導入事例
概要
企業市民活動の発信から理解者・実行者を増やすために、レポート作成支援を活用。アンケートから声を深掘りして活動の質向上につなげる
- #リサーチ
- #アンケート
- #サービス・流通
事例詳細
課題・背景
- 目検による確認にとどまっていた定性データを改善活動に活用したいと考えた
- 定性データ分析をするリソースが不足していた
- 分析の高度化のために、アンケート設計などから再検討する必要があると感じていた
取り組み
- 活用支援サービス「ソルレポ」を活用しアンケートの目的・設問設計から見直し。より解像度の高い分析がしやすいアンケートを構築した
- 評価などの定量データと自由記述の定性データをかけ合わせた分析を行ない、回答結果を深掘り
成果
- どちらも良い評価に思える評価4と5も実際には行動変容度に違いがあったことなど、定量集計や目検の確認だけでは見えてこなかった傾向が見える化された
- 分析結果は活動の改善・見直しに活用している
1918年創業、グループ総従業員数約23万人を擁する国内屈指の大手企業、パナソニック ホールディングス。そのグループ会社の一つであり、プロフェッショナル人材をリソースに持ち、それぞれが専門分野で高度なソリューションを提供するのが、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社です。今回は、PACが提供するマーケティング活動のサポートサービス「ソリューションレポート(以下ソルレポ)」を、アンケートの分析に活用された、企業市民活動推進部の執行氏、多田氏にお話を伺いました。
世界中の様々な社会課題解決にむけ、パナソニックグループが事業活動とともに一企業市民として取り組む企業市民活動。
その活動の一環として実施した講演会などでの発信がどう受け止められているのかを知るべく、アンケートで受け手側の声を集めてきた
− 最初に、企業市民活動推進部について教えてください。
執行氏:私たち企業市民活動推進部が行っていることは、簡単に言えば「会社と従業員による企業市民としての社会貢献活動」の推進です。
パナソニックグループの創業者・松下幸之助の「事業を通じて人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」という考えのもと、大きく3つの重点テーマ……①貧困の解消 ②環境活動 ③人材の育成(学び支援)、を掲げて様々なプログラムを実践しています。
多田氏:例えば私がメインで担当しているのは、貧困の解消、環境活動の一つである、電気のない地域へ電気を届ける活動。「LIGHT UP THE FUTURE※」というプロジェクトで、世界中の無電化地域に再生可能エネルギーによるあかり(ソーラーランタン)を届けることで、健康、教育、収入向上の機会創出につながることを目指しています。人材育成・学びの支援では、例えば中学校におけるキャリア教育をサポートする活動などがあります。
※無電化地域の未来を照らすプロジェクト LIGHT UP THE FUTURE
− 活動の中で、VOCに注目するようになった理由を教えてください。
執行氏:様々なプログラムを実施する中で、以前から「発信・受信」のうち「受信」の部分も強化したいと考えていました。
様々な社会課題への理解者増や、社会課題解決に向けた実行者増を狙いとした講演会などの取り組みが、本当にステークホルダーの役に立っているのか? 実際にどう受け止められているのか?ということを知るためです。今までもプログラムごとにアンケートを実施していましたが、そのフィードバックをもっと深掘る必要があると思っていたのです。
分析リソースの課題を解消し、声からの改善活動に活かしたいと、テキストマイニングツールの導入を決めた
− テキストマイニングツールの導入を検討した背景にはどのような課題があったのですか?
執行氏:まず一つは、定性データの活用が不十分であったこと。
定量データは結果がわかりやすく数字で可視化されますが、定性データは結果を測るのが難しく、回答を目検による主観的な確認にとどまっていました。でも、そうではなく、定性データをもっと課題の洗い出しや活動の改善に繋げられないか?と考えたのです。
もう一つはリソースの問題。
各プログラムの担当者が手作業で行っていたアンケート集計の効率化を図りたいと考えました。
さらに、分析を強化するほか、設問そのものをもっと高度化することで、回答を有意義に活用できるのではないかという期待もありました。いくつかツールを調べる中で、対応が丁寧でツールの機能性も申し分ない見える化エンジンに決めました。
− 具体的には、どのようなデータを分析していますか?
