導入事例
概要

1日1万件の声を価値化する、見える化エンジン×生成AIのVOC分析
- #生成AI
- #コールセンタ―
- #VOCグループ
- #交通・インフラ
事例詳細
課題・背景
・オペレーターによるお客さまの声の手入力や、目検による分類・要約は業務負荷が大きく、人によって分析精度にばらつきが生じており、複雑なニュアンスの把握にも限界があった。
・音声認識システムの導入などで収集対象を拡大した結果、年間数百万件(1日約1万件)もの膨大なデータが蓄積され、従来のテキストマイニングツールや人手では十分な分析ができなくなる新たな課題が生じていた。
取り組み
・コンタクトセンターの全通話テキストデータや、ホームページからのメール、SNS、満足度調査など、複数のチャネルから収集した膨大な顧客の声を「見える化エンジン」に投入し、分析する体制を構築。
・見える化エンジンの生成AI機能を導入し、顧客の声の「おほめ」「ご不満」といったカテゴリ分類から、詳細な問い合わせ内容の振り分けや要約までをAIによって自動化する運用を開始。
成果
・生成AIによる分類や要約の自動化により、分析精度のばらつきが解消されて統一化されたほか、1日5時間かかっていた作業が1時間に短縮されるなど、質を担保しながら大幅な業務効率化を実現。
・解約希望やご不満の理由を詳細な項目(対応品質、サービス品質、料金関係など)に自動で分類・要約できるようになったことで、お客さまの真の不満を的確に把握でき、離脱防止やFAQの充実といった具体的な改善アクションへ繋がるデータ分析が可能になった。
1905年に創業し、2025年に120周年を迎えたDaigasグループ。都市ガスの製造や販売、電気の販売を行う国内エネルギー事業、海外におけるエネルギー供給・発電などを行う海外エネルギー事業、不動産の開発や情報処理サービス、材料ビジネス等を行うライフ&ビジネスソリューション事業の3つの事業分野で社会インフラを担っています。
社是「サービス第一」を掲げ、都市ガス・電気などエネルギー供給を中心に1,071万件のお客さまアカウント(2024年度実績)を有する当社のお客さま室では、目指す姿である「お客さまに選ばれ続ける」を実現するために、VOC (Voice of Customer /お客さまの声)を活用した業務改善やサービス改善を行っています。
Daigasグループのお客さま室における「見える化エンジン」と生成AI活用術についてご紹介します。
お客さま室の4つの仕組みで支える、DaigasグループのVOC活用
− Daigasグループでは、どのようにVOCを活用されているのでしょうか。
当社のコンタクトセンターには、お客さまから日々約1万件の入電があります。その通話内容はすべて音声認識ソリューションシステムによって自動的にテキスト化され、そのデータは翌日までにテキストマイニングシステム「見える化エンジン」へ連携されます。
このほか、ホームページの問合せフォームで受け付けたメールやSNS、満足度調査アンケートなどのテキストデータも合わせて「見える化エンジン」に取り込んでいます。お客さま室では、これらのデータを分析し、レポート作成を行っています。

− お客さま室で分析した内容は、社内全体へどのように連携されているのでしょうか。
お客さま室では、VOC活用を軸としてこのような複数のチャネルから収集したお客さまからのお声を統合して発信する体制を整えています。
1つ目が、満足度調査です。当社では1988年からお客さま満足度調査を実施しています。年間約6万件のご回答をいただき、お客さまからの業務品質に関する評価・その理由・ご意見などをデータ化して活用しています。満足度調査の結果は満足度調査システムで全従業員が閲覧できます。
2つ目が、C-VOICEです。C-VOICEはお客さまからいただいた重要なご意見やご要望を全社共有するシステムです。コンタクトセンターのオペレーターが上申する情報に加えて、「見える化エンジン」から抽出したお客さまの声も連携しています。こちらも全従業員が閲覧可能です。
3つ目が、SNSモニタリングです。SNSモニタリングでは日々の大阪ガスに対する投稿を分析し、関係組織に発信するほか、緊急度や重要度に応じたテーマ選定を行いレポートを発信しています。
4つ目として、地域の消費生活センターや消費者団体を巡回し、当社の事業全般にわたるお声を聴取しています。
上記4つのお声を中心として取りまとめたお客さまのご意見について、レポートの作成・発信を行っています。

