導入事例

概要

「お客様の声サイネージ」を設置することで
工場勤務社員もVOCを身近に感じられるように。
生の声に触れることで社員のモチベーション向上に貢献

「お客様の声サイネージ」を設置することで
工場勤務社員もVOCを身近に感じられるように。
生の声に触れることで社員のモチベーション向上に貢献

貝印株式会社
品質保証本部 お客様相談室
齋藤由希子 氏 / 太田陽 氏
  • #メーカー
  • #カスタマーサポート
  • #SNS
  • #レビュー
  • #コールログ
  • #メール

事例詳細

課題・目的 課題・目的

  • 製造現場で働く社員はお客様の声に触れる機会が少なく、お客様の声をタイムリーに知る機会が得にくかった
  • 『私たちが作っている商品はお客様からこんなふうに喜ばれている』と知ってもらうことで、モチベーション向上につなげてほしい

取り組み 取り組み

  • 電話ログ、メール、Twitterを中心としたSNSなど複数データソースのお客様の声を分析
  • サイネージを国内4か所にある工場の食堂に設置し、分析結果を「商品名、お客様の声、年代、性別、商品画像」とともにシンプルにまとめてポジティブな意見を中心に発信

成果 成果

  • サイネージでお客様の声に触れることによって2割以上の社員のモチベーションが向上
  • 声に触れる機会の拡大や、顧客の声を活かした製品改良の風土醸成につながった
  • お客様の声に対する意識が高まったことで、多様な声に触れたいという要望が社員から自発的に出てくるようになった

情報発信部署としてさらなる進化を目指す
「お客様相談室」の新たな取り組み
「お客様の声サイネージ」

包丁、爪切りや剃刀などの刃物を中心とした家庭用品、化粧小物等を国内外で展開するKAIグループは2022年で創業から114年。貝印ブランドとして世界中にリリースされているアイテムは1万点を超える。
一度リリースした商品に対しても、より使いやすく、よりクオリティを高めるためにと常に改良・改善の姿勢を取り続ける同グループでは、見える化エンジン導入当初より、VOC推進のサイクルを回し、製品開発・改善につなげる活動を着実に実施し、品質追求において、実際に商品を利用する消費者の声を大切にしてきた歴史がある。

▼導入時やVOC推進についての記事はこちら
「お客様相談室」をVOC活動で「情報発信部署」へと進化させ、社内の意識変容を起こした | 貝印株式会社
 
そんな貝印株式会社が、VOC活用の進化形として新たに取り組み始めたのが「お客様の声サイネージ(以下サイネージ)」。導入の背景や実際の運用状況、どのような効果が得られているのか、同社お客様相談室の齋藤氏、太田氏に話をうかがった。

写真右:齋藤由希子(さいとう・ゆきこ)氏 お客様相談室室長。入社時に同室立ち上げメンバーとして参画した後、管理部門、採用・人事部門、教育部門を経て2022年4月より現職。
写真左:太田陽(おおた・あきら)氏 お客様相談室。コールセンターに集約されるVOCを「見える化エンジン」で集計および分析し、品質管理や商品開発等の関連部門へ提供する業務に従事。

製造現場の社員には商品を使うお客様の声が届きにくい。
お客様の声に触れる仕組みとして設置した「お客様の声サイネージ」

―お客様の声サイネージを導入するきっかけは何だったのでしょうか?

太田氏:私どもは岐阜に5つの工場を展開しておりますが、製造現場で働く社員は日々商品を扱っているにもかかわらず、その商品がお客様にどのように受け止められているのか、商品の実際の消費者であるエンドユーザーの声に触れる機会がほとんどありませんでした
そのため、社員から度々上がってきていたのが、『自分の作っている商品がどう使われているのかわからない』という意見。その状況を打開するために何かよい方法はないかと探る中でご提案いただいたのが“サイネージでお客様の声を表示させる”というアイデアでした。

齋藤氏:製造部門ゆえに、日頃社員に共有される情報はどうしても現場の実務に関する内容に偏ってしまう。商品に関するお客様の声をタイムリーに知る機会が得にくいという点は、お客様相談室が抱えていた課題のひとつでした。

太田氏:現場で商品の製造に携わる社員たちに『私たちが作っている商品はお客様からこんなふうに喜ばれている』と知ってもらうことで、仕事へのモチベーション向上につなげてほしいと期待を込めてサイネージの設置を決めました。

コールセンターが受け取った声とSNS上の声を分析し、
商品名・性別・年代・声の内容を商品画像とともに表示

―実際に設置してみていかがでしょうか?

太田氏:各工場の食堂にサイネージを設置しました。あえて食堂にしたのは、改まって時間を確保してもらうのではなく、仕事の合間に気軽に見てもらいたかったからです。
VOCのデータソースは、お客様相談室に寄せられる電話およびメール、そしてTwitterを中心としたSNS上の声自社に直接届く意見と、ネット上で投稿される自発的な声をバランスよく取り入れることを心がけています。
また、モチベーション向上を目的として、まずはポジティブな意見を中心にサイネージに表示するようにしています。

お客様の声サイネージのお取り組み全体像


太田氏:社員たちに興味を持ってもらうための工夫は、更新頻度を高め、できる限りフレッシュな情報を届けること。現在は月に一度の頻度で情報を入れ替えています。
表示方法は、カードを模したデザインに「商品名・性別・年代・声」をシンプルにまとめて、商品画像と共に一枚ずつ表示させる手法。
当初は各工場で製造している商品に関わる声だけを掲示していたのですが、途中からは自身が関わる商品だけでなく、貝印全体としてどれだけお客様に喜ばれているのかを知ってもらうために全工場の商品に届いた声も流すよう変更しました。

表示コンテンツ(例)

声に触れ、2割の社員がモチベーション向上を実感。
さらにお客様の声に対する意識の高まりによって、
「ネガティブな声も知りたい」と想定外の反応が

―「お客様の声サイネージ」への社員の反応はいかがでしょうか?

