導入事例

概要

旅行業界大手のJTBが取り組む顧客ロイヤリティ向上。
複数ソースに寄せられる膨大な顧客の声を集約して顧客の声分析プラットフォームを構築。

旅行業界大手のJTBが取り組む顧客ロイヤリティ向上。
複数ソースに寄せられる膨大な顧客の声を集約して顧客の声分析プラットフォームを構築。

株式会社JTB
Web販売事業部 営業推進部 CRM推進課 田中 智晃氏 / WEB販売事業部 営業推進部 営業推進課 岡本 賢一氏 / ツーリズム事業本部 事業改革推進部 CXM・BPRチーム 長野 紗綾香氏
  • #リサーチ
  • #経営戦略
  • #コールログ
  • #アンケート
  • #サービス・流通
  • #マーケティング

事例詳細

課題・背景 課題・背景

  • これまで担当部署内で完結していた複数ソースに寄せられるお客様の声を集約化して見える化し、会社全体として顧客ニーズを掴むことも課題だった。
  • 顧客満足度が高いことが、必ずしもリピート利用に繋がるわけではないという課題を抱える中、新たなVOCへの取り組みとしてNPS®を導入。スコアを追うだけではないVOCを掘り下げた分析の必要性があると考えてテキストマイニングツールを導入した。

取り組み 取り組み

  • 複数の顧客接点に寄せられるお客様の声を月次で分析しVOCレポートにして共有。優先して改善すべきポイントを洗い出し、改善のためのアクションを検討・実施することを積み重ねている。
  • 瞬速リサーチ(セルフ生活者モニター調査機能 以下、瞬速リサーチ)を活用し、商品企画、サービス企画の際に顧客ニーズの把握に取り組んでいる。

成果 成果

  • わかりやすいアウトプットとしてVOC分析を伝えることで、数値で示すだけでは得られなかった納得感を持って、社員たちが商品やサービス改善に取り組むことができている。
  • ホームページにおけるFAQの改善、ホームページのUI改善などに繋がっている。
  • 瞬速リサーチの活用により、商品企画における担当者の仮説検証をクイックに行うことができている。

感動のそばに、いつも。――その礎となるのがVOC。
お客様の声は、数字以上に大きなファクトである。

「交流創造事業」を事業ドメインとして、旅行業を中心に多様な事業を展開するグループ企業を擁する株式会社JTB。旅行業に従事するツーリズム事業本部では、「旅」を基軸に、個人・法人・地域の顧客に様々なソリューションを提供している。今回は、同社の中で、ツーリズム事業全体の横断的なVOC分析、現業部門(店舗、Web販売、コールセンター等、本社以外の販売部門)の個別対応力強化の支援を担うみなさまに話をうかがった。

顧客起点への原点回帰で、VOC活用の仕組みを大きく変革。
膨大な量の声を集約して掘り下げるためにテキストマイニングを導入。

− VOC分析に力を入れるに至った背景を教えてください。

VOCの取り組みとして、以前より顧客満足度調査は実施していました。ところが、満足度調査をしている中で、決して点数は悪くない、満足度は高いのに、いまひとつリピートに繋がりにくいという課題がありました。
もしかすると、私たちの業態においては、顧客満足度が必ずしもロイヤリティに強く結びつくわけではないのかもしれない。そう捉えた時に、新たなVOCへの取り組みにチャレンジしていく必要があるのではないかと考えました。
 

− テキストマイニングツール導入を検討したきっかけを教えてください。

先程の背景に加えて、2017年頃から本格的に取り組みを開始したNPS®調査が1つのきっかけになりました。
NPS®を導入するのであれば、VOC活用の仕組みを大きく変える必要もある。NPS®のスコアを見るだけでなく、そのスコアに至った理由をきちんと掘り下げていかなければ、新しい取り組みとしての意味がないと考えたのです。
日々多くの回答をいただく中で、人力で全てを見ていくことは物理的に難しいであろうということや、より客観的に可視化できないかということで、テキストマイニングを導入しました。
 

− VOC活用強化の背景には、コロナ禍の影響もあったのでしょうか?

2020年から、会社として改めて顧客起点=お客様が価値と考えることは何なのか、という考えに原点回帰し、組織が大きく変化しました。
2021年に事業改革推進部が立ち上がり、その際に初めて「CXM」という言葉を冠につけたチームが発足されました。データも活用したうえでお客様に徹底的に向き合うのだという意志が、顕著に表れている部分だと思います。

