導入事例

概要

ジュピターショップチャンネルが取り組む攻めと守りのVOC活用

ジュピターショップチャンネルが取り組む攻めと守りのVOC活用

導入前の課題と導入後の成果

ジュピターショップチャンネル株式会社
オペレーション本部 カスタマーサービス部 VOC管理グループ VOC管理グループ長
内田氏/野瀬氏/小山氏
  • #カスタマーサービス
  • #メディア・通信
  • #VOCグループ
  • #コールログ

事例詳細

導入前の課題 導入前の課題

  • リスクが高い顧客の声と、トラブル発生時の顧客の反響しか見ることができなかった
  • コールセンターで対応する問い合わせ件数は1日に1,500件前後も 。手作業で確認を行うと、集計に時間がかかり、対応が遅れてしまう
  • 従来、社内で「顧客の声」といえば、トラブル対応レポートで活用するだけ。「顧客の声」に対して、一部ではネガティブなイメージが定着してしまっていた


導入の理由 導入の理由

  • 2008年から苦情対応マネジメントシステムに関する国際規格ISO10002に対応。従来、トラブル対応のみに生かしていた顧客の声を、改善活動にも活用したいと考えるようになった。
  • しかし、既存の仕組みはトラブル対応に適していても、改善活動につながるヒントを発見しづらい。新しい仕組みを導入する必要性を感じるようになった。


導入後の成果 導入後の成果

  • 全体の顧客の声を見ることができるようになったため、顧客の声をいろいろな軸で分析し、改善活動に役立てられそうな情報を幅広く収集できるようになった
  • 翌日には問い合せ全件のデータを集計することができるようになり、dailyでレポート発行ができるまでになった
  • 顧客からの「お褒めの言葉」を毎週掲載することでネガティブなイメージを払拭。褒められた喜びを次の仕事のモチベーションに


1日に1,500件前後も寄せられる顧客の声。トラブル対応に生かすだけでなく、改善活動にも生かしたい
VOC管理グループ長 内田氏

1日に1,500件前後も寄せられる顧客の声。トラブル対応に生かすだけでなく、改善活動にも生かしたい

24時間365日の生放送で、1週間当たり約700点もの商品を紹介しているテレビ通販会社・ジュピターショップチャンネル。1,000億円を優に超える年商を誇り、千葉県・習志野市にある茜浜物流センターからは1日に約43,000箱 の商品を出荷している。

それだけの規模でビジネスを展開していると、自然と顧客から同社に寄せられる声も多くなる。しかも、30日以内であれば購入した商品の返品・交換に無料で応じる方針もあって、 同社のコールセンターは1日になんと1,500件前後もの問い合わせ を対応しているのだという。

同社の中でそうしたお客様対応を任されているのが、オペレーション本部にあるカスタマーサービス部だ。

その中で、顧客の声を収集・分析する業務に当たるのが、VOC管理グループになる。VOC管理グループが受け持つミッションは、大きく2つ。1つは、顧客の声を確認して発生中の問題を迅速に把握し、適切な対応策を講じること。そしてもう1つは、顧客の声を分析、その結果を踏まえ、商品・サービスをどのように改善したらいいかと提案していくことだ。

同社は2008年に苦情対応マネジメントシステム導入に関する国際規格ISO10002について自己適合宣言を行い、顧客の声を収集し、それを商品や番組、サービスに反映させる仕組みを構築。それまでは、トラブル対応を中心に顧客の声を活用してきたが、顧客の声をトラブル対応に生かすだけでなく、改善活動にも生かせるようにと活用範囲を広げた。

従来の運用方法では、コールセンターに1日1,500件前後もの問い合わせが入るだけに、顧客の声の確認に時間がかかり、分析・改善の業務にまで手が回らない状況が続いていたという。

特に時間を費やしていたのは、商品事故などのトラブルが発生した際に必要な社内向けレポートの作成業務。同様のトラブルが過去に起きた発生率などをまとめ、関係者の間で参照する資料だ。以前は顧客の声をすべてAccessで管理。発生中のトラブルに関連する商品番号や単語を入力して該当データをAccessから抽出し、Excelに貼り付けて分類・整理してレポートとして仕上げていた。

