導入事例
概要
SNSの炎上を自動で検知・担当者へ通知し、即時対応につなげる仕組みを構築。
レポート作成工数ゼロで即時対応につなげ、CS向上を支援
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- #サービス・流通
事例詳細
課題・背景
- コロナ禍で、事後報告の運用からリアルタイムな状況把握のニーズが高まった
- 目検による監視作業で、毎日1時間程度のリソースがかかっていた
- ①人的リソースを割かず ②誰が見てもわかるかたちで ③自動的に関係者に通知が届く仕組み構築の必要があった
取り組み
- 日時でツイートを自動収集、リスクワードを含む投稿を抽出
- 3日間で1000RTされた投稿を対象に、担当者へメールレポートで毎日自動配信
- 拡散理由を深掘りするほか、お褒めの言葉の共有も
成果
- データ収集、監視、分類、報告の自動化で工数ゼロを実現
- 新たなモニタリング内容の追加にも最小限の工数ですぐに対応
- 実際に故障などの事象をつぶやきから検知し、補修対応へ
コロナ禍、SNSの多様化…
VOC活用のニーズの変化から、SNSからのリスク検知における新たな取り組みを開始
中京圏における高速道路等の建設、管理運営(維持・補修)、当該エリアにおけるサービスエリア(以下SA)の運営を担う中日本高速道路株式会社。
高速道路隣接地での天然温泉施設「よりみち温泉」の運営や、お得なドライブ旅行プランの販売など、多様な事業を展開している。生活者の安全に直結するインフラ事業であるため、顧客の声の重要度は相当に高い。
そんな中、同社は苦情対応に関する品質マネジメントの国際規格「ISO 10002」によるPDCAに取り組み続けている。今回は、お客さまセンター及びお客さまの声に関する社内システムの運営を担当するCS推進課の方々に、高速道路のリスクを早期に検出し、社内へ共有することで改善に繋げる仕組み作りについてお話をうかがった。
経営企画部CS推進課の3名。写真左から野村俊道氏、田口和則氏、鈴木拓史氏。
鈴木氏が手にしているのはNEXCO中日本グループのオリジナルキャラクター「みちまるくん」。高速道路空間の安全・安心、快適さ、楽しさを毎日力いっぱいPRしている。
コロナ禍においてSNSの動きが予測不能に。
「今起きている」状況を自動で検知し共有するシステムの構築が必要になった
−見える化エンジンを導入して、SNS分析に取り組み始めた目的を教えてください。
鈴木氏:見える化エンジンを使ったSNS分析は2013年から実施しています。目的としては大きく3つあり、図でまとめた通りです。
−従来のSNS分析の取り組みと、分析強化のきっかけを教えてください。
従来取り組んできたSNS分析は、「事後報告」の意味合いが強いものでした。例えば高速道路の集中工事を実施した場合、その工事がSNSでどう捉えられていたのか、「こんな反響がありました」と報告するのがメインだったんです。
それが大きく変わったのが2020年からのコロナ禍。当社をめぐるSNSの動き、状況の変化が従来のように読めなくなったことで、社内のSNS分析に対するニーズにも変化が起きました。
−具体的に、コロナ禍で社内のSNS分析に対するニーズはどう変化し、当時はどのように対応したのでしょうか?
鈴木氏:当社がSNSの炎上を脅威と認識したのは、2020年のゴールデンウィークの出来事がきっかけでした。コロナ禍で移動自粛が叫ばれるなか、時機が悪いことに当社が撮影に協力したバラエティ番組が放送されることになったのです。数日前には国民的人気アニメーションの家族旅行というシナリオに対しSNSの否定的な投稿が増えたという騒動があったばかりで、当社も「外出を呼びかける悪い会社」といった悪評を立てられるのではないかとの恐れから、休日を返上して社員が毎日1時間程度かけて、SNSを監視することとなりました。
−その時にどのような課題を感じたのでしょうか?
