整備。ナレッジ化された情報が窓口対応に活用されたことで一次解決率が向上
- 増加した問い合わせ内容を、時系列で可視化したことで検知し、FAQに反映したことでお客様の自己解決率が向上し、問い合わせ数削減を実現
- 見える化エンジンの共有機能を活かして整備したVOC社内ポータルを「Cotodama(コトダマ)」と命名し、お客様の声を社内へ発信
PHCグループは、PHCホールディングス株式会社とその事業子会社であるPHC株式会社、アセンシア ダイアベティスケアホールディングス、エプレディアホールディングス、株式会社LSIメディエンス、ウィーメックス株式会社などの総称です。今回、各事業を横断して取り組むVOC(Voice of Customer: お客様の声)活用ついて、PHC株式会社CS推進課課長の山本氏にお話をうかがいました。
※本記事の取材は2022年7月21日に行われ、各名称・取り組みは取材時点のものです。
導入当初の想い、取り組みについてはこちら
ゼロからのお客様の声活用。当時は1万件のデータ分類に5名で3ヶ月かかったが、具体的なステップが見出だせなかった。
− VOC活用の取り組み強化に動き出した背景には、どのような課題があったのでしょうか?
もともとVOCは、事業部のお客様対応部門がそれぞれ取り扱っていました。
ただ、VOC活用状況についての社内アンケートでは、品質問題、保守対応など顕在化している困り事に関する声には対応できているが、全てに対応はできていない。VOCを商品やサービスに活かすことができているか?という問いには、不十分だという意見も多く、部門間の認識に温度差があることがわかりました。
お客様の声を活かす必要性は感じていても、活かしきれていないと多くの社員が感じている。この結果は、PHCグループのVOC活用が成長する大切なきっかけになると確信しました。
そこで、各事業にVOCを届ける「懸け橋になること」を目指し、取組みをスタートしました。グループ横断でVOCを活用できる仕組みの構築に、まさにゼロから着手したのです。当初は事業部に協力を仰いでも「VOC活用というコンセプトには同意するが、何をするの?」となかなかピンとこない様子で、お客様の声の重要性は十分感じているものの、それを”組織(事業部)として運用できる形にする”必要がありました。
− 課が発足してから、「見える化エンジン」導入前の取り組みと、テキストマイニングに興味を持ったきっかけについて教えてください。
まず各事業部のVOCをCS推進課に共有してもらい当社に蓄積されているVOCの現状を知ろうとしました。
約1万件のデータを手分けして分析しましたが、分析といっても手作業ですから、5名で3ヶ月という工数をかけましたが、カテゴリ分類が精一杯。結果を各事業部にフィードバックしたところで作業自体は労われたものの、内容に関しては今ひとつ価値を感じてもらうことができませんでした。
この経験を通して実感したのは、着眼点は間違っていないけれど、分析の質をもっと改善し、分析の種類も充実させていく必要があるということ。膨大なリソースを割くことなく、大量の情報を分析して有用な形で可視化していくことができないだろうか?と考えた際、メンバーから「テキストマイニングを使ってみてはどうか」と声が上がりました。
ナレッジの豊富さ、”見せる”ことに優れた共有機能が決め手となり、見える化エンジンを導入
− テキストマイニングツールの中で「見える化エンジン」を選んだ理由をお聞かせください。
ツール導入に際しては複数社、比較検討しました。独自に検討表を作成し比較して、結果的に最も評価が高くなった「見える化エンジン」に決めました。
決め手となったポイントは、テキストマイニングにおけるナレッジの豊富さ、自分たちで使うだけでなく、”見せる”ことに優れた共有機能などが他社製品よりも優れていると感じたことです。
プレゼンの段階から、私たちがやりたいことを叶えるために真摯に考え、さまざまな提案をしてくださった熱意もとても響き、2020年5月に導入しました。
事業部ニーズへの理解不足から分析することが目的に…。自部門の課題解決を参考事例にし、事業部との連携を強化
− ツールを導入直後の状態はいかがでしたか?
