導入事例

概要

大正製薬株式会社(旧:大正富山医薬品株式会社)
学術研究センター お客様相談室 グループマネージャー
杉本氏/長岡氏

顧客の声の「見せる化」を目指し挑戦し続ける

導入前の課題と導入後の成果

  • #医療・製薬
  • #メーカー

事例詳細

導入前の課題

  • 社内への日報や月報作成に時間がかかりフィードバック活動が拡大しない
  • 「お客様相談室に顧客の声が蓄積している」という社内認識が低かった。顧客の声のフィードバックには社内周知が必要であった

導入の理由

  • 見える化エンジンは、オンプレミス型と比べて初期費用がかからないクラウド型サービス。
  • 操作画面のビジュアルも分かりやすく、他社のテキストマイニングツールに感じた、『使いこなせるか』という不安も払拭できたため

導入後の成果

  • 日報の作成・配信をすべて自動化。就業後1時間の作業が自動配信、自動プッシュメールによりゼロになった
  • 日報メールのファーストビューに重要な表・コメントを掲載。“見せる化”に成功し、顧客の声を意識する習慣が根付くように

医療用医薬品の特殊性から顧客の声の活用が難しい医薬品業界。社内周知から始めた

顧客の声をビジネスに生かそうとする取り組みが、各業界で進められている。ただ、業界によって当然事情は異なり、顧客の声を採り入れやすい業界もあれば、逆に採り入れにくい業界もある。製薬・医薬品販売の業界は、後者の代表格。新薬を開発する場合には、治験や厚生労働省の審査など、さまざまなプロセスを経る必要があり、開発期間は必然的に長期化する。顧客の声に耳を傾けてニーズを見つけても、短期間のうちに改良することは非常に難しい。

他にも医薬品関連の業界で、顧客の声の活用を妨げていた要因がある。社内における問い合わせ対応業務の立ち位置だ。医薬品関連の業界で、問い合わせ対応を任されているのは“学術職”という専門職。学術職には、MR(医薬情報担当者)の支援、医薬品にかかわる最新データを収集・管理して情報提供していくDI(ドラッグインフォメーション)業務などがあり、数ある業務の1つとして、問い合わせ対応に当たってきた経緯がある。

その結果、顧客の声の収集・分析業務の中核となるコールセンターを強化しても、社内からは「学術員が片手間で対応する業務の規模が大きくなっただけ」という見方をされることになる。あくまで「片手間で対応する業務」として扱われがちなため、顧客の声が収集されている認識が薄く、また分析に取り組もうという機運が会社全体で盛り上がりにくいわけだ。

そんな医薬品関連の業界においても、「顧客の声を大切な経営資源の1つとして、有効活用していこう」と挑戦を始めた企業がある。大正製薬株式会社(旧:大正富山医薬品株式会社)だ。同社は、大正製薬と富山化学工業が研究開発・製造した医薬品の販売を手掛けている。主に取り扱うのは感染症領域、炎症・免疫領域や糖尿病等の代謝性疾患領域の医薬品などをラインアップ。特約店を介して病院・薬局などに販売し、売上高は2015年3月期で1116億円。社員数1200人ほどの企業だ。

年間2万件もの顧客の声を業務に役立てる。そのためにまず必要なのは、本格的なシステムの導入

大正製薬株式会社(旧:大正富山医薬品株式会社)が顧客の声の活用に取り組むに当たり、具体的な目標として掲げていた点は大きく2つ。まず1つは、社内における顧客の声の情報共有を強化すること。そしてもう1つは、顧客の声をしっかりと収集・分析できる体制を整え、社内外のより広い範囲で役立てていくことだ。同社には年間2万件ほど顧客からの問い合わせが寄せられるが、病院・調剤薬局で働く薬剤師からが約8割近くを占め、情報共有の強化を推し進めていけば、MRの営業活動に役立てられる可能性がある。「どの病院・調剤薬局で働く誰が、どんなことを気にしていた」と共有することで、ニーズを把握でき営業活動時の情報伝達やコミュニケーションがよりスムーズになる効果を期待できるからだ。