鈴木氏:まず、目検による監視作業では当然ながらリソースがかかりすぎることが問題でした。
また、検知した事象は関係者に確実に周知する必要もある。しかし、レポートを共有しておいて「見にいってください」だけではおそらく見なくなってしまうであろう、と。
何か突拍子もないことが起きた時に ①人的リソースを割かずに ②誰が見てもわかるかたちで ③自動的に関係者に通知が届く「当社に関する炎上を自動検知して通知する仕組み」を構築する必要が出てきたのです。
−「SNSの炎上検知・社内共有の自動化」の具体的な取り組みについて教えてください。
鈴木氏:炎上検知する対象のSNSはTwitterが中心です。
データを自動で抽出する条件として、リスクワードを含む当社の関連ワードを設定しています。例えば会社名・道路名・SA名・時事ネタなど状況に合わせて随時追加もしながら、現段階では約100単語ほどを登録しています。
それらを含むTwitterのつぶやきを見える化エンジンで毎日深夜0時〜6時の間に自動で収集・集計します。
そして、3日間のうちに1000件以上RTされたつぶやきに関しては、ネガティブなものもポジティブなものも「炎上」する可能性があると捉えて、事前に設定した担当者にRPAで365日休みなく自動的にメールでレポートが配信されるという仕組みを構築しています。
具体的な数でいうと、ツイートの取得件数は通常1日1万件前後で、話題になるような事象があれば数万件規模になります。
そのうち、「炎上」の可能性があると判定されてメールレポートに至るのは3日に1回ほどで、それぞれが関係部門へメールレポートが配信されます。
他にも、当社に関係のあるつぶやきや、当社の公式Twitterアカウントの拡散力などは、社内ポータルサイトへ掲示しています。お客さまからのお問い合わせなども、当社では個人情報を特定できる情報を除いた状態にして社内システムで全社公開するのが基本になっています。
すべてのVOCを、料金所などの現場にいる管理者も含めて全社員約2000人とグループ企業で確認できる。どこの部署のどのような事象であっても、忖度なしに公開されます。
−ポジティブなつぶやきも「炎上」として共有されるのは興味深いですね。
野村氏:そうですね。当社に関して注目が集まっているという意味合いで、3日で1000件以上RTされたものは「炎上」の可能性があるものとして取り扱っています。期間を3日としたのは、これまでの記録上、通常のつぶやきは3日程度で拡散がおさまる傾向があったからです。
鈴木氏:メールレポートを配信した際、通知を受けた担当者からRTが増えた理由や、傾向を分析してほしいと依頼され、深掘りして分析することもあります。
例えば以前、中央道集中工事の横断幕で作ったリサイクルバッグに関して公式アカウントでツイートしたところ、4000RT以上の好意的なリアクションがあったんです。見える化エンジンで確認したところ、意外にもRTされたアカウントで30代の女性が多いということが分かりました。
野村氏:分析するまでは、まさか女性が多く反応してくださっているとは思っていませんでした。私たちにとっては当たり前だと思っているものが、道路を利用する一般の方にとっては面白く見えるものもあるようで、そのギャップに驚くことも多いです。
VOCは安全に直結する。
だからこそすべてのVOCを全社員に公開し、お客さま起点で考える意識づくりに力を入れてきた
−社内ではVOCの存在は社員にどう捉えられていると感じますか?
