導入事例

概要

ライオン株式会社
お客様センター
部長 今井竜司/副主席部員 山浦圭子/主任部員 石原圭朗

バリューを生み出し、ファンを増やす。
お客様の声を礎にした消費者志向経営。

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ライオン株式会社 石原氏

感度アップ・即時共有化に大きな効果を実感

『次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ』を経営ビジョンに掲げ、オーラルケア、ビューティケア、薬品、ファブリックケア、リビングケアなど幅広い領域で数多くのアイテムを扱っているライオン株式会社。老若男女を問わず日常生活に密接に関わる商品群だけに、その“お客様センター”には年間約10万件のお客様からの声が寄せられる。同社にて従来より活用されてきたデータベースに『見える化エンジン』を組み合わせたシステムが構築されたのは2016年1月。その背景にはライオンにおけるお客様相談部門の位置づけが、より前向きでアクティブなものへと変化してきたことが挙げられる。

同社お客様センターの石原氏は「見える化エンジンの導入によってデータベースのシェアはもちろん、より積極的にデータを活用できる仕組みが構築できました。さらに、もともとデータとして収集できていたのがお客様センターに寄せられる声だけだったのが、SNSを介して幅広く生活者の声も集められるようになった。それまでは製品に対する疑問や質問が多かったのですが、ちょっとした使用感やご意見などリアルな言葉で拾えるようになったんです。CMの反響などもそのひとつですね。そうして得られた『気づき』を社内で情報共有し、新たな製品開発やプロモーションの改善、広報・コーポレートブランディング活動、さらにはリスク感知につなげることが目的でした」と導入当時の状況を振り返る。

さらにその裏側には会社全体の取組みの一環として、お客様相談部門にも消費者志向経営の実践が求められるようになったことが大きいという。それまで同社のお客様センターは、社内では「苦情対応部所」であり「コストセンター」として捉えられがちであった。しかしここを大きく見直し、ご相談をきっかけに“ライオンファン”になっていただこうという『ファンづくり部所』として、また同時にお客様からいただいた声をバリューに変えて社内に広めていく『バリューセンター』としての機能を磨いていこうという動きに結びついたのである。

「具体的にはお客様対応品質の向上、お客様の声の社内活用強化、さらにリスク対応力の強化の三つを組織を挙げてやっていこうという運びになりました。消費者の考えに敏感になり、経営トップはもちろん全社に確実に情報を提供し、関連部門と連携しつつ日常的に危機を察知していく。これらの取り組みに見える化エンジンは欠かせない存在なんです」。導入から3年が経過し、石原氏自身も感度アップ・即時共有化に大きな効果があったと手応えを感じている。

ライオン株式会社 石原氏

見てもらえる、活用してもらえるための工夫

ここでライオンのお客様センターにおける見える化エンジンのダッシュボード構成を紹介しよう。特筆すべき点は「見える化エンジン」は全社員がアクセスできる環境にあることだ。その上で『経営層』『全社』『お客様センター』『マーケティング』と分け、それぞれの閲覧権限に濃淡をつけている。中でも『お客様センター』では、デイリーレターからライオンの評判、相談月報、年報アーカイブ、経営サマリ、朝会、当月進捗と事細かだ。

導入時から関わり続けてきた石原氏はこの構成について「使い方などはリテラシーにバラつきがありますから、各部門ごとの閲覧者向け説明会の中でこういう機能がここにあるので使ってください、というような啓発や情報更新の案内は細かく継続しています」その結果、従業員の感度アップ・即時共有化が図れる基盤ができたという。

その取組みのひとつが『VOC Daily Letter』という日時更新される全社共有情報。ナレッジスタッフがいろいろな知見を活かしつつ、お客様の直近の声や注目すべきテーマを1枚のシートにまとめている。

「これを毎営業日に見える化エンジンにアップしているんですが、実は経営層はPCを立ち上げると初期画面にポップアップ表示されるよう設定しています。これで否が応でも毎日見える化エンジンにアクセスすることになる(笑)。さらに、ただのデータとか昨日何があったかというよりも、最近のお客様の声の傾向などを見せていくことで、そこから気になったことを見える化エンジンを通じて深堀りできる仕組みになっているんです」と石原氏。

さらに経営層には『ライオンの評判』というレポートを開示。ここでは製品だけでなくライオンというブランドや会社についてなどあらゆるTwitter上の発言を確認できる。ワードクラウドで特に目立った単語はクリックすれば実際の投稿まで確認できるので、定量・定性の両面でブランドイメージの現状を把握することが可能だ。

