導入事例

概要

スカイマーク株式会社
取締役執行役員
原 高太朗 氏

2020年度JCSI(日本版顧客満足度指数)調査「国内長距離交通部門」第一位を獲得したスカイマークが実践するCS推進室の役割と現場での取り組み

  • #サービス・流通
  • #交通・インフラ

華麗な復活を遂げたスカイマークが顧客に選ばれる理由は、リーズナブルな運賃と高い定時運航率だけではない。お客様の声を集め、それを活用することが、確実に顧客満足につながっている成果と言えるだろう。しかし企業規模が大きくなればなるほど、CS推進の考え方を現場のすみずみまで浸透させていくのは至難の技だ。スカイマークはいかにして、お客様の声を顧客満足度向上へとつなげているのだろうか。その取り組みについて、取締役執行役員 原高太朗氏にお話を伺った。

初心に立ち返り、お客様の声に耳を傾けるために

――CSに力を入れるようになった背景を教えてください。

スカイマークは航空会社ですから、「安全であること」が大前提。その上で、高品質な運航とシンプルで心のこもったサービスを身近な運賃で提供していく。これがスカイマークのビジネスモデルです。品質でいえば、スカイマークでは飛行機を時間通りに飛ばす定時性をすごく大事にしていて、定時運航率は3年連続ナンバーワンになっています。

安全や高品質な運航については、それぞれ社内で特別な会議体を設けて一丸となり取り組んでいます。CSについても安全や品質と同じレベルで全社で取り組んでいこうと、2018年に「CS推進室」を立ち上げました。2015年に民事再生で一度振り出しに戻り、そこから2〜3年が経ってCSにも力を入れられるようになったタイミングでした。

航空会社は、運航部門・客室部門・整備を扱う整備部門など、それぞれが縦割り構造。しかし、お客様に満足していただくためには、それらを横串で通す組織が必要です。そこで全社横断的な組織であるCS推進室を設け、会社のCSに関する方針を定め、各本部の実情に合わせて運用するようにしたのです

搭乗後アンケートでお客様の声を収集・見える化

――実際にお客様からはどんな声があがっているのでしょうか。

「ポジティブな声」と「ネガティブな声」は半々くらいですね。よくあるのは、空港や機内でお客様のお荷物を持ったり棚に収納するのをお手伝いした際にいただく「ありがとう」という声です。 少し前は、新型コロナウイルスの影響でお客様が減少していく中、新千歳空港のランプ部門の担当者が「大変な時ですが乗ってくれてありがとう」とメッセージボードに書いて飛行機に向かって掲げたことがありました。それをお客様がTwitterで発信してくださり、一気に拡散しました。

2018年9月から搭乗後アンケートを実施しています。空港については地上係員の対応、客室については客室乗務員の対応が評価されます。最後に全体的な満足度について。5段階で評価していただく非常に簡単なアンケートです。フリーコメントも書けるようになっています。フリーコメントは任意ですが、8割のお客様が書いてくださいます。さらに、低評価をした方はほぼ全員が何かしらコメントをくださいます。それがコロナ禍の時期には、会社に対するエールが8割を占めるようになりました。「頑張って欲しい」や「スカイマークの存在意義はあります」など。そういう声は嬉しいですね。

当初はアンケートの回答が集まらなくて色々工夫しました。データの信頼性を得るためには、全搭乗者数の3%以上の回答率を保ちたいと考えています。一度アイスクリームのプレゼントキャンペーンを実施した時には、毎日1,000件以上という凄い量の回答が集まり、分類が追いつかないくらいでした(笑)。今では機内で「お客様満足度向上のために声をお聞かせください」とアナウンスしており、3%以上の回答を維持できるようになりました。

しかし、お客様のコメントだけを見ていても、はじめはどれが重要なのかわかりませんでした。そこで見える化エンジンを導入してお客様の声を数値で見える化し、やっと優先順位づけができるようになりました。コメントの件数が多いからといって、低評価になっている訳ではない。その相関はExcelでの集計では見えなかったのです

