導入事例
概要
50ブランドを擁する大手アパレルメーカーが
ECと店舗に寄せられるNPS®アンケートからVOCの横断的な分析に取り組み、
LTVの最大化を目指す
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事例詳細
課題・背景
- NPS®で膨大な声を集めつつも、人力では分析に限界があった
- 消費行動の変化から、ECと店舗のVOCを横断的に分析し顧客の「正確な姿」を把握する必要性を感じていた
取り組み
- 用途にあわせた3パターンのNPS®アンケートをカスタマーリングスで作成・配信
- 回答データにカスタマーリングスで蓄積している顧客データを紐づけ、見える化エンジンへ連携しセグメントごとに比較・分析
- 購入履歴などと合わせて顧客の声を分析し、サービス改善やスタッフ評価に活用
成果
- 自社独自の視点で顧客の特徴を捉え、データの塊として集計結果を眺めるのではなく、深堀りするポイントを見極め、気付きにつなげる体制を構築
- データに顧客情報を付与することで、1度のアンケートでは得られない切り口での分析が可能に
- 分析結果がエビデンスとなり、返品に関する改定を例としたサービス改善を実現
伸長するECのさらなる成長、店舗とECの相互長期利用を目指して
ブランドや店舗を横断した顧客の声の分析に取り組む
2023年に創業50年を迎えた大手アパレルメーカー、株式会社パル。約50という数のブランドを擁し、実店舗および自社EC「パルクローゼット(以下パルクロ)」にて展開している。
コロナ禍でEC強化の波が加速し、SNS起点での顧客アプローチに力を入れ始めた結果、フォロワー数1万人を超えるスタッフが社内に約250名、SNSで発信するスタッフの総フォロワー数が1600万人を超えるまでに伸長。2016年からCRMツールとしてカスタマーリングスを導入しており、2022年には見える化エンジンの活用も開始した。
パルクロのさらなる成長、売り上げ拡大を目指して声の分析に取り組む、Web事業推進室に話をうかがった。
課題に感じていたNPS®分析、SNS分析の強化を図り、
カスタマーリングスと連携しやすい、見える化エンジンの導入を決めた
−カスタマーリングスを利用いただいている中、新たに見える化エンジンも導入された背景にはどのような理由があったのでしょうか?
見える化エンジン導入の当初の目的は、当社の主要ブランドのひとつ「3COINS」に関するSNS分析をすることでした。
「3COINS」は近年非常に伸びており、売り上げもとても大きな人気ブランドですから、レビューでは聞こえてこないSNSの生の声を拾い上げ、商品企画やリスクヘッジに活かそうと考えたのです。
− ツールの選定ではどのような点を重要視しましたか?
顧客管理ですでに利用しているCRMツール「カスタマーリングス」とストレスが少なくデータを連携できることが第一条件でした。
カスタマーリングスを通して実施しているNPS®アンケートのVOC分析に着手したいと考えていたタイミングでもあり、操作性も良いものをと考えた結果、見える化エンジンに決めました。
− NPS®の分析にはどのような課題を感じていたのでしょうか?
NPS®自体は以前から実施していたのですが、人力で分析をしていたので全体の集計にとどまっていました。分析しきれていない部分をしっかりと掘り下げて分析を高度化する必要があると感じていたのです。
私たちWeb事業推進室はECをメインに取り組む部署ではありますが、消費スタイルの変化から店舗とECを行き来する顧客も増えてきており、会社としてもECと店舗の相互長期利用によってお客様のLTVを上げていくことを目標としています。
その実現のためには、お客様の「正確な姿」を捉えることは必須で、店舗とECをこれまで以上に横断的に見ていかなければならないと考えました。
ターゲットやシーン別に、3パターンのNPS®を実施。
回収した声をカスタマーリングス上の顧客データに紐付け、見える化エンジンで分析することでより深く顧客を理解する
− NPS®アンケートはどのような形式で実施していますか?
NPS®は主に3パターンあります。
- 1年に1回パルクロ会員に配信する、NPS®アンケート
- 半年に1回開催されるお客様感謝フェア期間に合わせて実施する、店舗購入者のNPS®アンケート
- パルクロ購入者に対して都度配信しているNPS®アンケート
です。
種類に分けるとすると、
①②に関しては「リレーション調査」。健康診断のように、期間を区切って定期的に実施しているものです。
③はその時のEC購入体験を振り返るための「トランザクション調査」です。
パルクロのアプリ会員数は現在900万人超となっており、全ての会員の基本情報、EC購入履歴、店舗購入履歴をカスタマーリングスに蓄積しています。
例えば1年に1回のパルクロ会員向けNPS®は、カスタマーリングスを通して約100万人に配信し、約5万件の声を回収しています。
− NPS®調査を導入している目的は何ですか?