他にも全社に月次更新で共有される『相談月報』。石原氏によると見える化エンジン導入前はエクセルで情報を落としたものをまとめてグラフにして発信、というスタイルだったが、導入後は「自動的にグラフやランキングが生成されますし、前年との発言内容比較や苦情発生率の表示など、月間の相談概況の把握と詳細確認がものすごくアクティブにできるようになりました。さらにクリックしていけば最後はお客様の声までたどり着けます」と語る。

さらに「以前はPDF化したレポートをメールで配信していたので、社員側は一方的に情報を受け取るだけだったんですね。それが見える化エンジンによってレポートから気になるところだけクリックして深堀したり、関心ある分野があれば詳細を自ら閲覧できるようになりました。これは大きな変化だと思います」と胸を張る。

ライオン株式会社 山浦氏

お客様センター内にも好影響が続々と

見える化エンジン導入の好影響は、当然だがお客様センター部所内にも広がっていく。たとえば年一回発行の『年報』は各事業部ごとの年間相談データを前年と比較するもの。これは従来通り冊子にする必要があるのだが、大幅に工数が削減された。見える化エンジンからデータを取ることで簡略化が進み、冊子づくりのスタミナも軽減されたという。一方、閲覧側も常時、自分のデスクから相談情報の把握が可能となり、即時共有化を大きく推進している。

また山浦氏は自身がお客様センターに着任後、最も感動したというダッシュボードのメニューに部所内で活用している『朝会』があると言う。「私どもには1日400件ほど問い合わせがあるんですが、そのデータを毎日更新しています。全体件数は何件で、急騰している項目やワードは何か、重要な案件は何か、昨日どんなことがあったかなどが一目でわかるようになっているんですね。で、毎朝、窓口開始前に電話応対をするコミュニケーターを含めて、部所全員で集まり、この『朝会』の画面を見ながら、内容を共有。そうすることでノウハウを常にシェアしたり、新たなお問合せへの対応策をあらかじめ取ることができる。これって即時共有のなせる技だと思うんですよ」そう語る山浦氏は『朝会』メニューとその取組みに心から共感しているようだ。

そのほかにも『朝会』はコミュニケーターのモチベーションアップにも直結する。それが対応品質や登録内容の精度向上につながるという。

「やはりコミュニケーターの方も自分が受けたお客様の声がインプットされて、それを見た他のコミュニケーターや部門スタッフからのレスポンスがあったりすると、自分自身の対応そのものが見える化してくるわけです。結果的に仕事に向き合う意識が一段高くなるし、自ずと入力精度も上がっていく。精度の高いデータだからこそ、さらに私たちも活用度が上がるという。こういったグッドスパイラルを生み出すという意味で、非常に貢献度の高いダッシュボードだと認識しています。『見える化エンジン』というと、部所外との情報共有というイメージが強いかと思いますが、まず、自部所内でも活用できていることが、このシステムへの信頼感に繋がっています」

ライオン株式会社 今井氏

発信側と受信側のギャップを乗り越えて

もちろん、なにもかもが最初から順風満帆で進んできたわけではない。感度アップ・即時共有化に至るまでのプロセスは決して平坦なものではなかったという。今井氏はお客様センターの前は商品開発事業部に所属していた。それだけに情報発信の難しさ、重要性を自ら痛感していると語る。

「以前の部所ではお客様センターから送られてくる情報への感度はさほど高くありません でした。もちろん商品開発にはお客様の声が貴重ですし、調査という形でいろいろヒアリングしたり、分析もしていましたよ。だけどやはりマスを追いかけていくと、お客様ひとりの声はどうしてもn=1という捉え方をしてしまいがち。事業部にいると声の重みが伝わりにくかったんです。しかし立場が変わると、そうじゃないなと」

こうした自身での意識変化が現在の情報発信に活かされているという。「ただ単に一方的に情報発信するのではなく、見てもらえて、活用してもらえるデータの出し方の工夫をしないといけません。一方お問合せに対する回答ひとつをとっても、その背景まで考えて、体験価値を味わっていただけるようにする。『バリューセンター』というのはそういう意味を込めているんですよね。従来であれば我々はコスト部門なんでしょうが、直接ではなくとも利益の源泉となる価値を提供することはできると思うんです。そのためのVOC活用といっても過言ではありません」