執行氏:メインは自社で収集しているアンケートです。最初は従業員向けの社会課題講演会や従業員意識実態調査など、社内向けのプログラムでアンケートを取り始めました。
現在力を入れているのは、大学での講演会を受講した参加者(大学生)へのアンケートです。
その他にも、年間18回ほど実施している従業員向けの講演会や、従業員意識実態調査も含めると年間約10万件の回答があります。
執行氏:以前は定量的に集計しやすい形式で質問していたのですが、定性情報として寄せられる声にも改善のヒントがあるのではないかという思いから、私たちの活動に対する捉え方、実施してほしい活動なども自由記述で書いてもらうようにしていきました。
− どのような視点で分析されていますか?
多田氏:定量評価の設問では高評価が回答されやすいですが、自由記述では実はネガティブな意見のほうが出やすいと感じています。
例えば定量データでは8割が「良い」と回答していても、コメントは決してポジティブな意見だけではありません。そこにこそ、示唆につながる意見が入っていますし、この意見をどれだけポジティブに変えていけるのか?と考えることに、改善のヒントがあると思うのです。
「選択肢ではなく、尋ねなければ気付けない声」をもっと活動に活かさなければと思いつつも、やはり分析のリソースを考えると、現実的には難しい。そんなジレンマを抱えている中で行き着いたのが、見える化エンジンだったのです。
講演会でのアンケートを分析することで、活動の意義を見つめ直し改善に取り組む
− アンケート分析に取り組まれた具体的な事例をお聞かせください。
多田氏:現在、特に見える化エンジンを使った分析に力を入れているのが、大学での講演会を受講した参加者(大学生)へのアンケートです。
例えば、先ほど紹介した「LIGHT UP THE FUTURE」の取り組みについて、関西にある大学3校で私自身が定期的に行っているものです。
学生の皆さんに活動を伝えるということは、私たちのミッションである「理解者」と「実行者」を増やす一端として、絶好の機会だと捉えています。
− 講演だけでなく、その後のアンケート分析にまで力を入れることにはどのような狙いがあるのでしょうか?
多田氏:講演の中で本当に伝えたかったことが、受け取った学生たちに理解されているのか。さらには、私たちの講演を聞いたことで、自身の行動を変えるきっかけ=アクションにまでつながっているのか知ることが狙いです。
企業が行う社会貢献活動は、企業が何かをすることが大切なのではなく、「企業がトリガーになって世の中が変わっていくこと」に大きな意味があると考えています。
この活動に意義があると考えているからこそ、アンケートから私たちの次のアクション、例えば講演を継続するべきか、講演の改善点はどこなのかなどを振り返る必要があると思っています。
レポート作成支援サービス「ソルレポ」を活用し、活動の目的や視点から整理
−今回、同アンケートの分析に対するリソースの課題はどのように解決しましたか?
多田氏:見える化エンジンでのレポート作成をサポートするサービス「ソルレポ」を活用し、分析リソースを解消すると同時に、分析の高度化に取り組みました。
【ソルレポ】
SNS・コールログ・アンケートなどのVOCデータを分析し、見える化エンジンのポータル上、もしくは各企業で使用されている報告フォーマットにあわせて、分析レポートを提供するサービスです。
・ テーマや目的、KPIを決めた上で定期的に更新・運用する「定点レポート」(月1回、四半期に1回など)
・ 単発的なイベントやデータについて、用途にあわせた分析レポートを提供する「ショットレポート」
など、目的に応じたメニューをご用意しています。
【ソルサポ】
データクレンジングや各社の活用目的に沿ったグループ作成等、VOC分析における一連の流れのうち、任意の作業を代行するサービスです。
「内部リソースが不足しており、本来やりたい分析に手が回らない」といったリソースのお悩みを解消しながら、分析ノウハウを活かしてVOC活用推進・高度化をご支援します。
−サポートサービス「ソルレポ」では、設問設計から支援させていただきましたが、どのような点をポイントに考えていきましたか?
多田氏:回答者の負担を少なくすることをポイントにしました。
たくさん聞けば多くの情報を得られますが、そのぶん回答の負担が大きく、回答そのもの(情報)のクオリティが落ちてしまう可能性が考えられるので、なるべくシンプルを心がけました。
今回の支援の中ではヒアリングシートを作成いただき、それに従って目的や視点を整理できました。
今回はアンケートの趣旨を「理解者と実行者を増やしたい」に置き、「講演を理解したか」「講演をきっかけに何か行動しようと思ったか」の2点に絞って聞くことにしました。
その際、分析の解像度を上げるためには定量と定性の双方を組み合わせて見ていったほうが良いと、活用サポートの際にアドバイスをいただきました。
評価「4」と「5」の違いは?