人の手による入力や要約に限界を感じるように
− 「見える化エンジンの生成AI機能」導入前はどのような課題があったのでしょうか。
当社のコンタクトセンターでは、お客さまからご意見等をいただいた際、オペレーターの判断により上申するお声を選定・システムへの手入力によってご意見の集約を行っていました。
それら収集したお声のデータを、お客さま室にてテキストマイニングツールや目検、手動集計し、レポートとして各関係組織へ発信、業務改善などにつなげていました。
しかし、このプロセスでは、オペレーターによる手入力の業務負荷が大きく、収集できる声は一部に限られていました。そのため、同様の意見がどの程度寄せられているのか把握しづらく、かつ、入力内容の質が一定でなく、低品質なデータも含まれているという課題がありました。
一方、お客さま室ではテキストマイニングツールを活用していましたが、トピックを収集する際には、テーマごとにピックアップするための膨大な単語登録が必要です。人の感覚に頼ってしまうことや精度には限界があり、実際の会話文に含まれる複雑なニュアンスまでは正確に捉えることができないという課題感がありました。また、この作業においても目検での分類や要約は人によってばらつきが生じていました。
こうした状況から社内の関係組織からは、「収集データの信頼性はあるのか」「なぜこうした声が出たのか背景を知りたい」「この取り組みが経営にどう貢献しているのか」等の意見が寄せられるなど、VOC活用における課題感を抱えていました。

− その課題に対して、どのような取り組みをされたのでしょうか。
まずは、収集するお声の範囲拡大に取り組みました。
2017年にはコンタクトセンターで、オペレーターの手入力に加え一部の会話をテキスト化しました。2021年には音声認識ソリューションシステムを導入。コンタクトセンターでのすべての通話内容をテキスト化することが可能になりました。
このデータを「見える化エンジン」と連携し、活用のめどが立ったことで、その後、ホームページからのメール問合せやSNS、満足度調査のデータも「見える化エンジン」に投入し、分析を行うことにしました。

− 膨大な情報が「見える化エンジン」で分析されることになったのですね。導入後はVOC活用にスムーズに取り組むことができたのでしょうか。
収集の対象を拡大したところ、年間でコンタクトセンターへの入電が約387万件(1日約1万件)、ホームページからのメール問い合わせが4万件、SNSモニタリングから抽出された声が60万件、満足度調査が6万件と、膨大なデータを蓄積することができました。

しかし、データ量が膨大となり、従来のテキストマイニングによる抽出や目検では十分な分析ができなくなるという新たな課題が生じました。解決策として分析担当者の人数を増やすことを検討しましたが、人件費の増加や分析精度のばらつきなどが懸念されたため、別の方法を検討する必要が生じました。
量と質の壁を突破:生成AIでVOC分析を加速
− データ活用の次の一手として、生成AIに着目した理由は何でしょうか。
収集可能な声のデータ量が増大し、今後さらなるデータ活用の機会が見込まれる中、作業効率化やデータの分析結果から得られるアウトプットの質と量の向上は不可欠です。
そんなとき抜本的な解決策を模索する私たちに対し、プラスアルファ・コンサルティング社の担当者から生成AI活用の提案をいただきました。
具体的な提案は、生成AI活用による業務効率化の例として、当社で取り組んでいる基礎的な分類である「おほめ」「ご不満」といったお声のカテゴライズが容易になるという内容でしたので、まずは検証を行うことにしました。
− 生成AI導入の検証ではどのような成果が得られましたか。
2025年1月から3月までの3カ月間、実業務にて検証を実施しました。これにより、質と量と効率化の観点が得られました。
1つ目が、お声の分類についての精度が向上したこと。2つ目は、人手による抽出で見られた分析精度のばらつきがなくなり、統一化できたこと。3つ目は、要約の効率化と正確性が担保できたことです。
一方で、プロンプトの設定には非常に時間を要しました。
1つのプロンプトを何度も調整し、何十回とやり直しをしたケースもあります。ただ、一度プロンプトが確定すれば、別のケースにも流用できるため、この点は必要な苦労だったのかもしれません。
こうした検証結果を踏まえ、2025年4月から生成AIを本格的に導入することを決定しました。

