導入事例
概要

グローバル展開する大手化学メーカーがグループ横断で分析研修を実施し、定性データ活用の浸透を目指す
- #リサーチ
- #経営戦略
- #アンケート
- #音声認識
- #マーケティング
事例詳細
課題・背景
・カンパニー全体として、多くの現場でデータが蓄積されている一方で、定性データ活用が不十分だという問題意識があった。
・正しいデータ収集・適切な分析から、関連部門やお客様にフィードバックできる仕組みづくりが必要と感じていた。
・定性分析に関するウェビナーを実施したところ多くの参加者が集まり、社員が定性データ活用に関して何らかの課題を感じていることが浮き彫りになった。
取り組み
・見える化エンジンを実際に操作しながら定性データの分析手法を習得する、計6回の研修を企画。
・公募で117名の応募が集まり、グループ横断で32名を対象として実施。参加者が部署で実際に扱うデータを持ち寄り、
グループディスカッション形式を交えることで実業務での活用を推進した。
成果
・アンケートの自由意見などの定性データを分析し背景・原因を発見するために、テキストマイニングを活用して取り組むことで、定性分析に関する基礎知識を習得できた。
・定性分析に関する受講者の学びが各部署に持ち帰られたことで、定性データの現場での活用に繋がり始めている。
・研修、分析内容の共有を通じて、新たな分析依頼が来たり、海外のグループ会社から反応があるなど、定性データ活用に関するオープンなコミュニケーションにつながっている。
1947年創業、プラスチック製品のパイオニアとして業界を牽引し、現在は「高機能プラスチックカンパニー」「環境・ライフラインカンパニー」「住宅カンパニー」の3カンパニーとコーポレートの構成で、グローバルに事業を展開する積水化学工業株式会社。カンパニーごとに管轄関係企業を複数擁し、その総数は国内外で165社にものぼる。コーポレート主導でスタートした見える化エンジンによる定性データの活用を各カンパニーの必要現場へ広げるべく、PACによるテキストマイニング研修を実施。担当者にその経緯や研修に期待したことなどを伺うと同時に、研修参加後の社員6名に感想をうかがった。
3カンパニーと1コーポレート。課題を抱える現場に見える化エンジンを展開し、定性データ活用の浸透を目指す。
− もともとコーポレートで見える化エンジンを導入しようと考えたのはどのような背景からだったのですか?
飯塚氏:もともとCS部門ではお客様相談室の対応履歴、品質管理部門なら顧客満足度調査など、定量・定性どちらのデータも蓄積されていましたが、それらをうまく活用できていないという問題意識がありました。またそのデータ自体が正しく収集できているのか=アンケートの組み立てが適切かどうか、という点も課題に感じており、データを正しく取得し、適切に分析して、関連部門やお客様にフィードバックできる仕組みを作りたいという思いがあったのです。
田端氏:この課題を感じる中で、お客様のお問合せやアンケート等の声を分析し、各部門が能動的に声活用に取り組むことが必要だと思い、テキストマイニングが解決のヒントになると考えました。見える化エンジンを含む複数製品を比較し、事例が充実しているほか、機能やサポートでも評価のよかった見える化エンジンの導入を決めたという経緯があります。
― テキストマイニングでの定性分析に取り組む前はどのような状態でしたか?
飯塚氏:定量も定性も、分析で深掘りすること自体できていない状況でした。定量データはエクセルで示して、定性データは全件目検での確認にとどまっていました。その中で、マーケティング視点で実施する「聞きたいポイントを絞って聞く」アンケートに関しては、比較的読みやすいのですが、そうではないデータ、例えばフリーコメントのような、話題が多岐にわたるデータは、どう分析していいのかわからないという状況でした。
田端氏:私は見える化エンジンの活用をはじめとした定性データ活用を、コーポレートやカンパニーを横断し、必要部署に展開していく役割を担っていますので、CS・品質関連のテキストデータはもっと活用できるのではないかと、ツールの展開を促しました。
それまでのCS部門は、おもてなしのような部分の強化には取り組んでいましたが、データをもとに改善する、例えば品質改善をはじめとしたアクションに繋げていくということに関しては未着手でした。データをもとに議論をしたほうが、客観的な事実から共通認識をもって判断できるので、CS部門に限らず同じような課題のある部門には見える化エンジンを展開して、どんどんデータを活用していってほしいと考えました。
定性データを正しく収集・分析し、アクションに繋げられる仕組みづくりのため、カンパニーを横断した研修を企画。
― 研修を実施した背景には、どのような狙いがあったのでしょうか?
