導入事例

概要

顧客の声を聞き、さらに「問う」ことで深めていく。
SNSの「リスニング」×クイックなアンケートでの「アスキング」で商品企画・開発をサポート

顧客の声を聞き、さらに「問う」ことで深めていく。
SNSの「リスニング」×クイックなアンケートでの「アスキング」で商品企画・開発をサポート

ネスレ日本株式会社
マーケティング&コミュニケーションズ本部 VOC&SNSマーケティング部
部長 田代武志 氏 / シニアVOCスペシャリスト 野々尾真 氏
  • #メーカー
  • #食品業界
  • #VOCグループ
  • #マーケティング
  • #リサーチ
  • #SNS
  • #アンケート

事例詳細

課題・背景 課題・背景

  • データだけでは見えてこない声を注視することで、消費者の理解を深める必要性を感じた
  • VOCの多様化・消費者行動やトレンドの目まぐるしい変化の中で、どれだけついていけるのかが課題だった
  • 改善のための守りのVOC活用だけでなく、企画開発段階から入っていく攻めの活用に、役割がシフトした

取り組み 取り組み

  • 電話・チャット・メールなどの社内データと、Twitter等のSNS・消費者インタビュー・レビューなどの社外データを分析
  • SNSの声を見ていく「リスニング」と、問いを立てることで理由を深める「アスキング」の掛け合わせで、解像度の高いデータ分析を実現
  • ワードランキングや時系列分析・特徴比較機能などを中心に活用し、企画開発や、toB営業をサポート

成果 成果

  • 統計データを見ているだけでは気づくことの難しかったヒントのようなものに気づき始めた
  • コロナ禍で話題になった「ミロ」に対する声の分析が、甘さひかえめの新製品開発のきっかけに​
  • VOCから様々な企画・改善に繋げるだけでなく、その後の改善に対するフィードバックを含めてお客様へ情報発信

「見える化エンジン」の導入から11年目のネスレ日本が
今取り組む「声の見える化」

世界各国に拠点を構え、186カ国(2022年時点)で商品を販売する世界最大の食品・飲料会社、ネスレ。
「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていく」というパーパスのもと、コーヒーや菓子、ペットフードなど、世界で2000以上のブランドを展開している。​
そして同パーパスを実践するためには、まず「すべての人々」を知ること、把握し続けることが重要だと認識。「人々」は今どのような心理なのか、どのようなニーズを抱えているのか。VOCに耳を傾け、消費者の理解を深めることの重要性はグローバル全体で共通認識として共有されている。
そんな中、ネスレの日本法人であるネスレ日本株式会社でもグローバル同様の姿勢でVOCと向き合い、お客様の「心のつぶやき」に耳を傾け、正しく理解することに注力してきた。
 

  • 導入当初の想い、取り組みについてはこちら

「顧客はマーケティングパートナー」

ソーシャルメディア上の顧客の声からストーリーを発見し、施策へ活かすネスレ日本の取り組み

 
市場や消費者の動向の変化を経て、現在はどのようにVOC活用に取り組んでいるのか。マーケティング&コミュニケーションズ本部 VOC&SNSマーケティング部(以下VOCチーム)の田代氏、野々尾氏に現状をうかがった。

写真右:田代武志(たしろ・たけし)氏 VOC&SNSマーケティング部部長

写真左:野々尾真(ののお・まこと)氏 VOC&SNSマーケティング部 シニアVOCスペシャリスト

定量データと定性データを掛け合わせ、解像度の高いデータ分析を実現する役割を担うVOCチーム

―まずはVOCチームが担当する業務について教えてください。

 
野々尾氏:顧客を知るというミッションにおいて、当社では大きく2つの部門があります。ひとつがいわゆる定量データを扱う部門で、もうひとつのチームが私たちの所属する、定性的なVOCを扱う部門。
世の中を大きく捉えた定量的なデータの解像度を上げ、さらに肉付けしていくことで、製品開発などに活かせるよう貢献するのが私たちのミッションです。現在では、マーケティングや営業の担当者がVOCに積極的に耳を傾ける風土づくりを担っている面もあります。
 

―どのような流れでコンシューマーリサーチを行なっていますか?

 
野々尾氏:定量データの部門と私たちVOCチームは両輪で動いています。
例えば来年の企画を例に説明しますと、ブランドシェアなど市場データやトレンドのアップダウン等、定量データで全体像を見ます。
そこからさらに「なぜそうなっているのか」を知るために、企画担当の仮説とあわせて「このキーワード、またはこの観点で深掘りしてほしい」とVOCチームに調査依頼が来ます。依頼に応えるだけでなく「このような可能性も考えてみてはどうか」など、VOCチームが能動的に提案していくこともあります。

依頼・提案の流れ

―定性データも取り入れた調査に至るには、どのような課題感があったのでしょうか?