鈴木氏:もともと忖度なく情報を共有する社風であるため、現在の「炎上を自動検知して通知する仕組み」も、スムーズに受け入れられたと感じています。
さらに、VOCへの向き合い方に関してはeラーニング等でも定期的に教育していますし、事業の特性上、「安全」という視点を厳しく教育されていることもVOCへの姿勢に反映されているように思います。社員に対して「VOCにおいて何を大切にしているか」といったアンケートを取ると、ほぼ全員がまず「安全」というワードを挙げます。
eラーニングでは他社のCS向上のトレンドや事例なども盛り込み、飽きずに学んでもらう工夫もしています。
−炎上を自動検知して社内共有する取り組み以外にも、ポジティブなVOCを積極的に共有されているとお伺いしました。
鈴木氏:私たちCS推進課には、電話、Webサイト、メール、SAに設置してある一言カードを通してVOCが届きます。
自然災害による通行止めを復旧した時、SAで体調の悪い方にコンシェルジュが対応をした時、エンストした車をハイウェイパトロールがレスキューした時など、日々の活動に関するお褒めの言葉をいただくこともあり、社員のモチベーション向上に繋がればという思いで全社に共有しています。
野村氏:先ほどもお話したように、こうした対応も私たちにとってはやるべき仕事の一環という意識が強いのですが、お客さまはとても感謝してくださって、そのギャップに驚かされると同時に嬉しい気持ちになります。
見える化エンジンの多様なアウトプットは多くの気づきを生むはず。
社内にもっと浸透させていきたい
−見える化エンジンで特に重宝している機能は何ですか? 収集・分析で工夫されている点などもあれば教えてください。
野村氏:自動でデータを収集し、分析・共有までできるプラットフォームとして活用していますが、なかでもSNS分析、特に「検知」の機能はとても使いやすく重宝しています。
キーワードのマッピングなども気に入っていますが、定性データのアウトプットはまだまだ社内に浸透しきっていないのが実情です。そこで、段階的に浸透させていくことを狙い、見える化エンジンで出てくるアウトプットをもう一段階簡素化させてから社内に発信する工夫をしています。
例えばマッピングで出たキーワードから2-3つのワードを選んで並べ、これらに関する代表的なつぶやきとともに示すといった方法です。
鈴木氏:やはり、まだまだ棒グラフなどの集計データのほうに馴染みがある社員も一定数います。見える化エンジンのアウトプットを全社員に浸透させることができれば、会議資料をわざわざ作成する必要もなくなると思うんです。
ワードクラウドを見れば自然と議題を見つけることができますし、2軸の集計などはマトリクス等で示せば、気づきもより生まれやすいのではないでしょうか。そこまで浸透できていないのはもったいないなと感じています。
リスク検知・共有の自動化で、工数ゼロを実現。
新たな取り組みにも即時に対応できる環境を構築し、補修や改良などの取り組みにも反映
−炎上を自動検知して通知する取り組みについて、現在はどのような手応えを感じていますか?
鈴木氏:まず、担当者が休日返上で毎日Twitterを監視し、手作業で分類、報告するといった手間はすべてなくなって今はゼロです。
新規道路開通時や新料金制度の導入時など「炎上」が起こりやすい時期は当社にとって多忙期でもありますので、膨大な時間と工数をかけていたことによるリソースの課題が完全にクリアになったのは大きなメリットであると感じています。
また、きっかけこそ「炎上」の常時把握ではありましたが、自動検知の仕組みを構築したことで、新しくモニタリングや報告すべき内容が増えても、最小限の工数ですぐに対応できるようになりました。
例えば割引などの新しいサービスを開始した際に反響を報告する作業も、キーワードを設定すれば完了です。以前なら、事業の反響を報告するために担当者をたてて報告書作成をしていたわけですからね。
−実際にSNS分析から補修や改良などの取り組みにつながった例はありますか?
鈴木氏:お恥ずかしい話ではあるのですが、例えば「SAの手洗い場が故障している」というつぶやきを検知し、現場を確認したところ故障が見られたので補修対応をしたケースがあります。
他にも、SAに設置されている障害者用の手すりが利用しにくくなるような位置に装飾が置かれてしまっていたケースなども、画像とともにつぶやきが投稿されていて、即時対応につながりました。
いずれにしても私たちはお客さま起点で考え、とりわけ安全に関するVOCについては小さい声であっても必ず見つけなければと考えています。
音声認識システムの導入、動画の自動検知など、さらなるVOC活用の進化を見据えて
−今後、VOC活用の面で取り組みたいのはどのようなことですか?
野村氏:コールセンターに届くVOCを音声認識システムによってテキスト化し、テキストマイニングしたいです。
コールセンターには年間およそ30万件のVOCが寄せられるので、データベース化していつでもリアルタイムに見える化することで、新たな取り組みの幅も広がっていくのではと思っています。
鈴木氏:最近ショート動画などで自社、特に高速道路に関係する動画の投稿が増えているようなので、YouTubeをはじめとする動画投稿サイトにおける自動検知にも取り組みたいです。
また、VOCにおいてはネガティブな声、いわゆる苦情に注目してしまいがちですが、「問い合わせ」も実はとても重要だと思っているんです。問い合わせを減らすための工夫、改良にもVOCを今まで以上に役立てていきたいです。
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