旗を振るCS推進室の役割と現場での主体的な取り組み

――CS推進室を作っただけで全社の統率がとれて組織がスピーディーに動くものでしょうか。

はじめの1年間はCSアンケートを十分に活用できていませんでした。結局どこから手をつけて良いのか分からなかったということ。今は見える化エンジンの相関分析やリフト値などを使って課題の優先順位付けができるので、各部署で共通する課題があれば優先して取り組むようにしています。

昨年度は現場で課題を抽出して実行していましたが、現場では分析まではできないので、今年度からCS推進室が分析・課題の優先順位付けをし、現場に協力を仰いで推し進めるかたちにしています。

しかし、いくら本部が旗を振っても、情報がきちんと現場まで伝わらないとうまく回りませんし、現場は納得しなければ動かない。お客様の声を視覚的なグラフなどにして現場にわかりやすい形で共有することにして、CSに関する会議体の仕組みも変更しました

各部門に改善の協力を依頼する時も、手ぶらではまったく説得力がありませんが、お客様の声が見える化されていると説得力が違いますね。非常に難しかったアンケートのフリーコメントの分析も、テキストマイニング技術を活用。その結果をもって各本部に「こう改善をお願いします」と話をするようにしています。

――具体的にはどのようにCS向上に取り組んでいますか?

お客様の声で代表的なものは、毎朝のミーティングで会長・社長にまで報告を上げています。さらに月に1回のCS推進会議では、それぞれの担当部門で改善策を考えて実行された改善策をモニタリングしていく。PDCAサイクルをきちんと回していくことで、CSの評価を上げていくように取り組んでいます

先ほどの新千歳空港の事例の良いところは、現場のスタッフたちが自主的に考えて取り組んだことです。当然、安全確認をした上で定時性も損なわないように実行しています。現場が主体的に考えて行動したことが、お客様の感動やサプライズにつながりました。機長も、余裕がある時には色々な情報を機内でアナウンスすると、お客様から「今日はこういうパイロットで良かった」と高い評価をいただけます。高評価を得ることを狙っている訳ではありませんが、現場ではこうした取り組みが自主的に行われ始めました。

航空会社はマニュアル重視です。その中で、現場のスタッフたちが「お客様に喜んでいただけるように何かできることはないか」と、自分たちで考えて取り組むことが顧客満足度を高めるために重要です。今後は「アンケートの回答をもとにこう改善した」ということをどのようにお客様に伝えていくか、がこれからの課題です。

スカイマークのやり方で、顧客満足度日本一を目指す

――今後の取り組みや目標を教えてください。

経済産業省などが協力・支援して開発した顧客満足度調査で『JCSI』があります。毎年国内の約400の企業を対象に調査を行なっているのですが、この調査で日本一になることが全社目標です。

民事再生をした2015年度はやはり評価が低かったんです。しかしCS推進室を設けてPDCAを回す取り組みをした結果、右肩上がりで着実に伸びています。全業種の中での順位は2018年度が31位、2019年度は15位。国内長距離交通部門(国内航空10社と新幹線7路線)では2018・2019年度ともに2位になりました。

過剰なサービスでCSを高めても結局は長続きしないし、スカイマークのビジネスモデルとも離れていきます。身近な運賃でサービスを提供し、利用してみたら「スカイマークけっこう良かったじゃない」という、価格に対する期待を上回る評価を得られるようになりたいと思います。スカイマークのビジネスモデルはシンプルなサービス。一言でいうと、コスパを極めるということですね。

こうして全社一丸となって取り組んだ結果、おかげさまで2020年度JCSI(日本版顧客満足度指数)調査「国内長距離交通部門」において念願の第一位となることができました。“安全を最優先し、お客様の時間を大切に考え、シンプルで温かく誠実なサービスを身近な価格で提供する。”当社独自のビジネスモデルにさらに磨きをかけていきたいと考えています。

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