田端氏:きっかけは昨年、PACのコンサルタントを講師に迎えて、アンケートにおける定性分析に関するウェビナーを実施したことです。全社で参加者を募集したところ、約370名と、当時最大の応募が集まりました。やはり多くの社員が定性分析に関して何らかの課題を持っているのだということが裏付けられたのです。そこで、ウェビナー後にアンケートを取って、何名かには分析に関して抱えている問題についてヒアリングも実施しました。その結果、やはりツールを何も使っていない状態では根本的な解決につながらないと感じたので、見える化エンジンの活用をきちんと研修というかたちで実施していこうと考えました。
― 今回行った研修の全体像について教えて下さい。
田端氏:研修の内容を示して社内公募し、参加したい人には自己申告書を書いて応募してもらいました。予想以上に応募が集まったので、申告書を読み込んだうえで、実務に活用されそうか・課題が解決されそうか、などの視点で審査し、117名の応募者の中から参加者32名を選抜しました。開催は月に1回で、半年かけて計6回。この研修とは別に不明点に関する質問会も設けました。
― 研修はどのような形式で行い、主にどのような内容で展開したのか教えてください。
田端氏:32名の参加者を、それぞれが持っている案件(扱っているデータ内容)の近さ、事業の分野などから8つのグループに分け、グループワークなども行えるようにしました。
講義の概要は図の通りです。
1回目の「DXにおける定性分析および、見える化エンジンの基礎理解」で、そもそもDXとは?テキストマイニングとは?という概要の理解から始まり、講義を経て3回目あたりから実際に見える化エンジンを操作しながら、テストデータや各参加者が実務で扱っているデータで分析に取り組むグループディスカッションを実施、最終的には分析から見出した課題に対してどうアクションに繋げていくのか? 共有や改善点をグループで議論し、発表してもらいました。
グループディスカッションのプログラムに入ってからはテーマに沿った宿題も設定し、データに向き合い、能動的に考えてもらえるような構成にしました。
あるべき分析業務かたちの学びから、定性データ活用の重要性を再認識。生成AIに関する研修開催の企画も進行。
― 研修を実施して感じたことをお聞かせください。
飯塚氏:これまでできていなかった定性分析を各部門で実施できるようにし、結果だけでなく、その背景・原因を掘り下げるということに、テキストマイニングを活かして取り組めたのはとてもよかったと感じています。研修後のヒアリングでは、特にデータ活用を強化したいと考えていた現場が、研修をきっかけに実務に繋げてくれているようで、一定の成果が見え始めています。
田端氏:課題として、ツールを実務に活用していく上で、6回の研修だけで様々な活用目的を網羅することが難しいことや、研修レベルの調整という点では32名という人数も多かったかなと感じました。今回の研修の講義の中で、生成AIに関する話は参加者の興味の高い分野だったので、今後このテーマでの研修開催に向けてコンサルティング担当の方と企画中です。
松野氏:私からのお願いではありましたが、研修の中では世間に元々あるフレームワークや当社内での基準を活用した情報の分類手法なども取り上げていただきました。
例えば、当社における品質展開表。これは修正を加えながら長年運用されている当社のノウハウでもあるのですが、その基準ごとに情報分類すると改善すべきポイントが明確になりますね。そのような分析結果の方が改善対象部門長への提案としては有効になりますし、改善対象部門全体での共有化もしやすいかと思います。「改善すべきポイントを具体的に提示し改善を促す」というあるべき分析業務のかたちというのを学ぶ機会を提供できたのではないかと感じています。
同時に、分析の肝になる「分析結果の読み解き方・まとめ方」という部分に、参加者がかなりもがいたなという印象です。今回、分析業務に意欲的なメンバーが研修に参加した上で、この「もがき」があったということはポジティブに捉えており、大変さを感じる一方で、絶対に乗り越えなければならないミッションであるということも再認識しました。そのような気づきを参加者それぞれが実感したという意味でも、研修の価値は非常にあったと思います。
受講者の声:受講者の学びが各部門に持ち帰られたことで、現場での活用に繋がり始めている。
▶ 吉川真太郎 様(住宅カンパニー まちづくり事業部)
■研修に応募した背景・課題