 
野々尾氏:以前の調査部門では定量データをメインに扱っていました。ところが、調査やデータだけでは生の声が見えてこないという課題もあり、定性的なVOCをもっと注視し定量データと合わせて見ていくことで、よりデータの解像度を上げていく必要性を感じるようになりました。

 
―見える化エンジンなどで取り組むVOC分析は、実際にどのような場面で活かされていますか?

 
野々尾氏:解像度を上げ、データが「なぜそうなっているのか」を掘り下げていくことは、商品の開発にも繋がっていきますし、さらには新商品を出した後のフォローにも非常に有用です。
反響はどうなのか。それはなぜなのか。次に何ができるのか。改善や改良という場面は、特に私たちVOCチームが力を発揮する場面だと捉えています。
そして改良においてもプランニング段階からVOC分析で企画担当をサポートしていく。そうしたサイクルができつつあります。

SNSの多様化、トレンドの移り変わりが加速する中で
必要なのは「攻めのVOC活用」

―顧客の声や市場について、どのような変化を感じますか?

 
野々尾氏:この十数年でSNSが発達し、自社に直接寄せられないような消費者の声も広く取れるようになりました。
そういった新しい声を拾い、耳を傾ける必要性を感じたタイミングで私たちも見える化エンジンを導入しました。導入して11年になりますが、現在はさらにSNSの発達が進み、より多様化するとともに、トレンドが移り変わるスピードがより速くなっているように感じます。

市場の面で、コロナ禍で生活や趣向は大きく変わりました。
生活習慣を見直す人が増え、健康意識が高まっている傾向も見られます。
SNSで、麦芽飲料の「ミロ」が大きく話題になりましたが、これも大人の女性にとって鉄分を手軽に取れる点が支持されたという背景があります。​
 

―その中で、VOCチームはどのように取り組みを変化させてきましたか?


野々尾氏:以前は私たちが扱うVOCと言えば、コールセンターに寄せられるご不満の声。マイナスをゼロにすることが私たちに求められる役割で、いわゆる “守り” のVOC活用でした。
ところがVOCが多様化し、消費者の行動やトレンドが目まぐるしく変化する中で、そこにどれだけついていけるのかが新たな課題となりました。改善のための守りのVOC活用だけでなく、企画開発段階から入っていく攻めの活用に、役割をシフトさせてきました。
 

―VOC活用について、社内からの要望に変化はありますか?


野々尾氏:定性的な情報をより求められるようになってきました。
そのうえで、定量的に扱ってほしい、定量化して示してほしいという要望はいつもあります。
そのように定性的なものを定量的に掴むという場面で、まさに「見える化エンジン」は有効です。話題の傾向などを大まかに掴み、種となるものを見つけて、それを定量的にアウトプットしてくれる機能はとても役に立ちます。

レポート発信の積み重ねでVOCの大切さを理解してもらう
フェーズを越え、分析の質を上げていくフェーズへ

―商品企画・開発に対して、「見える化エンジン」を使ったVOC分析を取り入れる必要性を社内に浸透させていく過程はいかがでしたか?


田代氏:お客様の生の声に触れ続けていると、それまで統計データを見ているだけでは気づくことの難しかったヒントのようなものに気づき始めます。
ところが従来発信してこなかった情報ですから当初は社内のニーズもなく、私たちの方から「VOCはこんなに使えますよ」というアピールを積極的に行なう必要がありました。最初の頃は「この声はどれぐらいのボリュームなのか?」「代表性はあるのか?」と受け取られることが多かったです。
 
意図的に、様々なところにVOC分析のレポートを差し込むなど、とにかくVOCを発信し続けました。すると受け取る側も「ここにヒントがあるんだ」と気づき始め、次第に耳を傾けてくれるようになり、定量と定性の両方を見るようになっていきました。

 
野々尾氏:時間はかかりましたが、なんとかVOCの大切さを理解してもらう状態にはこられたと思っており、これからはVOC分析の質を上げていくフェーズであると考えています。

攻めのVOC活用で取り組むのはリスニング×アスキング。
裏付けのある分析は商品の改善・開発だけでなく、toB営業での後押しにもなっている

―現在、VOC分析では主に何をデータソースとしていますか?


野々尾氏:電話、チャット、メールなど自社に寄せられる声と、Twitterを中心としたSNS、消費者インタビュー、レビューなどの社外にあるデータの両方をデータソースとしています。SNSやレビューデータは自社商品に限らず、競合の情報も含めて、見える化エンジンを介して集めています。

VOCチームで現在分析しているデータソース ※今後拡充予定


―どのようなVOC分析に力を入れていますか?