生成AI活用例①声の内容を「おほめ」「ご不満」に分類、要約も自動化
− 導入後、生成AIをどのように活用されているのかについても教えてください。
3つに分けてご紹介します。1つ目は、C-VOICE運用の効率化です。
当社ではお客さまとオペレーターの会話を音声認識ソリューションでテキスト化し、翌日までに「見える化エンジン」に自動 取り込みをしたあと、全データから「おほめ」と「ご不満」を抽出するようグループ設定しています。
「おほめ」と「ご不満」に分けたテキストは、従来、人手により要約していました。しかし、人手には限界があります。そこで生成AIを活用し、AI要約プロンプトに「おほめ」と「ご不満」を投入、生成AIによる要約を実現しました。
その結果、1日5時間程度の作業が、生成AI導入後は1時間程度まで短縮できました。さらに、一つひとつの音声を確認して検証したところ、約9割が正確に要約できており、精度の高さが証明されました。
生成AI活用例②問い合わせ内容を詳細に分類、作業時間を5分の1以下に
2つ目の事例は、入電件数の見える化のための社内向のレポート作成や詳細お声分析といった月次作業にかかる生成AI活用です。
コンタクトセンターには毎日約1万件の入電があります。
これらの通話データからまず、「見える化エンジン」のグループ設定で、「お客さま通話」を抽出します。
さらに、「見える化エンジン」のカテゴリ分類を使い、「お客さま通話」のデータを当社の商品・サービス分類に沿って12項目のカテゴリに分類します。このとき、通話内容からどのカテゴリに分類すべきか判断しづらく、1つの通話の中でさまざまな内容の声があった場合、分類をどうするかといった悩みがありました。
カテゴリごとに分類された通話データはさらに、見える化グループ設定で「おほめ」「ご不満」「その他」に分けます。
その後の要約はC-VOICEと同じく目検で行っていましたが、生成AI導入後は「お客さま通話」抽出後、カテゴリ分類を生成AIが自動で行うこととしました。カテゴリも14項目に分け、詳細に分類できるようにしました。このとき、同時に重複確認ができるようにし、重複した内容はAIが自動でそれぞれの分類に区分するよう設定しています。
例えば、料金関係については「ご不満」でも、他の点では「おほめ」をいただいている場合、生成AIが内容を切り分けてそれぞれのカテゴリに振り分けてくれます。さらに、要約も生成AIで自動化しました。
その結果、月16時間かけていた作業が3時間に短縮。要約できる件数も、以前より増しました。検証したところ、要約内容の整合性は高い結果が出ています。
当社では、契約関係やサービス内容等に関する問い合わせが多く寄せられますが、これらを分析することで離脱防止やサービスの契約継続につながると考えています。依頼されたデータを連携した関係組織からは深堀されたデータで今後も活用したいなどのご意見もいただきました。
生成AI活用例③声の分類から分析まですべてを自動化
生成AI活用の具体例3つ目は、「さすガねっと」に寄せられる声の分析、活用です。
さすガねっとは、当社が2022年に提供を開始したインターネット通信サービスです。当社は後発参入事業者であり、お客さま対応品質・サービス品質のご支持獲得に向けて、素早く品質改善サイクルを回していきたいと考えています。そこで、寄せられたお客さまのご意見のうち、ご不満の内容やキャンセル・解約等のリーズンを的確に把握することで、継続的なご利用意向を高め、離脱防止につなげる目的で生成AIを活用しています。
まず、さすガねっとに寄せられた声を、「ご不満」と「おほめ」に分類します。このうち、「ご不満」に寄せられた声の内容を生成AIで、「対応品質」「サービス品質」「工事関係」「その他」の4つの項目に自動分類します。さらに、分類された声を生成AIが自動要約することで、何が真の不満なのかを把握することができます。
また、「キャンセル希望」「解約希望」といったリーズン分析も生成AIで行えます。「ご不満」と同じく、例えばキャンセルや解約の理由を「工事関係」「料金関係」などの項目に分け、同じように声の内容から自動で区分します。
この分析においても、月に約26時間かけて詳細分析していたものが、約12時間に短縮できました。
また、お問い合わせの大部分を占めるのは「ご不満」「おほめ」以外の内容です。これらについても生成AIで自動要約し、傾向等を分析しています。これらをもとに、お客さまによるお困りごとの自己解決の促進やコンタクトセンターでの入電件数の削減などを目的として、チャットボットの利用促進やFAQの充実に繋げていけると考えています。
お客さまのお声を可視化し「お客さまに選ばれ続ける」を実現する
− 今後の「見える化エンジン」と生成AI活用の展望について教えてください。
今後はより詳細な分析ができるよう、現在実施している14項目のカテゴリ分類をさらに分類ごとに詳細に分析し、「ご不満」「おほめ」などの、件数の把握と内容の深堀を行っていきます。
例えば、料金関係の問合せ内容に多いのは「契約内容・プランの問合せ」「請求書の内容確認」といったように、カテゴリ分類をより細分化して分析することで、コンタクトセンターへの入電数削減、FAQの見直し、仕組み改善、ひいてはお客さまの離脱防止につながるのではないかと期待しています。
また、満足度調査の分析を生成AIで行い、現場へのフィードバックを瞬時にすることで、現場の業務改善やモチベーションアップにもつなげたいと考えています。
当社では「見える化エンジン」と生成AIをうまく活用することで、膨大なお声の詳細分類による分析が実現できました。
分析したお声を可視化することで、迅速に情報共有し、業務改善や仕組み改善、サービス改善、品質や満足度向上につなげることで、「お客さまに選ばれ続ける」を実現したいと思います。
生成AIを活用しお声を分析することで「効率化」は大きく進展しました。今後はさらに「効率化」+「高度化」を追求し、深化した顧客理解とともに、付加価値の創造を実施し、経営に資する声を活用することで、DX推進を図ってまいります。
- #生成AI
- #コールセンタ―
- #VOCグループ
- #交通・インフラ
他の事例も見てみませんか?