お客様の声を事業に活かし、どうアライアンスを組んでいくのか、という点に踏み込んで新設された部署に所属しています。お客様アンケートの積極的な活用を目指してデータに目を通し始めた段階で今回の研修の公募があり、これは業務に活用できそうだと思い応募しました。
■研修の感想・分析に取り組んだデータ
研修で使用したデータは、実務で取り扱うマンション入居後のお客様アンケート。
研修は全体を通して説明が論理的でわかりやすく、実務で取り組んでいるデータに向き合う中で、もう少し理解したいと思った部分は研修の他に設けられた質問会で個別に相談できたため、業務での活用もイメージできました。
■今後の業務活用に向けた展望
アンケート分析は毎月行っているので、ツールを活かしながら分析の手法を一つの仕組みとして確立していきたいです。定量的な評価と、そこに紐づく定性データを可視化することで、地域性や年代別など一定の軸で特徴を比較することができることを学びました。全体的な傾向だけでなく、様々な軸で深掘りすることで気づきにつなげ、CSの向上、さらにはお客様の声を活用したまちづくりに繋げていきたいです。
▶野澤育子 様(コーポレート ESG経営推進部)
■研修に応募した背景・課題
従業員教育を担当し、年に1、2回のペースで国内事業所の全従業員を対象としたアンケート調査を実施しています。アンケートの集計作業の中で、自身の分析力を向上させたい思いで研修に参加しました。
■研修の感想・分析に取り組んだデータ
研修で扱ったのは、従業員教育コンテンツの受講後に実施した受講者対象のアンケート。eラーニングで扱ってほしいテーマについて自由記述の回答を分析しました。
研修での発見の一つが、扱うデータをよく見て判断することの重要性、テキストマイニングでの俯瞰と、データの読み込みを行き来することでより理解が深まる。その気づきがとても新鮮でした。
私はグループのリーダーだったのですが、研修・質問会以外にも、グループミーティングを毎月1回開き、出された宿題に関してグループのメンバーで進捗を確認し、分析に関して不明な点、悩んでいる点について相談する機会を設けました。他のメンバーからの客観的なアドバイスは宿題を進める上で非常に役に立ちました。
■今後の業務活用に向けた展望
部署的に定量データを扱う機会も多いのですが、見える化エンジンでも簡単な定量集計や、それを定性データとかけ合わせることにチャレンジしたいです。今後は定量・定性の両方を見ながら、例えばeラーニングのコンテンツのヒントなどを得ていきたいと考えています。
▶ 玉山桃子 様(積水メディカル 信頼性保証室)
■研修に応募した背景・課題
海外拠点との協力体制の構築による、品質観点からのガバナンス評価を目指した活動を担っています。その一つとして取り組んでいるのが、国内外の従業員の品質意識の可視化。品質意識サーベイを実施していますが、結果がなかなかアクションにまで繋がらず、アクションに繋がる分析を模索していたため、今回の研修が糸口になればと参加しました。
■研修の感想・分析に取り組んだデータ
研修で使用したデータは、従業員の品質への意識や課題を聞いた品質文化サーベイ。
研修期間中に一つのサーベイに向き合い続けたことで、定性分析により興味を持つきっかけになったと感じています。最初はツールの操作に慣れるので手一杯でしたが、進むにつれて「こういう方向でまとめたほうがいいかな」と感覚が掴めてきました。
分析を進める中で興味深かったのが、「品質改善に向けたアイデアを教えてください」という質問をテキストマイニングにかけた際に、従業員が抱えている「品質に関する課題や要望」のほうが鮮明に出てきたことです。こうした要望を掬い上げ、いかにアクションに繋げるのかがまさに私の課題だと感じ、要望の傾向を回答者の属性ごとに可視化し、比較することにも取り組んでみました。
その結果を海外の兄弟会社に共有したところ大変興味を持たれて、一緒にできるアクションがあるかもしれないね、という話にまで展開しました、そんなオープンなコミュニケーションが生まれたことも成果の一つではないかと感じています。
▶池田基 様(環境・ライフラインカンパニー 経営管理部 デジタル変革推進グループ)
■研修に応募した背景・課題
カンパニーのDX推進を担当する中で、これから全社的に要望として出てくるであろう定性データの分析・可視化について学べる機会だと思い参加しました。普段BIツールは活用していますが、数値データの分析が主となっており、定性的なテキストデータの分析はできていませんでした。
■研修の感想・分析に取り組んだデータ