顧客接点情報を集約することで自社に寄せられる期待を可視化し、月次でVOCレポートを社内共有。企画段階では瞬速リサーチも活用。

− 見える化エンジンを使った分析の主な目的を教えてください。

見える化エンジンを使ってVOC活用に取り組む目的は、主に2つあります。
 
まずひとつが、当社が持つ複数の顧客接点から寄せられたお客様の声の統合・傾向の可視化。
以前は担当部門の範囲内で寄せられた声にそれぞれ対応するという、良くも悪くも個所最適で対応していた部分がありました。ただ、それでは会社全体で見た時に、お客様が期待するもの・求めるものというのが見えづらい。そこで、会社全体の顧客接点から寄せられた声を集約し、定量化したうえで、声の可視化をしようと考えました。それが前述のVOCレポートです。
分析のデータソースはNPS®アンケートの各種コメント、お客様相談室に寄せられたコメント、SNS(主にX 旧:Twitter)に上がるコメントです。
 
そしてもうひとつの目的は、商品やサービス開発にあたって仮説探索・検証という目線での、お客様の声の収集です。
例えば、商品開発担当者が「こんなことをやってみたい」と考えた際に、見える化エンジン上でモニターアンケートができるオプション機能瞬速リサーチ」を活用して、生活者の反応や声を収集することで、仮説が間違いではなさそうか、共感してくれる人はどの程度いるのかなどをリサーチしています。

 

− 分析はどのような頻度で実施し、どのような形で共有していますか?

データを統合して行う分析は基本的に月次で実施し、VOCレポートを作成し、CXの推進担当者と月例会で共有しています。
他にも定期的な共有の場としては2つあり、ひとつは事業本部長から各部門の責任者までが参加する会議。もうひとつはWeb販売、コールセンター、店舗など販売部門も含めた各事業の推進責任者が参加する会議です。
こうした定期的な共有の場のほか、特定の課題が浮上した際にもスポットで分析をしています。あるテーマや施策に対して、JTBをご利用いただいたお客様からどのような声が届いているのか、といった視点で分析しています。

見える化エンジンのアウトプットとVOCの原文そのものをセットで見ていくことが、分析をより的確な方向へと導く肝になる。

− 見える化エンジンでどのような分析をし、施策や取り組みに繋げているのでしょうか?

見える化エンジンの分析結果から気づいたご意見や傾向の中から優先的に改善すべきポイントを発掘し、どう解決するのか、常にアクションを検討しています。
 
分析面では様々な機能を使っていますが、全体像を把握することができる「ワードマッピング」や「パレート図」はよく使っています。例えば顧客体験の流れのどの「観点」「場面」「内容」など、注目したいデータを絞ったうえで可視化することで、注目すべきポイントの探索ができていると思います。(図1)

図1


これらのアウトプットは現場の担当者にもとても伝えやすいのが魅力です。具体的なコメントと合わせて、ここから改善のヒントを得て、改善策に繋げていってもらうようにしています。
まず会議の中で、どの部署でどのような方向性で取り組んでいくのかを確認しあい、翌月の月例会で当該部署にフィードバックをもらうというサイクルで、お客様の声からのプロダクト改善を促進しています。
 

− そのほかに分析を活用している例はありますか?

会議におけるディスカッションの素材そのものとしても、分析のアウトプットは非常に役に立っています。例えば「ワードマッピングでこんな傾向がありますね」と共有しながら、「それならこんな切り口で考えていかなければダメですよね」と切り口のポイントを共有していく、など。
見える化エンジンで「ご要望」「疑問」「ご不満」などのニーズを可視化できる機能を使って検討すべきポイント=お客様の課題感の多い部分に焦点を当てて、そこを掘り下げています(図2)。

図2


この分析の際、課題のポイントを掘り下げていきつつも、最終的には原文を読むようにしています。見える化エンジンでは、アウトプットからワンクリックで深掘りすることで原文までたどり着けるようになっているので、コメントの原文で発言がどのようなニュアンスで出てきたのか等を確認し、アウトプットと行ったり来たりしながら改善策を導き出していくことが大切だと感じています。
この例に限らず、見える化エンジンのアウトプットをパワーポイントにどんどん貼っていき、そこからどんなことに気付けるか、実際にどのような手を打っていくのか議論を進めていくケースは多いです。

瞬速リサーチの結果から改題の深掘りをするだけでなく、サービス開発段階での仮説探索・検証にも活用し、裏付けされたサービス開発の参考に。

−   瞬速リサーチはどのようなシーンで活用されているのでしょうか?

例えば、商品企画担当者が商品を企画する際にコンセプトシートを書くのですが、そのコンセプトシートに沿って「本当にこれでいいのか?」「こういうテーマはどんな反応があるのか?」など、知りたいことや聞いてみたいことをリサーチするような使い方をしています。
また、BPRの観点から、店舗に期待されていることなどを質問設定してリサーチすることもあります。月次などのVOC分析で出てきた漠然とした課題をさらに掘り下げるために、「瞬速リサーチ」を使って私たちの方からお客様に「聞きにいく」、いわばアスキングの用途としても活用しています。

 

− 瞬速リサーチを活用した施策にはどのようなものがありますか?