野々尾氏:アイデアの種となる気づきを得る、攻めのVOC活用を実践していくためには、SNSの声を見ていく「リスニング」だけでは不十分です。
「美味しい」という声があるのなら「なぜ美味しいと感じたのか」こちらから一歩踏み込んで聞いてみる、いわゆる「アスキング」が必要です。問いを立てることで理由を深めていくのです。
リスニングの部分でTwitterデータを活用する一方で、アスキングの部分では「見える化エンジン」からネットモニター向けアンケートができる「瞬速リサーチ」機能をとても重宝しています。実際に、ハロウィンやイースターなどシーズナルイベントの企画で、リスニングとアスキングを掛け合わせて活用しました。

「リスニング」×「アスキング」例

田代氏:他にも、toBの営業や交渉の裏付けとしてVOCを活用するようになっています。
営業の場面では、定量的な統計データを求められることはもちろんありますが、それだけでは人の心はなかなか動きません。そんな場面で生の声の力というのはすごく大きい。生の声があるだけで腹落ち感が違ってきます。

コロナ禍で話題になった「ミロ」に対するVOC分析を新たな商品企画につなげ、成果確認。​
改善のフィードバックまで発信することで、新たなVOC活用サイクルを生み出す

―VOC分析の結果を反映させた取り組み事例、成果事例を教えてください。

 
野々尾氏:コロナ禍で「ミロ」が話題になったとお話ししましたが​、そのミロ」に対する声を分析していくと「大人が飲むには甘味が強いと感じる」といった声がかなり見えてきました。それがきっかけとなり開発に繋がったのが、甘さ控えめの「ミロ」です。
分析や施策実行の面でポイントと感じているのは、開発や改良のヒント出しで終わらないこと。
先程の例で言えば、甘さひかえめの「ミロ」を発売して終わりではなく、その後にきちんとポジティブな反応や意図したVOCがあるのかどうかの確認まで実行することが重要です。VOC分析の結果を間違った方向に受け取っていないか検証するのです。
さらに、こうした取組みを発信する1つとして、一部ではありますが、お客様の声がどう商品やサービスの開発・改良につながり、その後どんな声が届いているのか、ホームページで開示するようにしています。

 

情報発信の取り組み | お客様の声から学びました

 

―商品開発の際に特に重宝している機能はありますか?

 
野々尾氏:SNSデータでは、ワードランキングや時系列分析などでアウトプットすることが多いです。
また、レビューを分析するときは、特徴比較をする機能を使うこともあります。それにより、低評価の方・高評価の方それぞれでどのような発言傾向があるのか、競合製品と比較したときにどのようなことが話題とされているのかを可視化できています。
瞬速リサーチでアスキングしたデータと、Twitterからリスニングできるデータを見える化エンジンでかけ合わせたり、あるいはデータソースを行き来したりして分析することも度々あります。

 

分析例

 
野々尾氏:また、以前エスニックフードに関する分析を行った際、見える化エンジンの細やかなグループ機能がとても役立ちました。
ふつうTwitterで「エスニック」のワードで収集すると、一般的な用語であることもあり広く情報を拾ってしまうのですが、膨大なデータの中からスパムやbotなどいわゆるゴミデータや、今回の分析に不要なデータを除いていく作業が非常にやりやすかったです。

今後はDXであらゆるデータを統合し、VOCやデータを起点にビジネス貢献を強化していきたい。

―VOCチームとして今後取り組みたい課題、注力したい点などを教えてください。

 
野々尾氏:見える化エンジンをはじめ、VOC分析のツールを誰もが使えて、同じように的確なアウトプットを出せるような体制を整えること。品質をしっかりと標準化していきたいです。そのうえでビジネス貢献度も意識すべきと考えています。意識VOC起点、データ起点だけではどうしてもビジネス貢献度が不十分になりがちなので、そこを強化していきたいです。
 

―ビジネス貢献度を高めるという課題に対して、どのような取り組みが必要だと考えますか?


 野々尾氏:DXの考え方に近いのですが、売り上げデータなど、あらゆるデータと統合・連動させたVOC活用をより加速させる必要があると考えています。
定性・定量のデータをかけ合わせてみる中で、例えば「ネガティブな声が多いけれど実際の売れ行きは良い」といったケースも多々あります。その場合、同じネガティブな声でも、提案は当然ながら違ってきます。
ですから、売り上げデータなど「事実」と連動させながら柔軟に、また的確に提案を変えていくことに一層取り組んでいく必要があると考えています。
 

―データソースに関して、何か新しい取り組みを進めていきますか?

 
野々尾氏:コールログを音声認識技術でテキスト化することに着手しています。
これまで、必要な情報を聞き出すことだけでなく、漏れなく情報を残すことにかなり労力がかかっていました。そこを音声のテキスト化で補い、今後は応対をより良くして、VOCを引き出していくこと、つまりはアスキングの部分に集中できるようになることを期待しています。
わざわざコールセンターに問い合わせてくれる方の声の価値に気づき、その声をどれだけ引き出せるかが、今後とても大切になってくると思います。
 
また、ビジネス貢献度を意識しすぎて大きな声だけを拾っていくことにならないように留意もします。数は少ないけれどユニークな声にもきちんと耳を傾けていきたい。SNSアカウントの深掘り、いわゆるN1分析に着手し始めましたが、今後も消費者をより深く掘り下げていく取り組みを続けていきたいです。

  • #メーカー
  • #食品業界
  • #VOCグループ
  • #マーケティング
  • #リサーチ
  • #SNS
  • #アンケート

他の事例も見てみませんか?