導入事例

概要

コンタクトセンター機能を持つダイレクトマーケティング会社だからこそ、お客様との"通話"から顧客インサイトを発見できる

コンタクトセンター機能を持つダイレクトマーケティング会社だからこそ、お客様との"通話"から顧客インサイトを発見できる

株式会社博報堂コネクト
経営企画室
栗山 英子氏
  • #経営戦略
  • #カスタマーサポート
  • #コールログ
  • #BPO
  • #音声認識
  • #マーケティング

事例詳細

課題・背景 課題・背景

  • コンタクトセンターには膨大な量のVOCが集まるものの、オペレーターが「応対履歴」として入力できる情報には限りがあった
  • 業務受託するクライアントのダイレクトマーケティングビジネスを成功させるため、クライアント以上にお客様のインサイトを詳細に理解する必要があると考えていた

取り組み 取り組み

  • 音声認識システムと見える化エンジンを連携することで、コンタクトセンターに集まる通話の音声をテキストデータ化し、細かな視点での分析を可能に
  • テキスト化されたVOCにお客様の属性や購買情報を紐付けることで、購入回数や広告流入経路などを軸に比較分析を行い、お客様の心理や傾向を把握

成果 成果

  • お客様の購入回数別の発言傾向や解約する(継続購入をやめる)タイミング等、お客様の心理や傾向を把握することで、クライアントへ継続購入施策を提案する際等のヒントが得られるようになった
  • お客様から多く挙がるご意見は、コンタクトセンター内でも感覚として理解していたが、肯定的なものと否定的なものを定量的に集計することで、より新たな気づきに繋がった
  • 音声認識したテキストデータを分析することで、オペレーターが要約して入力する「応対履歴」には表れない言葉のニュアンスの違いや何気ない表現からお客様の細かい気持ちの動き、ひいては顧客インサイトを知ることができた

メーカー等の事業主が小売店を通さずに自社ECサイト等で消費者へダイレクトに製品を販売する「ダイレクトマーケティングビジネス」。そのビジネスをBPOとしてクライアントから受託しワンストップでサポートするのが、株式会社博報堂コネクト。
ECサイトの構築・運営から新規顧客獲得や注文・問い合わせ対応を行うコンタクトセンターの運営、商品を出荷・配達するフルフィルメントまでを請け負うほか、購買継続のための施策立案や売上拡大に向けた戦略サポートまで関わる。お客様への理解を深めることでよりクライアントの事業拡大に貢献しようと、テキストマイニングでの分析をスタートした。
その取り組みについて、経営企画室の栗山氏に話をうかがった。

他愛もない会話からインサイトをすくい上げるために開始した「通話音声のテキスト化とテキストマイニング」

− VOC分析に力を入れるに至った背景を教えてください。

栗山氏:当社はクライアントのダイレクトマーケティングビジネスをワンストップで受託する中で、コンタクトセンターの運営も行っています。
そこには日々膨大な量のVOCが集まるのですが、オペレーターが記録として残す「応対履歴」は、次に電話がきた時に備えて簡潔に用件を残す、「申し送り」のようなものでした。理想としては通話の中に含まれる用件以外のVOCも残したいのですが、クライアントの業務を請け負うBPO事業の特性上、人や時間のリソースをその作業に大きく割くことは現実的ではありません。
一方で、商品の販売促進をサポートするうえでは、本来はできる限り多くのVOCに耳を傾け、商品に対するお客様のインサイトを詳細に知ることが重要だと考えていました。
 

− 通話音声の分析に注目したのはなぜだったのですか?

お客様は商品に対して何を求めているのか? そのヒントはコンタクトセンターで交わされる会話の中に潜んでいます。他愛もない会話から見えてくるお客様の生活スタイル、商品に対する感想などは、商品改良や購入の後押しへのヒントになります。
だからこそ、応対履歴には残らない通話データをテキストマイニングで分析し、お客様のインサイトをしっかりと理解し施策に活かすことが、クライアントへの事業貢献につながるのではないかと考えたのです。
また、日々お客様と向き合うコンタクトセンターでは、お客様のインサイトを感覚的には理解していましたが、これまで体系的に整理したり、定量化したりすることはなかったので、それらを客観的に可視化するという意味でもテキストマイニングによる分析は有効ではないかと考えました。

音声認識システムと見える化エンジンを自動連携。
通話データに購買情報を紐付けることで、購入回数などを軸にした比較も可能に。

− テキストマイニングツール導入時の検討ポイントを教えてください。

栗山氏:コンタクトセンターを運営する当社だからこそ、お客様の本当の声をクライアントに還元したい。そのためには通話の音声を漏れなく拾って、分析する必要があると考えました。そこで音声認識システムとテキストマイニングツールの導入を検討し、マーケティング観点から「顧客のインサイトを発見する」というVOCの活用が可能な見える化エンジンの導入を決定いたしました。
 
音声がテキスト化されたあとの分析手法のサポートも重要な選定ポイントでした。見える化エンジンのコンサルタントは、操作面のみならず分析後の活用についても手厚くサポートしてくださっています。
 

− 通話がテキスト化され、分析されるまでの流れはどのような仕組みですか?