一方、後者の具体例を挙げるため、まずは医薬品“販売”会社という同社独自の事情に触れておきたい。 というのも、同社が持っているのは販売機能だけ。顧客から「この点についてさらに詳しい試験結果がほしい」「ここを改善してほしい」といった要望が届いても、自社ですぐに対応することが難しい。製造元に要望を伝えるしかないケースが多いのだが、「こんなニーズがありました」と報告されるだけでは製造元としても対応すべきかどうかの判断ができない。

そんな現状も、顧客の声を定量的に把握できるようになれば、「こんなニーズが何%を占めるが、これはイベントにより増加したことが理由と考えられると説得力あるデータを添えて働き掛けられるようになり、製造元でも合理的に対応を急ぐべきかどうかと判断を下せるようになるわけだ。

そのように、年間2万件もの顧客からの声を漏れなく集めてMR担当者1人1人に共有し、膨大な問い合わせ情報を収集・分析して必要なデータを簡単に取り出せるようにする。それだけのことを実現するには、人的リソースに頼っていては不可能だ。従来のWordやExcelを使って手作業で進めていたやり方をやめて、顧客の声を収集・分析するための本格的なシステムを導入する必要性を感じるようになっていたという。

高額で使いこなせるか不安だったオンプレミス型。クラウド型の見える化エンジンを知り、導入を決断

そんな経緯からシステム導入を検討し始めた大正製薬株式会社(旧:大正富山医薬品株式会社)だったが、当初検討していたのは、自社専用のサーバなどを導入するオンプレミス型のシステム。導入時にかかる費用の高額さ、そして「いざ導入しても使いこなせないのではないか」という不安を感じていたことから、導入に踏み切れないでいた。

「そんなとき、プラスアルファ・コンサルティングの『見える化エンジン』を知り、興味を持ちました。実際に操作画面をチェックさせてもらったところ、『とても分かりやすくて使いやすそうなビジュアルだな』と好感を持ったのです。

さらに、以前に検討していたシステムは、導入費用負担が大きかったため保留されていましたが、見える化エンジンは初期費用20万円から、基本利用料10万円からと非常に手頃な料金体系で利用できるクラウド型のサービスです。トントン拍子に話が進んで、2012年に導入させていただくことになりました」(杉本氏)

1日の問い合わせ情報をまとめた日報作成の業務を自動化。多彩なレポートを簡単に作成可能に

顧客の声を収集・分析するために新しいシステムを導入しても、情報を活用し社内で役立てていこうという意識が社内周知されていなければ、宝の持ち腐れになってしまう。 そこで杉本氏はじめ、お客様相談室のメンバーが最初に取り掛かったのは、社内への啓発活動だった。社内に新システムを導入したことをアナウンスし、社内でシステムの説明の機会を増やすことで、まずは情報がお客様相談室にプールされていることとの周知、そしてその情報を活用する意義の社内啓発に励むことになった。

実は、そのような活動ができたことこそ、見える化エンジンを導入した最初の成果だと杉本氏は言う。従来は、WordやExcelを使って手作業でレポートを作成するのに手間がかかっていたが、導入後は簡単な設定・操作さえしておけばレポートが自動作成されるようになった。レポート作成の手間が省けた分、そこに費やしていた時間を他の業務に充てることができるようになったわけだ。

例えば、その日に寄せられた問い合わせ情報を社内共有する目的で作成・配信していた日報。以前は担当者1人が就業後1時間ほどかけて作成していたのだが、見える化エンジンの導入によってすべて自動化することに成功。日報作成にかかる作業量がゼロになった。

またレポート作成作業要らずで日報をすぐに共有できるようになったため、日報の内容を確認できるタイミングも当日の18時台と前倒しになり、関連部署がその日の夜には閲覧できるようになった。新製品を発売した当日には初速の反応を探って善後策を講じるなど、よりスピーディーな対応が可能になったという。