問い合せ全ての顧客の声分析に取り組むため、見える化エンジンを導入

改善につながるヒントを見つけ出す。そのためにはまず、顧客の声、全体を見る必要がある。

そういった条件を満たしてくれる解決策はないものか――。そしていくつかの選択肢が検討された結果、たどり着いた結論がテキストマイニングツールの導入だった。

同社は複数のツールを比較・検討した上で、見える化エンジンの採用を決めた。採用を決めた理由は、主に4つあった。まずは、導入社数が多いことから信頼性が高そうだと感じたこと。オンプレミス型ではなくクラウド型のシステムで、導入時に巨額の初期費用がかからず、導入までの期間も短くて済んだこと。そして既存システムからのデータ取り込みがスムーズにできること。最後に、導入時と導入後のサポートが充実していたことが評価したポイントだったという。

問い合わせの大半を占める返品・交換の理由を分析。FAQ集を作成して、顧客対応の質を改善

問い合わせの大半を占める返品・交換の理由を分析。FAQ集を作成して、顧客対応の質を改善

見える化エンジンを導入したことで、同社の顧客の声を活用する取り組みは、どのように変わったのだろうか。オペレーション本部カスタマーサービス部の小山氏は、次のように語っている。

「以前は起きてしまったトラブルについて、調査・報告するだけで手一杯。それが今では、迅速に、顧客の声をいろいろな軸で分析し、改善のヒントになりそうな生の声を伝えられるようになりました。

従来は集計したデータだけをレポートに掲載していましたが、集計されてしまったデータでは顧客の声が説得力を持って伝わってきません。それよりも生の声をそのまま載せた方が興味を持って読んでくれる社員が多いようで、『お客様はこう言っているのか』と実感を持って読んでくれる社員が増えましたね」

顧客の声の“前向き”な分析に取り組み始めた結果、具体的な改善活動も生まれるようになった。例えば、同社に寄せられる顧客の問い合わせを見える化エンジンによって分析することで、どのような理由で返品・交換を求める人が多いのか、可視化できるようになった。そうした主な返品・交換理由が分かったら、そうした問い合わせが入ったときに使うFAQ集を作成。オペレーターに利用してもらうことで、顧客対応の質を向上させることができた。

それ以外にも、見える化エンジンを使って顧客の声を分析していったことで、ある商品においては、取扱説明書を以前よりもずっと分かりやすいものに変えることができたと小山氏は胸を張る。

「分析に取り組むようになって、『取扱説明書を読まずにとりあえずやってみて、分からないから電話をした』という方が多いことに気が付きました。まずは読んでもらう必要があると考えまして、メーカーに協力してもらって開封したときにすぐに目に付くところに説明書を入れてもらうように改善しました。

また、当社のお客様には50~60代の方も多いので、『文字が小さくて読みづらい』といった意見もありましたね。

他にも『使い方が分からない』という指摘が多い商品に対し、取扱説明書に記載があるのにもかかわらず、なぜこのような問い合わせが多いかを分析を行いました。結果、説明内容が不十分なことを発見でき、実際にオペレーターが案内している内容を次の販売時には、追加説明する用紙を挟み込んでもらうなどの工夫をするようになりました」(小山氏)

「お褒めの言葉」を毎週掲載することで、「レポート=ネガティブな情報」という先入観を払拭

「顧客の声の中には、お客様から褒めていただいたポジティブな声もあることを、私たちVOC管理グループは知っていました。けれど、それを社内に向けて周知する機会が、これまでになかなかなかったのです。

そこで、見える化エンジンを使ったレポートを提供するようになったとき、ネガティブな声だけでなくポジティブな声も一緒に共有しようと考え、『お褒めの言葉』の掲示を始めました。

例えば、商品を選んでくるバイヤーたちにとって、自分が担当した商品への『お褒めの言葉』を見れば、モチベーションが湧いてきます。今でも『お褒めの言葉』を毎週掲示して、レポートを見るのを楽しみにしてくれる社員を増やそうと努めています」(小山氏)

最初は対象を絞って、少数でも必要としてくれる社員にだけ配信。着実に閲覧者を増やしていった

最初は対象を絞って、少数でも必要としてくれる社員にだけ配信。着実に閲覧者を増やしていった

そうした「お褒めの言葉」を乗せるといった工夫も奏功して、同社ではレポートを閲覧する社員が少しずつ増え、現在では社内のかなりの社員が閲覧するようになっているという。もちろん、レポートを閲覧してもらうための取り組みは「お褒めの言葉」を掲載することだけではない。同社では、ステップを踏んでレポート配信の範囲を広めることで、閲覧者を着実に増やそうと努めてきたのだ。