研修では、カンパニー内の営業日報として蓄積されている、成功失敗要因のフリーアンサーを使ってテキストマイニング分析に挑戦しました。
その際、テキスト量が十分ではないと感じたため、このような分析で目に見える形でフィードバックすることで、日報を書く(入力する)モチベーションを向上させることも、有益な示唆を得るためには大切だと感じました。
実際に使ってみて感じた見える化エンジンの良さの一つは、分析者の視点で自由にグループを作れること。エクセルでデータを見ているだけだと、「Aの意見が多いな」と自分で感覚的にタグをつけていきますが、見える化エンジンを使えば、それを簡単にまとめ上げることができます。定性データを定量化できることで、今まで感覚的だったものが客観的に可視化されたことは印象深かったです。
■今後の業務活用に向けた展望
今後、BIツールと組み合わせていくための工夫も考えていきたいと思います。データが有効に活用できるようになることで新製品開発や既存製品の改善のヒントとなるほか、多面的に検討することができ、より精度の高いアイデアが生まれるのではと考えています。
またDX推進の立場として、定性データを活用したい・活用に困っているという現場に対しても解決策の1つとして提案していければと思います。
▶藤岡佑梨 様(環境・ライフラインカンパニー 営業DX統括部)
■研修に応募した背景・課題
当部所で推進しているSFAには営業担当者が入力した様々な情報が蓄積されています。
中でも、お客様からの声を蓄積しているにデータ関してはテキストデータが大半のため、分析の限界と工数に課題を感じておりました。
テキストマイニングは研修以前から知っていましたが、定性データの分析をより高精度に実施できるようになる良い機会だと思い参加しました。
■研修の感想・分析に取り組んだデータ
講義については、見える化エンジンの操作説明だけでなく、『空→雨→傘』といった分析の基礎的な部分も教えていただけたことが印象に残っています。定性データから得た情報を元に、判断/行動まで繋げてこそ意味があると改めて感じました。
そして、分析の実践で印象深かったのが話題分類です。
元データでは設けられていなかったフラグ付けができ、傾向が可視化できるのはテキストマイニングの大きなメリットだと思いました。
また、テキストは各々の書き方に左右される部分が大きいですが、文脈や言葉の言い回しから心情(~できない、~しにくい、~して欲しい等)を抽出し自動的な分類が可能なのは、見える化エンジンならではだと感じました。
■今後の業務活用に向けた展望
今回の研修では、元データの重要性にも改めて気付くことができました。
まずは、テキストマイニングを活用する為の元データの整備から着手し、より高精度な分析ができるような環境整備を実施していきたいと考えています。
その後、営業が入手した市場データ等を製品開発や製造等、全体で活用できるようにテキストマイニングとBIツール等のシステム同士の連携も検討できたら面白いのではないかと思います。
▶江口光司 様(コーポレート ESG経営推進部 ESG経営企画グループ)
■研修に応募した背景・課題
自身が担当するサステナビリティ分野はトレンドの変化が速く、情報を常に最新化しておくことが求められます。そのためには情報収集力の強化が欠かせません。今回研修に参加したいと考えたのも、テキストマイニングツールを活用することで情報収集力を向上させ、知識を充実させることで、提案内容の強化に繋げたいと考えたからです。
■研修の感想
研修で実際に分析を行ってみて感じたことは、アウトプットの良し悪しは、投入するデータの質に大きく左右されるということ。正しく分析するにはまず、明確な目的や、仮設をもとにした情報収集が肝要になるのだと思いました。
分析においてはN1も含む小さなデータであっても、そこから得られるヒントを過小評価しないこと。データを顧客(対象者)の解像度を上げるためのヒントを探す手がかりにする、という点も印象深かったです。
■今後の業務活用に向けた展望
研修で習得したことを活かして、今後は今まで以上にリアルタイムな動向の把握と将来予測を目指し、それによって企業価値向上に貢献する、より精度の高い施策を提案していければ。また、サステナビリティリスクの抽出を通じて、潜在的な問題に対する予防措置を講じるなど、マネジメント強化にも活用していければと考えています。
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