店舗の応対品質を様々な角度から高めていくことが一番の目的ですが、店頭で働くスタッフを売上目標だけではなく、お客様の声から評価する軸があってもいいのではと考えていました。
店舗での購入者に対するNPS®は2022年から一部のブランドでテスト的にスタートしたのですが、店舗スタッフを評価するためのアンケート・分析をしたいという声は以前から社内で上がっており、CS担当部署から相談を受けました。
カスタマーリングスと見える化エンジンを組み合わせれば、アンケートの作成・対象となる顧客のセグメント・通知・分析・共有まで可能だということで提案し、取り組みを開始したという背景があります。
− 「カスタマーリングス」と「見える化エンジン」、2つのツールをどう行き来するのか、分析の流れを教えてください。
まず、顧客情報はカスタマーリングスに行動履歴なども紐づいた形で管理されています。
現在実施しているNPS®アンケートの施策では、カスタマーリングスでアンケートを作成し、対象者へメルマガ等でアンケートを配信し、回答が蓄積されていきます。
カスタマーリングスでも回答情報を確認することはできますが、FAなどを含めさらにデータをかけ合わせて深堀りしたい場合に、データを見える化エンジンに連携して分析・レポート化して共有しています。
回答データをカスタマーリングスに蓄積されている顧客情報や購入履歴などのデータと紐付けてから、見える化エンジンに渡して分析するという流れで行っています。
− カスタマーリングスと見える化エンジンを組み合わせて使うことでメリットに感じているのはどんな点ですか?
見える化エンジンで分析するデータに、カスタマーリングスで一元管理している顧客情報を紐づけることで、より深く顧客を理解できる点です。
例えばアンケートデータを見える化エンジンで分析する場合、購入履歴や金額、購入したブランド数など、アンケート回答だけではわからない回答者の情報を紐づけることで、顧客の特徴ごとに傾向を見たり、時にはロイヤリティ顧客に注目したりなど、より改善に向けた示唆につながる分析ができると考えています。
また、購入商品や金額・訪問回数などの顧客情報がカスタマーリングスに蓄積されていることで、回答者にアンケートの中で聞かずとも後から付加情報として紐づけられることも、回答者の負担を減らし、結果的にFAなど、回答してもらいたい設問に注力してもらいやすくなるメリットがあると考えています。
− アンケートの設問はどのような工夫をしていますか?
基本的にはカスタマージャーニーに沿って設問設計をしています。ただ、回答してもらうシーンなどがアンケートによって異なるので、それぞれ内容はカスタマイズしています。
例えば①1年に1回のパルクロのNPS®は設問項目もかなり多く、細かいところまで掘り下げて聞くような内容になっています。
一方で②の店舗購入者向けNPS®は気軽に答えてもらえるように設問は8問程度で内容もコンパクトです。
さらに、店舗のタイプによって「対面接客型店舗」「大型客数型店舗」「セルフ型店舗(3COINSのような雑貨メインの店舗)」に分けて、設問もそれぞれ変えています。
自社視点で分けたセグメントごとに声を深ぼることで、声の多寡だけでない判断基準を確立
− 見える化エンジンを使ったNPS®分析の着眼点を教えてください。
回答の全体像を把握した後は、セグメントで分けて、それぞれにスコアを出して分析していきます。
分け方としては、直近1年の購入状況に応じて
- ECと店舗をクロスユースした
- ECのみを利用した
- 店舗のみを利用した
- 購入がなかった
の4つです。
これは一例ですが、様々な切り口でセグメントを作成して、見える化エンジンの特徴比較機能を活用して話題の違いを可視化しています。単に多寡だけで判断するのではなく「どんな顧客が言っているのか?」という背景や属性のようなものにも注目することを心がけています。
このように、自社の視点で分類してデータに向き合うことではじめて、塊としての集計結果を眺めるのではなく、深堀りするポイントを見極め、気付きにつなげることができるようになると考えています。
−アンケート回答に顧客の情報を付加してどのような分析をしていますか?また具体的にどのような改善や施策につながりましたか?
全体のNPS®スコアに対して、どの話題・項目が推奨度への影響が大きいのか、といった視点で分析しています。
これには見える化エンジンの「CS評価マップ」という機能を使っていますが、かけ合わせたい軸を選べばすぐにグラフで可視化されるので、優先的に改善していくべき点を掴みやすいのが便利です。これは課題の優先順位付けにとても役立っています。
具体的には、予約商品の返品に関する改善につながった例があります。
全体のNPS®スコアに対して、「返品」の話題がスコアへの影響度が高い項目でありながら、スコアが低く出る傾向に気づきました。そこで、返品の何に不満を感じている人が多いのか掘り下げてみると、「予約」というワードが紐づいていると分かりました。
当社はシステム的な理由から、予約商品は返品できないルールで運用していたのですが、このポリシーは一度見直すべきではないかと社内でも疑問視されていた部分でした。
「せっかく予約して楽しみにしていたのにサイズが違うだけで返品できない」「ブランドのファンなのに、納得できない商品を返品できないのは残念」と、ブランドを愛用してくださっているお客様たちが不満を抱いている。
そのことが分析を通して可視化され、やはりこの課題は最優先課題なのだと改めて認識することができ、返品ポリシーの改訂へとつながりました。声の可視化は、施策を実行に移す際のエビデンスとしても有用だと実感した事例です。
− トランザクション調査(店舗購入者向けNPS®)はどのような切り口で分析していますか?