「さらにお客様センターは苦情対応部門のイメージがどうしても強いんですよね。でも実はセンターに寄せられる声のうち、苦情は2割以下。残りの8割以上は、製品の使い方や購入先のお問合せなどのご相談であって、それら全てが商品開発や事業、サービスの改善につながる貴重な宝なんです。それを上手く活用する取組みを通して従来の苦情処理部門から『ファンづくり部所』へとポジションを変えていこうと。まずはそうしたイメージを社内に浸透させていきたいんです。これも消費者志向経営のひとつのキーファクターであると考えています」

部所異動を通じてリアルに実感できたことを現場に落とし込む今井氏。具体的な施策を次々に打ち出している。「まず接客対応するメンバーにプロ意識を持ってもらうために、職種名の変更をかけました。それまでは、単にお客様のご相談に対処する『オペレーター』だったのですが、新たにお客様のお困り事に寄り添って対応する『コミュニケーター』と呼称を刷新。さらにライオンファンの再定義に向けて、センターの所属員たちと定期的にミーティングを実施し、議論を深めているところです。そして最後にセンター全体の効率化・生産性を上げる取組みですね。この3点を現場主導で進めているところです」

目指すは議論の中心に「声」を据えること

一方、見える化エンジンの活用についてはまだまだトライしたいテーマがあるとのこと。今井氏によれば「VOC、つまり聞こえてくる声が月間約8,000件なのに対して、SNSは約430,000件。聞こえてこない声のほうが圧倒的に多いことになります。これからは聞こえてくる声だけでなく、聞こえてこない声をあわせてお客様の本当の姿をつかむ必要がある。そこで見える化エンジンを活用すれば、多角的にお客様を取り巻く環境や実態を把握することが可能になるはず。これからは水面下にある声や体験も含めて分析して、価値あるデータをダッシュボードに載せて発信していかなければと考えています」

また今井氏は「これからのお客様センターはどう変わるのか、ということを考えると、キーワードは5つ。『超高齢化社会』『アクセシビリティ』『AI』『チャット』『グローバル化』です。この中には消費者、つまりお客様側の変容もあれば、マーケット全体の変化もあれば、私たちが進化しなければならないテーマもあります。ひとつ言えるのはそのいずれにも見える化エンジンが深く関わってくるであろうということ。お客様センターに求められる役割がバージョンアップすれば、その歩みにあわせて見える化エンジンの活用法もブラッシュアップされていくんだと思います」

さらに今井氏が目指しているのは全社にまたがる環境づくりという。「昔は改善点とかご指摘から、これ以上ロスを出さないようにしようという視点でVOCを活用していたんです。でもそれだけではないだろうと。改善するだけだとそこまでで止まってしまいますよね。マイナスからゼロまでで終わってしまうのではなく、その先を色々と考えてもらいたい。見える化エンジンを中心に開発の人たちがディスカッションしてああだこうだ言い合えるようなところまでいきたいんです」

そこには山浦氏も同意のようで「情報があってもそれをどう使うか、っていうところまで上手に啓発していかないと、本当に興味本位だけで見てもらうものではありませんからね。いまはまだ、そういう意味では未完成かもしれません。本来であれば全社員がお客様の声を価値にできるシステムを考えないと」と頷く。

研究所、事業部の担当者が見える化エンジンをもとに「こんな声をいただいている」という同じ視点を持ってディスカッションを重ねる。確かに、テキストマイニングツールの活用という点においては理想の形ともいえるだろう。

「結局、データベースだとこんな声がきてますよ、でおしまいなんだけど、見える化エンジンならひとつの声をさまざまな角度から見ることができる。同じような声が去年はどうだったか、去年と比べて今年の傾向は、といったことが瞬時に引き出せますよね。一般の販売店様を通じて、製品を販売している当社の場合、本当にお客様の生の声が聞けるのはこの部所だけなんですよ。たとえn=1の声かもしれませんが、そこからバリューを生成し社内に提供できるところまでは到達したので、それを中心に議論を深めていける環境を整えたいと考えています」と今井氏。

感度アップ・即時共有化によりお客様の声が行動の礎に、という一定の成果をあげているにも関わらず、さらにその先を見据えているライオンお客様センター。見える化エンジンの活用を起点に同部所が『ファンづくり部所』『バリューセンター』としての存在感を広く世の中全般に知らしめる日は、そう遠くないかもしれない。

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