それが、ツールを導入した後も再び壁に当たってしまいまして…。
いくら便利なツールを使って分析しても、分析に対する基本的な考え方が不十分でしたから、今思うと試行錯誤するうちに分析自体が目的になってしまっていました。そして何より私たち分析側が、事業部が分析結果に何を求めているのか十分に理解できていないことが課題だと気づいたのです。
それならまずは参考事例を作ってみてはどうか。自部門のお客様センターを対象に、課題を見極め、VOCを活用して課題解決することに挑戦してみてはどうか。それができれば他事業部の要求も汲み取り、取り組めるようになるのではないかと考えました。
− 参考事例を作るべく、まず自部門で行った取り組みについて教えてください。
まず、お客様センター内で解決すべきことをみんなで検討して課題化し、目標を「VOC分析でお客様からの“問い合わせ”件数を削減する」に設定しました。
その目標に沿ったVOC分析から「対応に時間がかかる」ことが問題として見えてきました。さらに深掘りしたことで、根本的な問題は「既存のナレッジが不足している」ことが原因であるとより具体的に、定量的に示すことができました。
分析結果を事業部に共有し、協力を依頼すると、分析結果がなかなか好評で、「もっとこんな情報があればよいのでは?」といった提案が上がってきました。事業部は必要な情報をお客様相談センターに提供し、その中で有効な情報は事業部のホームページにあるFAQにも反映するという流れが定着し、ナレッジ強化も進みました。
こうして、徐々に特定の項目に関する問い合わせが減少していき、最終的に目標であった「問い合わせの削減」を達成することができました。
これがよき参考事例となり、その後事業部との連携が増えていきました。
社内ポータルを整備し「Cotodama(コトダマ)」と命名。グループを横断したお客様の声活用の流れを確立
−貴社ではVOC活用の取り組みを全社共有できる社内ポータルも独自に構築されていますね。
はい、見える化エンジンの共有機能を活かして整備したVOC社内ポータルを「Cotodama(コトダマ)」と命名し、運用しています。
これは、プラスアルファ・コンサルティング社のセミナーで、ポータルに愛称付けることで、ユーザーに親しみを持ってもらえると伺ったからです。また、オリジナルのロゴも作成しました。
社内ポータル「Cotodama」を軸としたお客様の声の社内共有の流れは下図の通りです。
- まずVOCが各事業部のCRMに集約され、その中から各テーマに合わせた分析を私たちCS推進課が実施。
- その中で、顕在・潜在ニーズをCS視点での可視化し、気づきとともに各事業部にフィードバックする。
- その情報に基づいて、事業部はお客様の声を原動力に変え事業に活かしていく。
これがPHCグループを横断したVOC活用の一連の流れです。
これにより、VOC共有の仕組み化だけでなく、コロナ禍におけるVOC活動の歩みを止めずに推進できました。リモートワークなどワークスタイルの変化が起こっても、愛媛・東京・大阪・群馬にいる仲間たちと同じ結果を見てVOCについて語ることができるのは、非常にありがたいことです。
要望や困り事の理解・目的の設定から始まる分析で、各事業部の課題を解決
− 実際に事業部とどのようなVOC活用の取り組みをしているか、事例をご紹介ください。
各事業部とさまざまな取り組みを実施していますが、サマリーに記載した3事業部との取り組み例を紹介します。
どの事例も、課題を理解し、目標を設定してから分析に着手したことで、本来の目的を達成できたという例です。
−ではまず、診断薬事業部門との「営業日報の活用とKPI化」について、事例をご紹介ください。
糖尿病マネジメントを展開する診断薬事業部門から、営業日報に記載されるVOCをもっと活用できないか? KPI化できないか?という相談がありました。
まず営業日報を確認してみたところ、記載される内容は業務報告が中心でそもそもVOCと呼べる情報自体が少ないとわかりました。
そこで「VOCの書き込みを増やすこと」を最初の目標に設定。営業担当者が能動的にVOCを書き込みやすくなるよう、管理システム上に記入欄を追加・改善しました。
結果、お客様の声をはじめ、担当者の気づきや提案などの記載が着実に増えました。
シンプルな対策ですが、ライティングが整備されたことはVOC活用において非常に重要なポイントです。整備された情報はテキストマイニングで分析しやすく、活用までの時短にもつながります。記載してもらう表現を、運用として統一するだけでちょっとしたニュアンスの違いや、意見の取りこぼしはぐっと減ります。
−続いて、メディコム事業部の問い合わせデータの分析から、「問い合わせ削減」と「お困りごとからの商品改善」を実現した事例をご紹介ください。