音声認識システムと見える化エンジンは自動連携しています。
流れとしては、

  1. まず通話内容が音声で録音され、リアルタイムで音声認識システムによってテキスト化されます。
  2. そのテキストデータを自動でフォーマット変換し、見える化エンジンに自動連携します。
  3. 見える化エンジンの各種機能を用いて分析結果を見ることができます。

さらに、テキスト化された通話データとお客様の属性(性別や年代等)や購買履歴などの情報も紐づけて見える化エンジンに入れています。この紐づけによって、例えば「○回購入した人は他と比べてこんな話題をあげる人が多い」など、購買状況と掛け合わせた分析も可能になりますし、分析対象を「特定のキャンペーンの利用者」というように、セグメントすることも可能になりました。
 
また、より良い分析のために、見える化エンジンの機能でデータの前処理もおこなっています。
当社の音声認識テキストデータはオペレーターの発話(OP)とお客様の発話(CU)に分かれており、お客様のインサイトを抽出する目的では、CUのデータに絞って分析をおこないます。ただし、必ずしもCUの発話に分析したいキーワードが入っているとは限りません。
そのため、オペレーターが復唱した際などに残したキーワードをOPのデータから抽出し、CUのデータにタグ付けすることで、話題やキーワードを特定できるようにしています。

 

購買情報も紐づけて比較することでお客様の購買継続促進につながる施策の提案が可能に。コンタクトセンターの通話内容をテキストマイニングするからこそ、得られるヒントがあると実感

− VOC活用目的について教えてください。

栗山氏:当社のVOC活用の目的はコールリーズンの分類ではなく、クライアントの事業拡大のために「お客様を知る」ことです。新規顧客獲得、購入継続促進、解約防止などの事業の目的を持ってお客様の心理や傾向に対する仮説立案と検証を繰り返すというスタンスでVOC活用に取り組んでいます。
 
分析の際に見える化エンジンでよく使う機能は、

  • 購入回数やお客様の属性を紐づけた特徴比較
  • 推移を追うための時系列グラフ
  • お客様の心理を可視化するワードランキング

などです。
 

− 具体的な分析事例を教えてください。

例えば以下(図2)はお試し購入をした後、定期購入(商品を毎月定期的にお届けする方法)を継続されたお客様について、継続回数別に分類し、お試し後の発言の特徴からお客様の心理を分析したものです。

この例では、定期購入が1回のみで終わる人は「半額」や「クーポン」など値引きの話題が多いことがわかります。逆に、長く購入を続ける人には、別の話題が出ていることも分析から見えてきました。

このように、購入回数別で比較すると、定期購入を早い段階で終える人と継続する人とで、関心事の違いに気づくことができます。
他にも、継続回数を軸に発言傾向を分析したことで、解約しやすいタイミングについての仮説が見えてきたこともあります。


− 他にはどのようなケースで分析することが多いですか?

分析の目的は「お客様の購入のきっかけを知る」「商品に対するお客様の反応を把握する」などさまざまです。
例えば、新商品の発売の際に、既存の類似商品を使用している人はどのような感想や要望を持っているのかを調べることで、新商品のお客様の反応を予測したこともあります。

また、会話の中で出てきた他社製品について分析してみたところ、私たちが想定もしていなかった競合商品に気づくこともありました。成分や用途が異なり、私たちにとっては別カテゴリの商品だと思っていたのに、お客様の視点では比較対象だったのかと驚きました。
 

− 通話音声をテキストマイニングにかけるメリットは他にどのようなことがありますか?

お客様の感覚や感情は言葉の端々に表れるもので、従来の応対履歴には残されていなかった部分から、今まさにヒントを得ています。応対履歴では、ちょっとした表現やニュアンスの違いはオペレーターのフィルターを通して同じワードに置き換わってしまうことがあります。
例えば健康食品の場合、お客様が改善したいと思っているご自身の症状の捉え方は、言葉の表現やニュアンスで違いがあることがわかります。その捉え方の違いが購入継続の違いにも連動していることが分析で見えてきます。こうした傾向を理解することで、継続しそうなお客様と継続しそうにないお客様をそれぞれどんな施策でサポートするべきかなど、より的確に考えられるようになります。

コンタクトセンターで感覚として把握していたことが体系化・定量化されることで客観的でより精緻な理解へ深められる。より納得感のある提案を目指して分析の質を上げていきたい

− クライアントへの提案にも積極的にVOC分析を活用されているのですね。

栗山氏:はい、分析結果はクライアントと日々向き合う部署の担当者としっかり連携し、的確な提案ができるように取り組んでいます。定形レポートに先述したような分析を組み込むこともありますし、担当部署から「商品のリニューアルをこんな方向で考えているのだけど、VOCの中に関連するデータはありませんか?」など相談を受けた際は、都度レポーティングをすることもあります。
私たちの役割はレポート作成や集計の効率化ではなく、あくまで「探したいインサイトを探しにいく」こと。オペレーターが感覚として把握していたことも、体系化・定量化することで客観的でより精緻な理解へ深めることができます。分析で得たヒント・気づきを、クライアントへのフィードバックや提案に活かし、事業を後方支援していくことが大切だと考えています。
このようにクライアントの事業支援に活用するだけでなく、分析結果は当社のコンタクトセンターにも共有し、それがセンター内でのトークスクリプトの見直しなどにもつながっています。
 

− 今後はどのような取り組みをしていきたいですか?

クライアントが納得する分析・提案を出していくためには、今まで以上にコンタクトセンターと連携し、共にVOC活用に取り組んでいく必要があると感じています。データのみに注目するのではなく、今後はコンタクトセンターで実施した施策をVOCより検証し、VOC分析から得られた仮説をトークスクリプトに反映させるなど、センターと共にPDCAを回すような活動に力を入れていきたいです。
 
今はまだ試行錯誤の段階で、分類軸や分析軸の作成・調整をしながら、私たちならではの分析手法を探している最中です。そんな中で実感しているのは、VOCを活かしてクライアントが納得する提案をするためには、やはり定量的な情報を求められる部分も大きいということ。VOCの分析結果を提案に反映した時、一体どのくらいの経済的なインパクトがあるのか、定量的な情報も加味したシミュレーションを交えて、分析の質をより上げていきたいと考えています。

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