見える化エンジンによって、欲しいレポートを素早く作成できるようになりました。以前よりもずっと効率化できたと実感しています。社内の関連部署からは『お客様相談室は最先端のITを活用しているね』と感心をもってもらえるようになりました。社内でのお客様相談室の存在感も増し、この部署自体の“見える化”にも成功したと思っています」(杉本氏)

「目的に合わせて、レポートの見せ方を簡単に変えられるようになったことも、見える化エンジンを導入した利点でしょう。例えば、顧客の声1つ1つに耳を傾けてほしいときにはテキスト中心のレポートを作成したいですし、現状を定量的に把握してもらいたいときにはマッピングやランキングを使ったレポートの方が分かりやすいですよね。

見える化エンジンを使うと、マッピング、ランキング、時系列モニタリング、グラフなど、さまざまな機能を使ってレポートを作成できます。目的に応じた見せ方ができるので、ありがたいです。『円グラフで見せるのは、ちょっと違うかな』と思ったときには、少し操作するだけですぐに棒グラフに切り替えられます。『クロス集計すれば、もっと役立つ気付きが得られるかも』と感じたときにも、すぐにクロス集計結果を確認できて助かっています。以前のExcel頼みだったころには考えられないくらい仕事が捗りますね」(長岡氏)

メール開封時のファーストビューに重要な情報を掲載。日報メールを工夫し、“見せる化”に尽力

レポート作成業務を効率化できたことで、余力が生まれたお客様相談室のメンバー。社内啓発の活動が一段落したところで、今度は「社内における顧客の声の情報共有を強化」しようと、日報の見せ方を工夫して“見せる化”するための試行錯誤を重ねるようになった。

「導入した直後は、部署・役職ごとにチェックしてほしい情報をまとめたページを見える化エンジン内に作成し、そのページのURLを日報に添えてメールで送っていました。

クリックもスクロールも要らないように、メール開封時のファーストビューに大切な情報をまとめた表を掲載し、できるだけ短くまとめたコメントでポイントを説明する。経営層には、気に留めておいてほしいリスク情報を一番目立つ場所に載せるなど、送り先に合わせて載せる情報をカスタマイズするように工夫しています。こうした毎日のメール配信も、見える化エンジンに備わっている『プッシュメール配信機能』を利用すれば、新しくシステムを導入しなくても簡単に実現することができます」(長岡氏)

製品の問題点をいち早く把握。社内や製造元に働き掛け、より顧客本位の製品へ

そのような工夫を重ねてきたことで、顧客の声を社員1人1人に“見せる化”することにも、ある程度の手応えを感じられるようになってきたという。

そこで今年度から挑戦し始めたのが、顧客の声を「社内及び製造元へより広い範囲で役立てていく」こと。杉本氏・長岡氏に、それぞれどのような取り組みを進めているのか、語ってもらった。

「今までは、『こんな問い合わせが多いですよ』と社内で情報共有するところで終わってしまっていました。現在はそこから一歩踏み込み、『問い合わせが多いため、顧客がよく利用する資料に情報を掲載するとよいのでは』と提案する段階に入っていっています」(杉本氏)

「見える化エンジンで顧客の声を分析することで、あらためて医薬品を服用する患者さんから薬剤について詳しく聞きたいとするご相談が多く寄せられていることに気付きました。そこで医療従事者から患者さんへ薬剤の情報をお伝えしやすいようにお客様相談室から患者さんへの説明用資料の改良版を提案し、医療従事者の先生方にご利用いただくなど、社内関連部署と検討し対策を講じていく予定です」(長岡氏)

さらに杉本氏が今後の課題として言及したのは、顧客の声を活用する取り組みの成果をどのようなKPIを使って評価するかということ。商品改善提案の件数、見える化エンジンの閲覧人数/頻度やPV数といった社内からのシステム利用状況などを基に顧客の声の活用状況が分かるKPIを編み出し、定量的に進捗を把握できるようにしていきたいという。

苦労した末に、ようやくサイクルが上手く回るようになったからには、今後もサイクルを滞らせることなく、より一層の好循環へと導いていきたい。杉本氏がKPIを必要とする背景には、そのような考えがあるようだ。

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