店舗購入者向けNPS®においては、性別や年代を区切って見たいという声がSV(スーパーバイザー)から多く上がるため、要望にあわせて見ています。
というのも、同じブランドであっても出店エリアによって客層がずいぶん異なり、なかにはブランドが想定したターゲットと実際に利用されているお客様の層がかなり違っているような店舗もあるからです。
そういった点を見ていくと、ブランドへのフィードバックできるヒントが得られるのでは?と考えています。
また、時間帯によって接客の印象が変わってくるのではというSVの意見を受け、最近は「来店時間」という切り口でもデータを見ています。
例えば朝の時間帯のスコアは高く、夕方になるとスコアが低くなるのであれば、その時間帯にどのような課題があるのか可能性を探りながら、接客の改善につなげていくこともできます。
− その他、全体を通して分析で注視している点はありますか?
お客様がどれだけのブランドと関わっているのかを知る「購入ブランド数」は、重要視しています。
50のブランドを持っていることは当社の強みであると捉えており、ライフステージや趣味嗜好が変化しても、その時々でフィットするブランドがパルクロなら出会える可能性がある。いろんなブランドで商品を購入してもらい、長く継続的にパルクロを利用してもらうことが理想です。
そういった意味で、見える化エンジン上でも購入ブランド数を用いた分析は重要度が高く、このあたりのデータを今後より活用することがLTV向上にも寄与してくるのではと考えています。
カスタマーリングスでお客様それぞれの購入ブランド数、購入回数が自動的にカウントされていくことは、その分析の下地として、痒いところに手が届く機能だと感じています。
ブランドを広い視点で捉えられるように、分析結果はブランドを横断し、Webレポートで常に公開
− 分析結果はどのような形で共有していますか?
見える化エンジンのWebレポート機能「お気に入りレポート」でブランドのSVに常に共有しています。
ただ、SVによって分析力や状況が異なるため、お気に入りレポートのほか、スコアのみのデータ、ローデータも確認できるように整えて、SV自身で使いやすいツールを使って分析してほしいと伝えています。
− 共有する際の見せ方として工夫している点はありますか?
レポートに入る前段階にまず、お気に入りレポートの使い方について、しっかりとレクチャーを書き示しています。
ダッシュボードを共有するだけでは「何をどう見ればよいのかわからない」「着眼点がわからない」という意見も多かったので、レポートはできるだけわかりやすく、各レポートの先頭に分析の意図や定義などの解説をつけるようにしています。
SVはとても忙しいので、できるだけ時短で内容を把握できる見せ方にすることも心がけています。
− レポートの公開範囲について教えてください。
基本的に確認するのは自身のブランドがメインにはなりますが、レポートそのものは全ブランド、全店舗のものをいつでも誰でも見られる状態にしています。
あえてデータを横断的に見られるようにすることで、店舗で見る、ブランドで見る、さらには自分の担当ブランドに近い他ブランドで見るなど、分析の幅を広げ、そこで生まれる気づきを得ていってほしいと考えているからです。
また、他ブランドを知ることで、自分たちのブランドの立ち位置を客観的に把握することもできます。
より多くの視点を持ってSVが自発的に考え、アクションにつながるヒントに気づいていけるようになってほしいという期待もあります。
− 分析結果を共有し、議論するような機会も設けていますか?
各ブランドのSVを集めた報告会は定期的に実施しています。
その際に「こんなふうに分析してほしい」「ダッシュボードをもっとこうしてほしい」など、分析のアウトプットに対するフィードバックをもらうことも多いです。
分析結果を見ながらブランドごとに意見を出し合ったり、前回の報告会後にどのようなアクションが実施されたのか共有し、さらなる施策につなげたりと、有意義な場にできればと考えています。
− 実際に現場でアクションにつなげてもらうには、どのようなことが大切だと考えますか?
組織としてのVOCにおけるミッションをきちんと示して、ブランドに対してVOC活用を啓蒙していくことも必要です。
データを一方的に渡すだけではなかなか行動にはつながらず、データと合わせて、私たちデータを分析する側の熱意や思いも必要になってくると考えています。
「一緒に取り組んでいこうよ」というメッセージを伝えて理解してもらうということが大切ではないでしょうか。
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