「私たちは、まずは『興味がある人だけ見てくれればいい』というスタンスでレポート配信をスタートしました。具体的には、最初から無理に全員に見せようとすることはやめました。まずは本部長・部長クラスにだけレポートを配信することで、見える化エンジンの存在を認識してもらうようにしたのです。そこから始めていって、例えば、ある部長が『おもしろい』と言ってくれたら、その部署の担当者、あるいは部署全体に配信するなど、徐々に配信先を増やしていきました。

このように無理せず、必要としてくれる社員にだけ少しずつ浸透させていく方針にしたことで、着実にレポートを閲覧してくれる人が増えるようになったのではないでしょうか」(小山氏)

そうして社内にレポート配信を広めていく過程で、「レポートを試しに見てみたい」と興味を示してくれた部長がいたら、積極的にその部署へ説明しにいった。その他にも、部会などで見える化エンジンの扱い方を説明する勉強会を開いたり、社内で幅広く参加者を募ってセミナーを開催したりといった地道な取り組みを展開してきた。

顧客の声を活用する習慣がなかった部署に対しては、「そもそもVOCとはどういうものか」と説明するセミナーを実施。見える化エンジンの使い方や、VOC管理グループから配信しているレポートの種類・内容などについて案内した。

そうしたセミナーに参加してくれた社員には見える化エンジンを利用するためのIDを発行。希望者にはデイリーレポートを配信するようにした。ここでも希望者のみに絞ってレポート配信しているため、レポートを閲覧するアクティブ率は非常に高い水準を保っている。

VOC管理グループに促されずとも、自発的に顧客の声の活用に取り組む部署も

VOC管理グループに促されずとも、自発的に顧客の声の活用に取り組む部署も

「当社では現在、手紙・電話・Web・Eメー ル、それに『返品連絡票』という返品時にその理由を記入する用紙などから得た顧客の声を、すべて見える化エンジンで一元管理しています。その内容をVOC管理グループで確認し、バイヤーやECサイトを運営する部署などの関係部署に知ってほしい顧客の声をまとめて持ち込み、何か改善できることがないかと話し合うのです。そして改善点が見つかったら、できるところから即時対応していく。

さらに、対応してからしばらく経ったら、お客様からの問い合わせ内容に変化があったかともう1度確認して、効果を検証していくようになりました。社内でPDCAサイクルをかなり上手く回せるようになったのではないでしょうか」(オペレーション本部カスタマーサービス部 野瀬氏)

そうした取り組みをVOC管理グループ中心に進めていくうちに、最近ではVOC管理グループから働き掛けなくても、独自に分析を深めて改善を図る部署も出てくるようになったという。

「商品配送や品質管理などの部署では、彼ら自身で顧客の声を分析・検討するようになってきました。少しでもネガティブな顧客の声を見つけたら、『何が悪かったのか』と自分たちで改善活動に取り組むようになりつつあるのです。このように顧客の声から改善する仕組みが会社全体で確立できればいいと考えています」(オペレーション本部カスタマーサービス部 VOC管理グループ長 内田氏)

そのように、顧客の声の活用を全社に広めるため、VOC管理グループでは今後、「顧客の声1つからでもこんなに改善できる」といった具体的な改善の進め方を例示し、見える化エンジンの活用方法を周知していくことで、より多くの部署で顧客の声の活用を根付かせていきたい考えだ。

コールセンターと密接に協力することで、改善活動のよりどころとなる顧客の声データの質向上へ

前述の各部署主導の顧客の声の活用をより社内に根付かせていくことに加え、コールセンターで働くオペレーターによる顧客の声の入力精度を上げることで、より精緻な分析をすることも、今後の課題として挙げられている。

そのためにVOC管理グループでは現在、「問い合わせ内容のグループ分けを間違えると、問題発生率を正確に算出できない」といった具体例をオペレーターに伝え、入力してもらったデータを見える化エンジンを使ってどのように活用しているのかと説明する活動を開始。まずはオペレーターに、データ入力の精度を上げる必要性を理解してもらおうと努めている。

コールセンターと密接に協力することで、改善活動を生み出す基盤となる顧客の声の質自体を向上させていく――。VOC管理グループの取り組みは、さらに一歩進んだ領域に踏み込みつつあるようだ。

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