「定量×定性」のデータ分析で分析結果の解像度が高まった
− アンケートデータにおける定量×定性の分析結果を見て、どのような気づきがありましたか?
多田氏:定量的な5段階評価と定性的なコメントをかけ合わせた分析で、興味深い発見がありました。
今後の自分自身の行動に変化があるか、という意味合いの「行動変容度」を5段階評価で聞いており、当初は4も5も同等に「活動について理解してくれた」いう印象をもっていました。
しかし、そこにコメントをかけ合わせて見ていくと、意見に違いがあることに気づきました。
評価4の回答を見ると、行動変容にはまだ結びついていない・もしくは聴講者の立場で講演内容が理解できたという文脈でした。
一方で評価5の回答は、講演の内容を理解したうえで、アクションに今後つなげようとする姿勢が現れていることが可視化できました。
単純に集計だけを見ていると大きな違いはないように感じますが、定性データとかけ合わせて深掘ることで、理解の仕方や考え方、今後の行動にかなり違いがあるのだな、と気づくことができました。
分析から参加者への解像度が高まることを実感し、とても感動しました。
− その他の気づきにはどのようなものがございますか?
多田氏:学年が上がるごとに理解の仕方(捉え方)に違いがあることも見えてきました。
結果を見ていると、大学に入りたての1回生・2回生、3回生とでは、同じ理解度5の回答をしていても捉え方の深さが違うなと感じます。やはり上級生のほうが社会課題をより自分ごととして捉えている傾向がありました。
1件ずつ読み込むことで、当然様々な気づきや発見があるのですが、このように見える化しなければ見えてこない傾向もあります。
特に、セグメントごとの意見の違いなどはテキストマイニングで分析したからこそ見えてきたことであり、興味深いなと思いました。
−分析を受けて改善していったことにはどのようなことがありますか?
多田氏:例えば数回を経てもアンケートで「なかなかアクションに移す人が増えないな」とわかれば、伝える社会課題が学生たちにとって遠いものだと感じられているのかもしれない。それならもっと身近に感じてもらえるような語りかけをしてみよう、など。細やかな改善と工夫に活かしています。
「ソルレポ」を含むサービスを活用することでよりよい活動につなげていきたい
− 今回、アンケート分析にソルレポをご活用いただきましたが、いかがでしたか?
執行氏:今回の講演で知りたいことはどのようなことなのか?という点からヒアリングシートを活用しながら整理していただき、そのためには何をどう聞いていけば良いのか、アンケートを作り上げるところからサポートしていただけたことはとても有意義でした。
見える化エンジンは分析の専門家でなくとも使いやすいようにできてはいますが、いきなり私たちが使いこなすのは難しいところもあります。また、見える化エンジンでやりたいことはありつつも、一方で日常業務と兼任しながら深い分析を行なうリソースがないことにジレンマを抱えていたので、ソルレポはその点を解消できるサービスだと感じました。
多田氏:ソルレポの支援で自社の目的や分析の視点を整理できたことはもちろんですが、今回用にレポートを作成して終わりではなく、VOC分析のプロの視点で登録された設定やレポートが自社の環境(見える化エンジン上)に残ることもメリットだと思います。
今後似た目的のアンケートを実施する際にも、設問やレポートは今回のものを当社独自のテンプレートとして転用できるので、クオリティを保ちつつ今後の工数削減にも繋がります。
ソルレポのように部分的にアウトソーシングできるサービスを使えると、私たちにとって見える化エンジンの利用価値がもっと上がっていくのではないかと思っています。
− 取り組みや分析における、今後の展望を教えてください。
執行氏:今回「ソルレポ」を通して設問設計の重要性を改めて実感したので、ほかのプログラム、例えば中学校でのキャリア教育関係の案件で、定量×定性の有意義なアンケートを作成し、分析して、中学生たちがどのような捉え方をしているのかということを深掘りするなど、この取り組みを横展開し貴重な声を改善活動に活かしていきたいです。
- #リサーチ
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