太田氏:導入成果を知るために期間を空けて2回アンケートを実施しました。まず当初の目的であった“モチベーション向上”という点。
これに関しては約20%の社員が『向上した』と回答しました。

お客様の声を届ける取り組みですが、工場ごとの集計では最大で30%ほどの人がモチベーションが上がったと感じており、かなり効果が大きいと言えるのではないでしょうか。

サイネージの認知度では、80%以上の社員が「サイネージにお客様の声が流れていることを知っている」と回答し、多くの社員が気に留めていることがうかがえました。
「いい声が聞けてよかった」「嬉しい声を聞いてやる気が上がった」といった意見が多く見られた初回に比べて、導入から1年後に実施した2回目のアンケートでは「ポジティブな声だけでなく、ネガティブな声など、もっといろんな意見の声を共有して欲しい」という要望が出てきました。

齋藤氏:いい声が聞けるのは嬉しいけれど、お客様の反応の中には厳しい声もあるはずだ。そういったことも知りたい、と。そのような意見が現場からぽつりぽつりと上がってきたのです。この反応は前向きな心の変化だなと感じました。
近年工場では品質に対して特に力を入れており、品質を維持・向上させていくための取り組みをしています。サイネージでの共有でお客様の声に対する意識が高まったからこそ、ネガティブな声やご要望もしっかりと把握したいと社員自らが感じたのだと思います。


太田氏:また、アンケート以外でも、全社員が発信する週報ではサイネージに関しての感想が度々見られ、サイネージの反響の大きさを感じるとともに、製造部門の上層部の注目度も高くなっています。
表示の内容や方法に対してアイデアや要望が次々と寄せられることから、VOCへの関心の高さ、VOCを今まで以上に活かしていこうという機運の高まりを感じています。

情報共有をデジタル化することへの注目度が全社的に高まっている。
社員の意見を反映させながら、より有意義な活用を探求

―今後、お客様の声を社員に届ける際に意識していきたいポイントを教えてください。

齋藤氏:今後のサイネージへの要望として多く上がっているのは、よりタイムリーに、より多くの声を知りたい”という意見です。また、食堂を利用しない社員も一定数いるため、設置場所を増やしてほしいという要望も強くあります。中には意見を受けて早々に見直し、反映したものもあります。

太田氏:自社の売れ筋商品は何なのかランキングを知りたい、新商品について知りたいなど、商品情報を求める意見もかなり多くありました。キャンペーンなど、商品以外の会社の取り組みに関する情報も同様です。
そこでお客様の声を流す合間に、プロモーション動画や料理研究家と自社製品のコラボ企画の動画など、様々なコンテンツを取り入れてみました。社員たちが飽きずに楽しく、サイネージに興味を持ち続けてもらうことが重要だと考えています。

齋藤氏:サイネージだけでなく、紙ベースで展開してほしいという意見も上がりました。すでに、ペーパー資料を一部工場へ配布することで対応しています。
サイネージの導入をきっかけに全社的な注目度や興味を一層引き上げ、声に触れる機会の拡大や、お客様の声を活かした製品改良の風土醸成に繋がればと考えています。

結果的に商品情報や会社の情報を知りたいという意見がどんどん出てくるようになりましたが、それはやはり、スタートがお客様の声だったからではないかと思っています。
きっと商品情報を流すだけのサイネージだったら、ここまでの興味は生まれなかった。
VOCに触れる時間が増えたからこそモチベーションが刺激され、より多くの気づきや、知りたい気持ちに繋がっていったのではないでしょうか。

―その他に、VOCの発信によって変化したことがあれば教えてください。

太田氏:多くの社員たちは”私たちはこんなにいい商品を作っている”という誇りを持ち、真摯に商品と向き合ってきました。そこに今、VOCというお客様からの視点が強化されたことは、大きくプラスになっていると感じます。
そうしたVOC活用の対象は、製造現場の社員に限らず貝印すべての社員です。
Web社内報「KAI Family」のトップページにもお客様の声が表示される試みを、すでに始めています。

新たな視点でVOC活用と向き合い、
お客様の声を業務に活かす風土醸成に努めたい

―最後に今後の目標を教えてください。

太田氏:サイネージの設置、運用開始から約1年が経ちました。設置場所を増加すること、データソースや表示させるお客様の声の数を拡大することなどを今後の展望として見据えています。
また、ポジティブな内容にとどまらず、現場の社員が知りたいと願う声、業務や商品改良のヒントとなるようなネガティブな声も示していくことを検討しています。

齋藤氏:見える化エンジンでVOCを集計・分析するようになり、私たちお客様相談室も少しずつ社内に対してVOCをどう発信すればよいのかがわかってきました。とはいえ、どのような情報を活用し、どう発信していくのか、まだまだ発展途上です。そんな中でサイネージの取り組みは、VOC活用において新しい視点を持つきっかけになったと思っています。

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