ヘルスケアソリューションを手掛けるメディコム事業部が運営する特定保健指導支援システム「ウェルスポートステップ」におけるユーザーからの問い合わせを減らしたいという要望に対する分析・活用事例です。
内訳の集計から、ID・PWがわからなくてログインできないという内容が多いと分かり、改善点を探りました。まずは実際の問い合わせ内容を、ワードマッピングで可視化したのです。
こうすることで、問い合わせの話題を俯瞰し、注目すべき大項目を洗い出すことができ、下図の左側、青い円で囲んだ3つに大項目を分けることができました。
1件1件は小さなVOCも、見える化・深堀することで「課題」として客観的に可視化され、事業部も改善の必要性を認識し、優先度を上げてくれました。
分析からユーザーの困りごとに気づけたことで、PWの入力欄で、入力した文字が確認できるように仕様が変更され、当初の目的であった、お問い合わせを減らすことに成功しました。
−同じくメディコム事業部の問い合わせデータの分析から、問い合わせ内容を正しく分類し、「ナレッジ強化」「KPI化・モニタリング」を実現した事例をご紹介ください。
保険のオンライン資格確認の本格運用を開始に伴い、同事業部が展開する電子カルテシステムに問い合わせが急増したことがありました。その際に事業部より、大量の問い合わせデータを把握し、改善アクションにつなげたいという要望が出ました。
そこで、まず一部の問い合わせデータを見える化エンジンで分類し、下図の左上のようにマトリクスで表しました。
これにより、問い合わせ内容を20項目ほどに分類しましたが、どれにも当てはまらない「その他」に分類される情報も多いことがわかりました。
データを集めるとよくあることですが、既存の項目や、自分たちの想定で作った分類軸に含まれなかった「その他」に分類されるデータにこそ、有用な情報が隠れています。これを目視で紐解くのは難しいけれど、テキストマイニングなら可能になります。私たちも見える化エンジンで「その他」を深掘りしながら、事業部とも議論を重ね、約100項目まで拡充しKPI化することに成功しました。
現在は項目ごとに問い合わせ件数を、日々モニタリングできるようになっています。また、この情報がナレッジ化され、システムの窓口で活用されることで一次解決率の向上にもつながっています。
− 最後に、バイオメディカ事業部にて「FAQ拡充によりお客様の自己解決力向上」につながった事例をご紹介ください。
コロナ禍において、ワクチン接種の実施に伴い、当社が提供している超低温フリーザーについて、ワクチン保管に関する問い合わせが殺到しました。そこで、同製品を取り扱うバイオメディカ事業部から、タイムリーに問い合わせ内容とその傾向をモニタリングしたいという要望が上がりました。
この問い合わせデータを分析したアウトプット例が、下図にある「時系列マッピング」です。豊富な見える化エンジンの機能の中でも事業部の中で人気のある機能でして、現状と、対策を打った後の変化が視覚的に見えるというものです。
赤い円の部分で、「扉/ふたの操作」に関する問い合わせが増加していることを検知しました。
この情報をもとに、事業部のHP内に該当のFAQを追加したところ、お客様の自己解決力が向上し、コールでの問い合わせ数が減少しました。
VOCの能動的な収集から分析、発信、ナレッジ化まで、ユーザーに貢献するVOC活用を推進していきたい
−サポート体制についてはいかがでしょうか。
とても助かっています。特にポータル構築の際には、サポートデスクに非常に沢山の問い合わせをしましたが、どのような問い合わせにも細かく丁寧に回答いただきました。
社内ポータルができあがったのもサポートデスクのおかげだと思っています。
− 貴社が今後目指すVOC活用の展望を教えてください。
今、「Cotodama」を軸に新たな取り組みにも着手し始めています。
一つがVOCを能動的に収集する「Miraidane(ミライダネ)」。もう一つがAR技術を用いて、よりわかりやすく商品やサービスをお客様に知ってもらう「Cocomi-ru(ココミル)」。そして、収集し分析した情報から有効な情報をナレッジ化し、社内外に提供することを目指す「Tsunagaru(ツナガル)」。
上記4つの取り組みが展開することで、当社のみならずパートナー企業様とともにVOC活用が実践され、最終的にはユーザー様の未来づくりに貢献していく。このイメージを私たちは「B with B for C」と呼んでいます。企業と企業が手を結び、ユーザーのために貢献していくことをテーマに、今後もVOC活用の取り組みに邁進していきたいと思います。
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