商品企画の担当者の仮説をお客様に直接投げかけることで、お客様の反応に裏付けされたサービス開発に繋がっています。
具体的に商品リサーチという部分でいえば、例えば「コロナ禍を経て次に旅行へ行くならどこに行きたいですか?」といった質問や、「今あなたの興味のある鉄道関連の旅行はなんですか?」など、広く生活者の興味関心を聞いてみることも。他にもSDGs関連で「アメニティを使いますか?」という質問をして、結果を協力する宿泊施設へフィードバックすることで宿泊プランの検討をしたこともありました。
また、当社の業態上、どこにニーズがあるか気づきを得ることも大切なので、あえて旅行色をあまり出さずに「今ハマっている漫画・アニメを教えてください」といった質問をすることもあります。
担当者本人が今お客様にリアルに聞きたいことを聞くためのツールと捉え、細かいルールは設けずに自由に活用しています。調査会社に依頼するほどの大きな調査ではなく、ちょっと聞きたいことを素早く聞けるのが本当に便利です。

VOC分析は日々の小さな気づきとアクションに繋がっている。事業を共に創る提携企業との信頼関係構築にも効果を実感。

− VOC活用が実際の気づき・アクションへと繋がった例を教えてください。

気づきからの改善例としては、サイト上のFAQの拡充に繋がったという例が多々あります。特定の項目に対して、なぜこんなに問い合わせやアンケートでも指摘コメントが多いのだろう?という視点で声を拾って分析していくと、そもそもFAQに全くその項目が記載されていなかった、というような例です。すぐにFAQの拡充、改善、検索結果の調整などをすると、目に見えて問い合わせなどが減ります。
また、ホームページのUI改善や商品のちょっとした改善にも分析は活用されています。日々、小さな気づきとアクションの積み重ねを続けているようなイメージです。
 

− 貴社の事業においてはパートナー企業も多岐に渡ると思いますが、分析結果の共有はされていますか?

はい、分析で得た情報あるいは気づきなどは、共創パートナーである提携企業や施設(ホテル等)にもポジティブ・ネガティブ関係なく、率直に共有するようにしています。
共創パートナーとの信頼関係を築くうえでも、お客様の声のデータを私たちが持っているということは大きなポイントになっていると考えています。

− VOC分析の結果は、社内ではどのように受け止められていると感じますか?

何かを伝える時、数値だけで語ろうとするよりも、具体的に「お客様からこのようなことを言われていて、単語としてはこういうものが出てきている」と示した方が納得されますし、伝わりやすいのではないかと感じています。数字だけで示していた時は、どこかに「本当にそうなのか?」と腹落ちし切らない感覚があったように思うのです。
数字の根拠というのは、立ち戻ってみれば「お客様の声」にある。大きなファクトなわけです。ですから見える化エンジンで可視化した声を示すのは、ただ数字のグラフだけで示す場合と比べて、社員に対して圧倒的に浸透度が高く、伝わり方も早いと実感しています。

− お客様の声を社内に還流させるために、どのようなことを心がけていますか?

データ活用の観点で、「データ探索・分析」のフェーズで必要なスキルの1つとして、見える化エンジンに関する社内勉強会も実施しています。
勉強会はテキストマイニング・見える化エンジンの理解促進や、分析結果から担当者が見るべきポイントに気づけるような構成にしています。実際に当社に寄せられているお客様の声を使用し、ツールの使い方だけでなく、分析結果からどう気づきを得るか、用意したアウトプットに関しても参加者自身が「どのように深掘りしていきたいか」を考えてもらうなど、ワークショップのような形式にしています。
その上で、どのような切り口で深ぼるのが効果的なのか、どうすれば次のアクションに繋がるのか、という部分までしっかりとレクチャーすることを心がけています。
 

お客様が今何を考えているか、楽しんでもらうために何が必要かを知り、顧客体験価値を継続的に高めていく。

− 今後、VOC活用をどのように展開させていきたいと考えていますか?

個人事業では、店舗社員の対応履歴から業務改善に向けた課題抽出や施策の検討をしていきたいと考えています。法人事業としては、営業部門が日々作成する営業レポートの分析から、課題抽出や施策に繋げていくことを検討しています。
 
また、これまで以上に「聞けていない声」を聞けるようにしていきたいと考えています。例えば、成約したお客様の声だけでなく、「利用していないお客様」「成約に至らなかったお客様」の声をどう拾っていくのか、といった部分です。
 

− 貴社の考えるお客様の声への向き合い方とは?

私たちの事業はもともと形のないものを商材としています。だからこそ、お客様が今何を考えているのか知ること、お客様に楽しんでいただくために何が必要か知ること。それが重要になってくると思っています。社が進めるCXM戦略の根底にあるものがまさに「お客様の声の見える化」であるため、ここを起点に価値を磨き上げていくことが、すべてに繋がる入り口になると思いますし、今後もJTBを通じたお客様の顧客体験価値を継続的に高められるようになっていきたいと考えています。
 
注:ネット・プロモーター®、NPS®、NPS® Prism®そしてNPS®関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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